「断ると嫌われる」が怖いあなたへ|職場で使える罪悪感を手放す「心の境界線」の引き方

飯塚和美

飯塚和美

テーマ:生きづらさを感じる時

職場で頼まれた仕事を断れず罪悪感に苦しむ方へ

「今とても忙しいのに、断れずに引き受けてしまう」
「断ったら嫌われるかもしれない」......。
そんな罪悪感の正体は、あなたの能力不足ではなく、自分と相手の間の「心の境界線」が曖昧になっているサインです。

 この記事では、境界線の引き方と、職場で角をたてずに断るためのアサーティブな3テップを、心理カウンセラーの視点からお伝えします。


 仕事を頼まれたとき、心の中では「今は無理」とわかっているのに、口から出るのは「大丈夫です、やります」。そして引き受けた後、ひとりになった瞬間にどっと押し寄せる後悔。

「なんで断れなかったんだろう」
「でも、断ったら嫌われていたかもしれない」。
そんなふうに、自分を責めてしまったことはありませんか。

 キャパシティを超えて仕事を抱え込み、心も体もすり減ってしまうのは、あなたの能力が足りないからではありません。真面目で、優しくて、誰かをがっかりさせたくないという気持ちが強いからこそ、起きていることです。

なぜ「NO」と言うとき、あんなに苦しくなるのか?

 
 断ることが苦手な方とお話ししていると、多くの場合、責任感がとても強く、周りへの気配りを欠かさない方だと感じます。そしてその優しさの裏側には、こんな思い込みが隠れていることがあります。

 ひとつは「断る=相手を拒絶すること」だと感じてしまうこと。仕事の依頼を断っているだけなのに、まるで相手そのものを否定しているような気持ちになってしまうのです。

 もうひとつは、相手の気持ちにまで責任を感じすぎてしまうこと。「がっかりさせるかもしれない」
「気を悪くしたらどうしよう」と、
本来は相手自身が抱えるはずの感情まで、自分で引き受けようとしてしまいます。

 この、自分と相手の間の線が曖昧になっている状態を、心理学では「心の境界線(バウンダリー)」が薄れている、と表現します。

「心の境界線」はどうすれば引ける? 自分の課題と相手の課題を分ける

 境界線を取り戻すために役立つのが「これは誰の課題だろう」と一度立ち止まって考えてみることです。

 あなたが向き合うべきなのは「今、自分がどれだけの仕事を抱えていて、責任を持ってやり遂げられるかどうかを見極め、それを正直に伝えること」。それだけです。

 断られた後、別の方法を考えたり、誰か他の人にお願いしたりするのは、相手が向き合う課題です。断られてがっかりする気持ちも、本来は相手自身が処理していくものなのです。

 だから「申し訳ない」と自分を責めすぎなくて大丈夫です。むしろ、無理をして引き受けた結果、仕事の質が下がったり、期限に間に合わなかったりする方が、結果的に相手を困らせてしまうこともあります。断ることは、冷たさではありません。お互いが気持ちよく仕事を続けていくための、ひとつの誠実さなのだと思います。



職場で角を立てずに断るには? アサーティブな3ステップ

 とはいえ「わかってはいるけれど、実際にどう言えばいいのかわからない」という方も多いはずです。相手のことも、自分のことも大切にしながら断るための、3つのステップをご紹介します。

 この「相手のことも、自分のことも大切にする伝え方」を、心理学では「アサーティブ」と呼びます。難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと「自分と相手、両方を大切にする話し方」のことです。 

1. 感謝の気持ちを添える
 まずは、声をかけてもらえたこと自体への感謝を伝えます。

「お声がけいただき、ありがとうございます」
「お力になりたい気持ちはとてもあるのですが……」

2. 事実だけを、シンプルに伝える
 「気が乗らないから」ではなく、今の状況をそのまま伝えます。長々とした言い訳は必要ありません。

 「今、〇〇の対応が立て込んでいて、期日までに十分な形でお戻しするのが難しい状況です」

3. できる範囲があれば、それを伝える
 すべてを断るのではなく「ここまでならできる」という形を提示できると、印象がやわらぎます。

「来週の水曜以降なら着手できそうです」
「全体は難しいのですが、〇〇の部分だけでもよろしければ」

 この3つを意識するだけで、断ることへのハードルはぐっと下がっていくはずです。




それでも断れないときは、何が関係しているの?

 頭では手順がわかっていても、いざその場になると声が出なくなったり、胸がドキドキして苦しくなったりすることがあります。もしそうだとしたら、その苦しさの根っこは、もっと昔にあるのかもしれません。

 子どもの頃、親の顔色をうかがいながら「いい子」でいようとしてきた方は、大人になっても「断ること」が「見捨てられること」と結びついてしまいやすいのです。

「いつも人の顔色が気になって、心が休まらない」
「断れない自分を、いつも責めてしまう」......。
そんな思いを抱えている方は、ひとりで抱え込まず、よろしければ一度カウンセリングにいらしてください。

 これまで13年間、8,000件を超えるご相談をお受けする中で「断れない」というお悩みは本当に多くの方が抱えていると感じてきました。テクニックだけでは変えられない、心の奥にある小さな癖を、一緒にゆっくりとほどいていきましょう。あなたがあなたらしく、安心して働ける毎日を、少しずつ取り戻していけたらと思っています。

よくある質問


Q. 断ると相手に嫌われてしまう気がして、どうしても言い出せません。
A. 「断る=相手を拒絶すること」だと感じてしまうのは、自分と相手の間の境界線が曖昧になっているサインです。断ることは相手そのものの否定ではなく、状況を正直に伝える誠実な行為だと捉え直してみてください。

Q. 断った後の罪悪感がひどく、何日も引きずってしまいます。
A. 断った後に相手がどう感じ、どう対処するかは「相手の課題」であり、あなたが背負う必要はありません。「自分の課題」と「相手の課題」を切り分ける意識を持つだけでも、罪悪感は軽くなっていきます。

Q. 断り方のコツを実践しても、体が固まって言葉が出てきません。
A. 頭で分かっていても体が反応してしまう場合、子どもの頃からの「いい子」でいようとする癖が根底にある可能性があります。こうした深い部分は一人で抱え込まず、カウンセリングで一緒に紐解いていくことをおすすめします。 

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飯塚和美
専門家

飯塚和美(心理カウンセラー)

カウンセリングルーム『大空』

電話相談含め8,000千人のカウンセリング実績。幼い頃からしみついた考え方の癖や枠を取り除き、生きづらさを解消します。リピーターが多く講座を含め日常で壁にぶつかると訪れたくなる、親しみやすさが好評

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