HSP・「繊細さん」だと思っていたら、実は境界線の問題だったという話

飯塚和美

飯塚和美

テーマ:生きづらさを感じる時

HSP・繊細さんだと思い込んでいる生きづらさの正体は、実は「心の境界線」の薄さかもしれません。気質と境界線の違いを心理カウンセラーが解説します。

「音や光に敏感で、人の些細な言動にも動揺してしまう」「きっと自分はHSP(繊細さん)だから、この生きづらさは仕方ない」......そんなふうに、自分の性質を「HSP」という言葉で理解して、少し安心した経験はありませんか?

確かにHSPという概念は、生きづらさに名前をつけ、自分を責めずに済むようになった、という意味でとても価値のあるものです。ただご相談を受けていると「 HSPだから」で片付けている生きづらさの中に、実は決してそのものではなく”心の境界線が薄くなっていること”が原因になっているケースが少なくないと感じます。

HSPと「境界線が薄い」は、何が違うの?

 HSPは生まれ持った気質の一つです。音、光、臭い、人の感情の機微など、周囲の刺激を人よりも深く受け取り処理する神経の特性だと言われています。これ自体は良い悪いではなく、その人が生まれ持った個性です。
 
 一方で「心の境界線が薄い」というのは、気質ではなく、育ってきた環境の中で身に付いた”関わり方の癖”です。「相手の感情まで自分が引き受けてしまう」「自分の気持ちより相手の気持ちを優先してしまう」というパターンは、生まれつきのものというより、後天的に形づくられたものである場合が多いのです。

 この二つは、とてもよく似た苦しさを生みます。「人といると疲れる」「相手の顔色が気になって仕方がない」「一人の時間がないと消耗してしまう」。同じような症状に見えても、背景にある物が違えば、必要なケアも変わってきます。

なぜ、境界線の薄さが「気質のせい」だと感じてしまうのか?

 境界線が薄くなる背景には、子供の頃の家庭環境が関係していることがよくあります。親の機嫌に敏感でいなければならなかったり、自分の気持ちを出すより先に相手の顔色をうかがう必要があったりした環境で育つと「他人の感情を察知し、先回りして対応する」という力が、生き延びるための術として強く育ちます。

その結果、大人になってからも「人の感情を敏感に察知してしまう」「刺激を受け取りすぎて疲れる」という状態が続き、まるで生まれつきの気質のように感じられるのです。けれど実際には、境界線という「自分と相手を分ける線」がうまく育たなかったことが、しんどさの土台になっている場合があります。



気質と境界線、両方を大切にするという視点

 ここで大切なのは「 HSPではなく、境界線の問題だった」と、どちらか一方に結論づけることではありません。生まれ持った繊細さと、後天的に薄くなった境界線は、どちらも同時に存在していることがほとんどです。

繊細な気質があるからこそ、境界線の薄さによる影響もより強く感じやすい、という繋がりもあります。だからこそ「私は繊細だから」で思考を止めてしまわず「境界線を育てることで、今より楽になる部分があるかもしれない」という可能性に目を向けてみてほしいのです。

境界線を育てるための、小さな一歩

 境界線は、生まれつきの気質と違って、少しずつ育て直すことができます。まずは日常の中で、次のようなことから始めてみてください。

1.「疲れた」と感じた瞬間に、立ち止まる
 人といて疲れを感じた時「繊細だから仕方がない」で流さずに「今、何に反応して疲れているんだろう」と一度自分に問いかけてみます。
2.相手の感情と、自分の感情を分けて考える
 「相手が不機嫌そう」と感じた時も「それは相手の感情であって、自分が今すぐ何とかしなくてもいい」と、心の中で一度切り分けてみます。
3.刺激から離れる時間を、罪悪感なく確保する
 一人の時間や静かな環境を必要とすることは、わがままではありません。境界線を保つために必要な、大切なセルフケアです。

それでも生きづらさが変わらないときは

 こうした小さな工夫を重ねても「人といるとどうしても消耗してしまう」「自分の輪郭がよくわからない」という感覚が続く場合は、境界線の薄さの背景に、もっと根深い経験がかかわっていることがあります(境界線が薄くなる背景については、前回のコラム『断ると嫌われる」が怖いあなたへ』でも詳しく触れています。

 これまで13年間、 8000件を超える相談を受ける中で「 HSPだと思って対処法を試したけれど、根本的な生きづらさが変わらない」というご相談を、何度もお聞きしてきました。



よくある質問


Q HSPと境界線の薄さは、どうやって見分ければいいですか?
A.明確に線引きできるものではありませんが「一人になっても刺激への敏感さ事態は変わらない」なら HSP気質の影響が強く「特定の相手や場面でだけ、相手の感情に振り回されてしまう」なら、境界線の影響が大きいと考えられます。両方が絡み合っていることも多いです。

Q. HSPだと診断されたら、境界線は関係ないのでしょうか?
A.いいえ、関係します。HSP
の気質を持ちながら、境界線もしっかり育っている方は、刺激を敏感に感じ取りながらも、必要以上に他人の感情を背負いこまずに過ごすことができます。気質と境界線は、別々に育てていけるものです。

Q.境界線は大人になってからでも育て直せますか?
A.はい、できます。境界線は生まれつきの性質ではなく、関わり方の癖として身についたものなので、日々の小さな意識づけやカウンセリングを通じて、何歳からでも育て直していくことができます。

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飯塚和美
専門家

飯塚和美(心理カウンセラー)

カウンセリングルーム『大空』

電話相談含め8,000千人のカウンセリング実績。幼い頃からしみついた考え方の癖や枠を取り除き、生きづらさを解消します。リピーターが多く講座を含め日常で壁にぶつかると訪れたくなる、親しみやすさが好評

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