気候の変化が病をもたらす六淫のお話
皆さんこんにちは。
2017年度の大学講義も終わりホッとしています。今年は4時間超えの長い講義となりました。学生の皆様にはご迷惑をおかけしましたが、大変充実した時間を過ごすことができました。ありがとうございます。
さて、今回のお話は、大学で講義をした内容を元に漢方の効くメカニズムを書いてみることにします。少しボリュウムがありますので、数回にわたって連載をしてみたいと思います。決して難しい内容ではありませんので、ぜひ最後までおつき合いください。
漢方薬の味はいかがですか
皆様が今飲んでいる漢方薬、お味はいかがでしょうか。甘いですか、苦いですか、草根木皮で作られたものですから、やはり美味しくはないですよね。私も20年間服用していますが、初めのころは飲むことが苦痛でした。それが今ではお茶がわりに飲めています。実に不思議です。同じ漢方薬なのに日によって味が違って感じることはありませんか。かぜの引きはじめに使う「葛根湯」はどうしても苦手の味ですが風邪を引いた時には普通に飲めるからこれもまた不思議なことです。舌の表面には味覚を感じ取る場所があるのですが、必要な漢方薬を吸収しやすくするために、不味く感じる場所を鈍くさせているのかもしれません。このことは脳の働きにも似ていて、興味があることは覚えも早いが、嫌いな勉強は記憶できないことに似ています。漢方を選ぶ上でも以外と大切な感覚です。
疲れた時や生理前は甘いものが欲しくなる
体のエネルギーとなる糖分が必要になるからです。ストレスがかかった時も同じで、脳の栄養はブドウ糖のみですから多くの方が甘いものに走ってしまうのはストレス社会が原因なのでしょう。漢方薬の成分の中にも甘いものがあります。「甘草」、「大棗」、「膠飴」がそれです。また、この成分が含まれる、甘い漢方薬があります。小建中湯や甘麦大棗湯です。当に疲れによく、精神的にも安定させる漢方薬です。しかし漢方薬と食事は違いがあります。甘いものは栄養素になりますが、あくまでも漢方医学では体力をつけ免疫を強くし体内の毒素を外に出すことが最終目標になります。漢方薬をサプリメントのように考えることは間違いです。
毒素を外に出せば元気になる
犬が散歩の途中で草を食べて吐いている姿を見たことはありますか。これは、お腹の中の蛔虫を出そうとしているからです。漢方治療には6つのステージがあるのですが、第1ステージでは、発汗する漢方薬を使って毒素を汗として外へ出します。発熱時に汗が出ると熱が下がり体が楽になると言うことです。第2ステージでは涙として(感情を出してスッキリすると言う意味)、第3ステージでは下剤として外に出していく方法をとります。甘い漢方薬が多く登場する第4ステージでは、胃腸の働きをよくして体を温めて元気をつけて大便として毒を排泄させます。三千年前の治療法は実に明快ですね。野菜でも皮ごと食べると味は悪くなりますが、過剰な栄養分を外に出しやすくなります。その場合はできれば無農薬のものにこだわりたいものです。
水が出て卵巣嚢腫(水腫)が変化した症例
46歳の女性。中肉中背。2ヶ月前の検査で左の卵巣に水腫が見つかりました。顎の下部に水がたまり腫れていました。また、耳鳴り、めまいの症状があり、病院では耳の奥に水がたまるメニエル病と言われました。水がたまりやすい体質はその舌にも現れていて、舌の周りには歯形がついていました。沢瀉湯(たくしゃとう)と桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を服用後3ヶ月で、めまい耳鳴りは善なり、顎の下の水腫が半分になり、卵巣嚢腫も消えました。この間小便と大便がよく出たと言っていました。体の中の水毒が外に出たのでしょう。漢方は相性が合うと難しい病気でも変化する場合があります。すばらしい医学であると感じています。