たこ足配線は危ないのになぜ何個も挿せる電源タップは大丈夫なの?危険な本当の理由とは

古賀竜一

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テーマ:知って得するITノウハウ


  • 【電源タップ(テーブルタップ、延長コード、トリプルタップ)の正しい使い方】
  • 【たこ足配線になってしまう条件とその対策とは】
  • 【壁のコンセントの使い方にも注意が必要】
  • 【電源タップや延長コードの連結方法と継ぎ足しの注意点】
  • 【たこ足だけではない危険性とは】

コンセント確保が難しい時代

コンセント不足は電源タップさえあれば本当に解決するのか?

●ITは私達の生活の姿を大きく変えています。PC、スマホ、タブレット、またはその周辺機器類など一人でたくさん所有するが当たり前になり、家庭や職場に溢れかえっていて、とても一室のコンセントだけでは足りない状態になっています。

●出張サポートで訪れる現場でもほとんど例外なく、壁からのコンセントだけでは足りずに、電源タップや延長コードなどを使って分岐しながら何とかやりくりしているというのが実情です。

●そのどこもがいわゆる「たこ足配線」になっていて、これは大丈夫なのか?と見るからに危険臭がする際どい配線状況のところもあったりします。たこ足配線とは、テーブルタップやトリプルタップなどを何個も使って差込を分岐し、つないだコンセント配線がまるでタコの足のようにからまっている状況を言います。

●ところが最近良く使われているOAタップなどのいわゆる「電源分岐タップ」は、6箇所も8箇所もコンセントを挿すところがありますよね?

確かに電源タップを使うと見た目には真っ直ぐ並んでいてすっきりしますが、全部の差込口を使ったら、数からいってもそれってたこ足になるんじゃないの?と疑問に思いませんか?

そういうものを売っているんだから大丈夫なようにできているんでしょ?と言う人もいるでしょう。でも、電気が関係するこの話はそう簡単にはいかないのです。


※電源タップならたくさんつないでもたこ足に相当しないのか?

コンセント、電源タップには"容量の限界"がある

使用したい電気製品の容量(ワット数)を合計する必要がある

●電気を使用する機器には個々に電気容量がどのくらい必要なのかという"定格"というものがあり、それぞれ本体や説明書などにその数値が記載されています。

●例えばドライヤが600W(ワット)だとかエアコンが1,200Wなど、"ワット数"で表示されていたりします。


※本体ラベルに記載してあるIT機器類の容量の例

●電源タップにも、本体や説明書に「トータル1,500ワットまで」とか「15A」と大きく刻印や表示がされています。その表示がそのタップで使用できる合計での容量の上限(限界)値ということになります。これは、電源タップ(テーブルタップ、OAタップなど)だけでなく、延長コードや3個口のトリプルタップなどの中継器具にも当てはまります。

●容量の限界値というのは何かというと、タップに挿した電気製品を同時使用したとき超えてはいけない電気容量の総和のことです。それはタップの構成部品、配線の太さなどの設計がどれだけの電流に耐えるのかということから算出され決められています。要するにたくさん差し込み口がある電源タップといえども、"限度"というものがあるわけです。


  ※電源タップに表記してある容量は使用できる合計の上限値 禁無断転載

●例えば、6個口で15Aが限度のタップに機器1台しかコンセントを挿していないという場合でも、その機器が業務用複合機で表記上"15A"(1,500ワット)の最大容量であれば、それ1台で既にタップの表記限界値の15Aになってしまいます。つまり機器1台だけでもタップの"限界"に到達してしまうことがあるというわけです。ですからせっかく差し込み口があと5個口残っていてもそれ以上は挿して同時には使えないということになります。


          ※図をクリックで拡大 禁無断転載

※タップに1台15Aの機器を使用した場合、残りの5か所いづれかを同時に使った時点で数に限らず容量オーバーになってしまう。

●以前、ある事業所で、業務用コピー機を使い始めるとパソコンの電源が落ちて(切れて)しまう・・・というところがありました。状況を確認するとパソコンとモニタ2セット分がコピー機と同じテーブルタップで使用されていました。これはまさにタップの"限界を超えた"状況になっていたのです。コピー機が動くたびに配線経路上の容量が逼迫し、電圧降下が起きて蛍光灯がちらつき、電圧に敏感なパソコンの電源が貧血状態となってそのたびに電源が切れていたのです。

