「大声が怖い」「人の顔色ばかり気になる」の裏にあるもの

飯塚和美

飯塚和美

テーマ:生きづらさを感じる時

子ども時代の傷が「今の生きづらさ」になる理由と、未来のためにできること

 職場で少し声が大きい人がいるだけで、必要以上に怖くなってしまう。人の顔色が気になって、いつも気を使いすぎてしまう。そうやって頑張り続けて、結果、ある日突然、心が動かなくなってしまう......。

カウンセリングの現場では、こうした悩みを抱えたクライエントに出会うことが少なくありません。そして、その背景を一緒にたどっていくと、多くの場合、子ども時代に「安心して頼れる大人がいなかった」という経験にたどり着きます。



あるクライエントの歩み

 責任を果たさない親のもとで、心ない言葉を浴びながら育ち、そんな中で、その方は学校に通いながら、生きていくためにアルバイトを始めるしかありませんでした。

 誰かに助けを求める、という発想すら持てないまま「自分で何とかするしかない」と、子どもの頃からひとりで自分を守ってきたのです。

過去の傷が、今の生きづらさに変わる瞬間

 大人になったその方は、次のような形で、過去の影響と向き合うことになりました。

・少し声の大きい人がいるだけで、、体がこわばるほど怖くなる
・職場で怒られているわけでもないのに、怖さに耐えられず仕事を辞めてしまう
・誰かの機嫌が悪いと、自分のせいかもしれないと感じ、必要以上に気を遣う
・そうやって頑張り続けて、結果、心も体も限界を迎えてしまう

 これは、その方の性格が弱いからでも、我慢が足りないからでもありません。子供時代、安心できる大人がそばにいなかったことで「機嫌をいち早く察知して身を守る」というモードのまま、心が大人になってしまったからです。

 小さい頃、大声や不機嫌さが「本当に自分の身に危険が及ぶサイン」だった人にとって、そのセンサーは大人になっても簡単には消えません。今は安全な場所にいても、心と体は昔のまま、警戒し続けてしまうのです。


なぜ、これは「特別な話」ではないのか

 同じような経験を持つクライエントに共通しているのは、こんな感覚です。
・「助けて」という発想自体を、そもそも持ったことがなかった
・大人になってから、自分の育ちが「普通でなかった」と初めて気づいた
・誰にも相談できないまま、大人になるまでひとりで抱えてきた

 子ども時代は、周りと自分の家庭を比べる物差しを持っていません。だからこそ、どんなにつらい環境にいても、それが「普通」だと思い込み、 SOSを出すという選択肢にすらたどり着けないことがあります。

もし、子ども時代にSOSを出せる場所があったら

 ここから先は、ひとりのカウンセラーとしての、ひとつの願いです。

もし、子どもの頃に「これはつらいことなんだ」と気づかせてくれる大人がいたら......。「助けて」と言っていい場所が、身近にあったら......。
その方の人生は、もう少し早く、楽な方へ進めていたかもしれません。
 
多くの子供は、家庭の中で何が起きていても「これはうちの普通のことだ」「言っても仕方がない」これは知識が無い故の怖さであり決して子ども自身の弱さではありません。

 だからこそ、学校という子どもが毎日通う場所で「家庭の事を相談していいんだよ」と伝えられる仕組みがあれば良いのではないかと思います。

 担任の先生でなくても構いません。スクールカウンセラーでも、相談期間の電話窓口でも、話を聞いてもらえるだけの場所でいい。「ここに逃げてもいいんだ」という場所があることを、子どもたちに広く知らせること。それだけで、ひとりで抱え込んで苦しむ子どもを、少しでも減らせるのではないでしょうか。

 無知は、時に大きな怖さにを産みます。「相談していい」ということを知っているだけで、選べる未来が変わることがあるんです。

多くの子どもがSOSを出せないのは、子ども自身の弱さのせいではなく、それに気づける大人が周りに少ないからだと、私は感じています。そしてそれは、大人たちの冷たさというより、多くの場合「知らないこと」から起きています。

 子どもの様子の小さな変化、大声や不機嫌さに過剰に反応する背景、頑張りすぎてしまう子の真理......。
こうした知識が周りの大人に少しでもあれば、見過ごされていたはずのSOSに、気づける瞬間が増えるはずです。

未来に繋ぐために、今できること

 過去は変えられません。けれど、過去の意味付けと、これから先の生き方は、、今からでも変えていくことができます。

 そしてもうひとつ、私たちにできることがあります。それは、今、かつて子どもだった大人たちの小さなSOSに、気づける大人をひとりでも増やしていくことです。

 知らなければ気づけなかったことも、知っていれば気づける。その積み重ねが未来の「生きづらさ」を、少しずつ減らしていくのだと思っています。



 

今、生きづらさを抱えているあなたへ

 もしあなたが今、大きな声が怖い、人の顔色をうかがいすぎてしまう、そんな自分に疲れているとしたら......それはあなたが弱いからでも、考え方が悪いからでもありません。

 子ども時代、ひとりで抱えるしかなかった小さなSOSが、まだ心のどこかに残っているだけです。

 そのSOSは、今からでも、誰かに聴いてもらうことができます。過去を変えることはできなくても、その出来事が今のあなたにどんな影響を与えているのかを一緒に紐解いていくことで、生きづらさは少しずつ軽くなっていきます。

 ひとりで抱え込まず話してみてください。その一歩が、これからのあなたの人間関係や未来をつなぐ子供たちのためにも、きっと意味のあるものになるはずです。

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飯塚和美
専門家

飯塚和美(心理カウンセラー)

カウンセリングルーム『大空』

電話相談含め8,000千人のカウンセリング実績。幼い頃からしみついた考え方の癖や枠を取り除き、生きづらさを解消します。リピーターが多く講座を含め日常で壁にぶつかると訪れたくなる、親しみやすさが好評

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