パソコンにコーヒーが!飲物こぼしの正しい対処法と注意点とは

古賀竜一

古賀竜一

テーマ:知って得するITノウハウ


よくあるノートパソコンへの飲み物こぼし

●職場でも家庭でもパソコン作業をしながら、または動画視聴などの最中にお茶やコーヒー、ジュースなどを飲む方は多いものです。人によっては作業しながらカップラーメンを食べる方もいるようです。その際によくやってしまうのが、ノートパソコンへの「飲物、液体こぼし」です。

●ノートパソコンに飲物やそのたの液体をこぼしてしまった!という相談はよくあることでこれまで数多くの診断、対応をしてきました。その際に、初期対応の仕方によって、その後のパソコンの運命までもが左右されるという事実を何度となく見てきました。

●初動で間違った対応をしたパソコンは、機体はおろかデータまで完全にダメになってしまったことがあります。適切な対応をしたパソコンはキーボードだけの被害で済んだり、メイン基板がダメでもデータは大丈夫など、最悪の事態を避けることができています。

●では、どんな対応がマズくてどんな対応が適切なのでしょうか? 今回はその対処法と、液体をパソコンにこぼした結果どのようなことが起きるのかなどをご紹介したいと思います。


ノートパソコンで水濡れ時の初動対応は時間との戦い

最近では液体をこぼしても耐水性や防水性のあるキーボードを装備したり、キーボードからメイン基板へ液体が流れ込まない構造になっているノートパソコンなどもあります。しかし、ほとんどのパソコンにはキーボードにも基板にも耐水性はありません。耐水仕様ではないノートPCのキーボードに液体がこぼれると、当然重力に従ってその下にあるメイン基板に向かって流れ落ちて行きます。

高電圧部分があるメイン基板に液体が落ちてしまうと、電気的にショートして焼けたり基板上の電子パーツが機能的に壊れたりします。そうなるとパソコンは故障して起動できなくなります。その故障の程度は、重篤な場合いわゆる「全損」状態になります。そのため、如何にこぼれた液体をパソコン内部に浸入させないかが重要です。つまり、こぼしてから基板到達までそれはまさに重力と時間との勝負、最大の攻防戦となります。

的確な初動対応とは

では、飲み物をこぼした場合、具体的にどうしたら良いのか、これまでの経験では以下の手順が最も被害を最小限にする方法と考えます。

対応その① パソコンをすぐ裏返しにする

ノートパソコンに飲み物などをこぼしてしまったら、あわてず落ち着いてすばやく電源ボタンを押します。スリープするかシャットダウン終了操作が強制的に行われます。終了を待たずに間髪入れずパソコンを裏返しにします。パソコンを素早く裏返しにすることでパソコン内部(メイン基板)への液体の落下をまずは食い止めます。液晶画面はなるべく大きく開いてください。(※パソコンによっては完全にフラットにならない機種もあるので限界以上に無理に開かないように。)これができるかできないかがパソコンのその後の運命の分かれ道になります。

※裏返すのはあくまでもキーボード上など本体の上からこぼした場合の対処法です。テーブルにもこぼれてパソコン底部に滲入した場合はいきなり裏返してしまうと逆効果です。パソコンの下側(底面)にも液が回ってしまっている場合は底面を良くふき取ってから裏返します。

先にOSをシャットダウンしようとしてマウスでの終了操作を行っていると、液体がキーボードからメインボードへ落ちる方が早い場合があります。そうなると間に合わなくなります。マウスでの終了操作は行わないことが水ぬれ緊急時の最大ポイント。そのため、日ごろから電源ボタンを押す操作でシャットダウン、または休止状態になるようにOSの"電源管理設定"で設定をしておくと、緊急時にボタン一つですぐにシャットダウン操作ができます。

キーボードへの浸水からメイン基板へ液体が到達するまでわずか数秒、長くても数分です。まずそこで間に合うかどうかが鍵なのです。何十分、何時間も経ってから裏返してもそれは明らかに遅すぎです。


※開いて裏返す。水平に開かないPCもあるので開きが止まったらそれ以上無理して開かないように。

対応その② 電源ケーブルを抜き、バッテリーを外す


液体が基板に到達した場合のショートを防ぐため、一刻も早く基板への通電を停止させる必要があります。裏返したらすぐにコンセントの電源コードを抜きます。パソコン側の電源コネクタを引き抜いても良いです。