●この話を分かりやすくするために、学校の校庭によくある蛇口がたくさん並んでいる水飲み場や足洗い場などの水道で例えてみましょう。

そのような施設では、蛇口を1つだけ開けた場合すごい勢いで水が出てきます。しかし、たくさんある蛇口をすべて開放すると水の勢いは1つだけ開けた時よりも弱くなります。特に水圧が低い水道設備ではちょろちょろとしか出なくなる場合もあるでしょう。電気もそれと同じでたくさんの機器で同時に使用するとそれぞれの機器に供給される電気が弱くなってしまうというわけです。それを「電圧降下」といいます。



●このようなことにならないためには、容量の大きい機器は分岐タップから電源を取らず、単独で壁などから専用にコンセントを確保するべきなのです。差込口がたくさんあって一見便利そうな電源タップでも同時に使用できないのでは、事実上意味がありません。消費電力が大きいレンジや電気ストーブなどでも同様ですので注意が必要です。

たこ足配線で問題になるのは、つないだ機器の「数」ではない

何個までならいいとかではなく、問題は同時使用の容量オーバー

●ここまでの話を聞いていると、1台つないだだけでも限界があるのに6個や8個も分岐できるタップがなぜ売られているの?と思うでしょう。

●たとえば6~8個口の電源タップ全部が埋まってしまい、足りなくなることがあるかと思います。そこへさらに電源タップ、テーブルタップをそれに継ぎ増したりトリプルタップ(三又)などで分岐を増やして、合計10台以上の機器を使った場合はどうなるのでしょうか?

●見た目は配線がまさに"たこの足"のようになっていてかなり危険に見えるかもしれません。しかし、意外なことにこんな場合でも、つないだ機器類の容量計算がきちんと出来ていて、タップの限界を超えてさえいなければ大丈夫なんです。



※使用している機器の容量が小さく、合計でタップの定格まで余裕が十分にあれば上のような状況でも直ちに危険ではない。

●スマホ充電器、ノートPC、ルータやモデム、インクジェットプリンタなどの容量が小さい機器同士ならば全部の容量総和は大したことはありません。タップの限界容量を超えなければ挿している機器の数が、仮に10台以上になったとしても危険はありません。電気ストーブ1台で限界になってしまうテーブルタップでも、電気容量が小さい機器なら合計して限界に達するまで10台以上分岐してつないでも問題がないというわけです。

●要するに、たこ足配線が危険な場合というのは挿している"個数"ではなく、同時に使用する機器の"容量の合計"がタップや配線の定格をオーバーしてしまう場合なのです。
ですから容量上限を超えなければ電源タップ全部の差込口を同時に使っても、さらにそこから継ぎ増しや分岐しても大丈夫なんです。


               ※禁無断転載

壁コンセント、増設タップの正しい接続方法

間違ったタップ、コンセントの使い方と継増しの考え方とは

壁の2口コンセントの場合


●さて、ここまでわかっていればたこ足配線も怖くないと思うかもしれません。しかし、それだけではまだ不十分です。奥の深いこの話にはまだ続きがあります。関連する話として、壁のコンセントは通常差込口が2か所ありますが、大容量の器具で既に片方を使っいる場合、もう一方が空いていても使用する前に気を付けなければなりません。2つあるからといっても実は別々ではなく配線回路自体は見えないところで一つになっているため、別のコンセントとして扱ってはいけないのです。

●空いているほうでスマホの充電位ならば大丈夫でも、そこへ電源タップを挿してさらに15A分使うという考えはやめておきましょう。つまり、このような場合は2口の壁コンセントの片方が空いていても事実上使えないということです。



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●同じような問題として、同一の部屋にある他の壁面コンセントやその裏側にある隣の部屋のコンセントも同一回路になっている場合があります。同一回路上(20A Max)で15A(1500W)の器具を2台同時には使用はできませんので、その部屋内の別の壁面コンセントで分けて使えば大丈夫というわけにもいきません。

●ブレーカーを1つづつ落としてみてどの部屋のどのコンセントが同一回路か把握しておきましょう。または建築時の電気配線の図面が保管してあればそれを参考にできます。不明な場合は近くの電気工事店などに相談しましょう。


             ※図をクリックで拡大 禁無断転載

電源タップを継増しするときの注意点


●ここで注意点は、限界容量の判断として、15Aの電源タップを2本つないだから合計で30Aまでいける・・・というのは大きな間違い。構造的に耐性が上がるわけではないので、延長で何本繋いでも限界は15Aには変わりありません。

●壁コンセントに挿しているタップや延長コードが最大容量12Aまでのもので、それに最大容量15Aまでのタップを継ぎ増しした場合はどうなるでしょうか?その場合限界は15Aではなく、全体で12Aが限界となります。