電源コードを外すだけではトラブル回避になりません。すぐにバッテリーパックを外します。普段バッテリーパックを外したことが無い場合、もたつくとそれだけ危険性が増します。いざという時のために日頃からバッテリの取外し方を練習しておくことが必要です。バッテリーを外さないと、電源コードを抜いただけでは内部の通電状態がなくならずショートが避けられないことがあります。

この作業にかかる時間とパソコンへのダメージの可能性は正比例します。※バッテリーが内蔵式で外部から外せない構造になっているパソコンは無理に外そうとせず、余分な水分を良くふき取ってください。そしてすぐに専門家に診断をお願いしましょう。

以前、実際に相談の電話であった事例です。

「パソコンにジュースがこぼれました!」と言われたので
「いつこぼしましたか?」と聞きました。そうすると
「10分くらいたったけど、キーボードは拭いたしパソコンはいまのところ動いているようです。ということは、このままで大丈夫ということですよね? あ、ちょっと待ってください、今画面が消えました。・・・こんどは何か焦げくさくなってきました・・」

と実況してきた人がいます。こうなってはすでに手遅れです。


電源コードを抜く


※バッテリーも素早く外す

対応その③ BIOS設定用内部電池を外す

メインのバッテリーパックの他に基板上にはBIOS設定保持用のボタン電池などが装着されています。(※機種によってないタイプもあります。)電圧はあまり高くないのですがバッテリーパックを外してもBIOS用の電池から回路内に電圧が供給されていますので、液体で短絡したり腐食したりします。

裏蓋を外してみてアクセスできるようであればすぐに内部電池も取り外してください。もし、うらぶたを外しても見当たらない、または裏側からはアクセスできない場合は無理に探して外さなくてもかまいません。しかし、すぐに専門家に診てもらいましょう。

HDDやSSDも裏ブタを外すとアクセスができる場合があります。外せそうであれば、できれば外してしまったほうがいいでしょう。しかし、難しいと感じたら無理に外さないでください。コネクタなどを破損させるとデータが復旧できなくなることもあります。また、暗号化しているドライブはパソコンから外してしまうとデータにはアクセスできません。暗号化している場合は起動ドライブを外さずに水分を良くふき取ったあとで専門家へ相談しましょう。


※写真左下の丸いメッキのものが内蔵電池。

対応その④ 余分な水分をふき取り、乾かす

裏返したまま、できる限り余分な水分は取り除いて下さい。かかった液量が少ない場合はサーキュレータ(できればブロワ)などでできるだけ乾かします。その際に本体を揺すったり動かしたりしないほうが良いです。パソコンを高温にさらすのは良くないのでドライヤーは推奨できません。

乾燥を促進させるためには気流が必要です。風通しの良い暖かい場所にしばらく置いておくと乾燥が速くなります。かといって冬場の場合、ファンヒーターやこたつの中、ストーブの前などで乾かすことは思わぬ高温に晒すことになったりしますのでお勧めできません。夏場の直射日光下も避けましょう。できればサーキュレーター、または扇風機で送風を続けると乾きが早くなります。早いとは言っても丸1日以上は必要でしょう。

乾かす行為は決して無駄ではありません。乾かすのは無駄だとか意味がないといったような情報もネットにあるようですが、決してそんなことはありません。ふき取り切れない液が他の箇所へ移動したり染み渡ることを防止できます。相手はどんなところにでも入り込める「水分」です。できる限り被害の拡大を阻止する必要があります。

また、使っているパソコンのキーボードがある程度の防滴性があるかもしれません。すぐに乾かす対応で本体はノーダメージの場合もあります。

キーボードが防滴でなかった場合は、液が少量でも内部に浸み込みキーボード部分は復旧不可能になっている可能性が高くなります。乾かして使えるようになることはまれです。仮にパソコン自体が起動してもキーボード短絡の影響が起きることもあります。すぐに専門家の手配をしたほうが良いでしょう。専門家がすぐに来れない場合は被害の拡大防止のためにも、とにかくできる限り乾かします。

明らかにかかった液量が少量でキーボードだけが被害にあっていることがご自身でも確認できる場合は、キーボードの交換修理だけで済む場合もあります。キーボードが簡単に取り外せるパソコンで自分でも外すことができれば、被害程度を確認できるかもしれません。

その⑤ 通電はせずに専門家に相談する

外見だけで乾いたと判断して通電してはいけません。水分は表向きには無くなったように見えているかもしれませんが、隙間などに浸入している事があります。

液体には毛細管現象というものがあります。普通は重力に従って流れるはずの液体が、重力に逆らって密着した隙間からあちこちに染みて行くことがあります。想定外の部分に染み込んでいる場合もありますので外見だけの判断で通電は危険。