●この場合15Aのタップにつなげば15Aまでは大丈夫なのでは?と思いたいですが、そういうわけにはいきません。12Aのタップを経由しているのでそのあとの耐性が高くても12Aのタップの耐性に縛られます。要するに12Aのタップはいわゆるボトルネックになってしまうわけです。

●継増しでタップを接続する際にはつなぐ機器の能力に応じた順番も考慮が必要です。コンセント大元に近い方に容量限界の低いタップなどは使わないことです。




             ※図をクリックで拡大 禁無断転載




             ※図をクリックで拡大 禁無断転載

気を付けるのは容量オーバーだけではない

●容量を計算して定格内で使えばたこ足配線でも大丈夫ということはわかっていただけたと思いますが、ただしこれには条件があって、配線に断線や傷み、プラグなどの破損などがないということが必要です。

●それでも油断は禁物。せっかく計算してタップを管理していても、誰かが知らない間に電気ストーブや加湿器などをそこへ追加し、挿した時点で一気に限度を超え危機に陥ってしまいます。人員の多い事業所などではタップに「ここはもう限界」など張り紙をして、容量を超えないように注意して使う必要があります。

●また、配線同士がひどく絡みあったりしていると、どれが何の線だかわからなくなり、機器に何か問題が生じて電源プラグを抜く必要に迫られた際に、迅速な対応が出来なくなってしまいます。コンセントプラグ部分に、何の線であるかをラベルなどで表示しておくと、いざという時に役に立ちます。

以下に、配線の適切な整理について述べたコラムもありますので参考にしてください。

「パソコンや周辺機器まわりの配線をどうにかしたい!配線の正しい整理法とは」
https://mbp-japan.com/saga/pc-pro/column/4010420/

容量オーバーの結果どうなる?

たこ足配線が怖い本当の理由はこれだ!

●容量オーバーで使用すると危険だというけれども、具体的に何がどう危険だというのでしょうか?
電源タップなどで「安全装置内蔵」というブレーカ回路内蔵のものがありますが、これは限界容量を超えた時点で自動的に電源を切断する仕組みになっています。

●自動で切ってくれるなら、安全で便利そうな印象がありますが、デスクトップパソコンなどの電源を同じタップから取っていた場合、パソコンの電源も突然落ちてしまいますので、編集中のデータを失ったり、OSやHDDがダメージを受ける可能性があります。また、リセットスイッチで戻せばまた復帰するからと言って、落ちた原因を排除せず何度もリセットで復旧させて使用することは危険です。

●ブレーカーが内蔵されていない電源タップの場合、容量オーバーになると電源タップ本体とその配線に設計で想定された以上の電気量が流れることになります。そうなると本来耐えうる量以上の電気が経路上にねじ込まれるため、抵抗となってその分が熱に代わります。高速道路に想定以上の車が流れ込んで大渋滞が起きるのと同じで、夏場に大渋滞になれば道路上は車の排熱で人が立っていられないほどの灼熱の状態になるのと似ています。

●そういうわけでタップ本体や配線が高温になったり、最悪の場合は焼損などを起こして発煙したり、その結果火事の危険性も出てきます。

●下記はその実験例です。

●情報:電源コード・テーブルタップの正しい使い方 - 東京都
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/test/documents/t_tap.pdf

容量さえ守れば本当に安全か?

配線や器具の状態、ほこりにも注意

●数が多くても合計が許容容量以下であれば大丈夫と言いましたが、他にも注意したいことがあります。それはほこりです。電源タップなどを床に直接置いたりデスクの下や奥に押しやっていると、ほこりまみれになっている場合があります。ほこりはトラッキング現象を誘発します。

●トラッキング現象とは梅雨時や冬の窓際など、湿気を帯びたほこりで覆われた甘挿しの電源プラグがショートして発煙、発火する現象です。


●分岐が多いとそれだけトラッキング現象を誘発する箇所も増えますから、ほこりっぽいところでのたこ足配線は特に気をつけたほうがいいでしょう。

●それから、配線のつなぎ目や電線の被覆が傷んで中の配線が見えるようなもの、またねじれていたり、踏んで折れ曲がりなどがある、コンセント差込口の樹脂が割れていたりするものなどは大変危険です。結構そのようなものを使っているお宅は多いものです。そのようなものは「もったいない」には全く該当しません。危険ですので早急に新しいものと取り換えましょう。

九州インターワークス 注目のページ
「パソコンの安定化対策」
http://www.kumin.ne.jp/kiw/antei.htm

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