自身で対処する場合、こぼして初期対処した翌日でも通電は早過ぎかもしれません。自分で分解して乾燥までできるスキルがある場合はもっと早く通電してもいいかもしれませんが、そうでない場合は無理に分解にチャレンジするのはあまりお勧めできません。

基板に液がかかった場合はパターン(回路)に染み込む事があり、液によって腐食します。腐食は早ければ、数時間で酸化、黒変することもあり、助かるはずの基板もダメになります。特にバッテリー類が外せない機種は内部へのダメージ評価として「シュレーディンガーの猫」状態になっています。とにかく外観だけで絶対に判断しないこと。一刻も早く専門家に診断と対処してもらいましょう。

液ぬれによるダメージとはどのようなものか?


飲み物こぼしの際にパソコンが一体どうなってしまうのか具体的に解説します。

①キーボード


パソコンに液体をこぼした場合、耐液性のないキーボードは構造的に一撃でダメになります。ノート用キーボードはそれ自体が一体型(ユニット)になっていて分解が出来ず、外から乾かしてみても一旦内部に浸入した液体は構造的に抜けにくくなります。

それに、そもそもキーボードの仕組みはキー全体が電気接点ですから、浸入した液体で壮大なショートを起こしているようなものです。絶対に乾かないということはありませんが、一度細部に液体が入り込めばコーヒー、ジュースなどの不純物まで取り除くことはできません。よってユニットごとアセンブリ交換になります。

●乾いたから平気なのではないか?ということでそのまま使用すると、接点不良で特定のキーが利かなくなったり、キー接点が導通状態になったままになり、起動時にエラーが出る、パソコンが立ち上がらなくなる、文字が連続的に入力されるなどの症状が出たりすることがあります。

ノートPCキーボードの液濡れ実験

●交換後のノートパソコンの壊れたキーボードユニットを使って、飲み物こぼしが実際にどうなるか実験してみました。



状況をわかりやすくするためにオレンジ色の水性塗料を
水に溶いて着色したものを用意。



実際にかけてみる


キーボード裏面を拡大したところ。フィルム基板に染み込んでいるのがわかる。
こうなれば排出は容易ではない。

②メイン基板

対処が遅れたり、こぼした液体の量が多すぎたりした場合、メイン基板は既にショートしていたり、パターン(回路)に浸透、腐食などしてほぼ助からないようです。

液体がコーヒーやジュースの場合、成分などで汚損したり、糖分でべたついたりしますので復旧はほぼ不可能と考えた方が良いでしょう。メイン基盤の交換は、古くてパーツが無かったり、費用的に新品が買える位になります。事実上修理は不可能に等しくなります。

その時は動いている様でも後日、悪影響が出たりしますので、水ぬれの場合のダメージ評価としては「全損」扱いにならざるを得ません。

以下は実際の事例です。
キーボードの黄色い丸の部分ににかかった水分(カップラーメンのスープ)が影響を及ぼした例です。



キーボードの隙間から入ったスープが運悪く、その真下にある本体パネルに開いていた無線LANのアンテナ配線用の溝から下に落ちました。



本体パネル裏には塩分を含んだスープで白く腐食した後が残っています。



マザーボード(メイン基板)にしたたり落ちたため量はわずかでも塩分の影響でコンデンサ周りでショートし、周辺も損傷しました。



以下は状況の模式図です。


この事例では、こぼした際にすばやくパソコンを裏返しにしていればキーボードの損傷だけで済んでいたものと思われます。

③HDDハードディスク、SSD(内部データ)

水分の廻り具合によってHDDやSSDにも被害が及んだ場合は当然データもほぼ助かりません。しかし、意外とSATAストレージデバイスは基板とは隔離された位置にあったりしますのでノーダメージの場合もあります。データ復旧は十分望みがあります。M.2 SSDの場合は、多くが基板に直付けですから基板同様に被害が及ぶ場合があります。必ず専門家の診断を受けてください。

SATAのHDDやSSDはどちらかというとノートパソコン本体の底部に位置している事が多く、上からこぼした場合は影響が回避できていることがあります。しかし、テーブルにこぼした液体が本体下にまで回り込んだ場合などの際には危険度が高くなります。底部の隙間などから本体内に入ってストレージ格納スペース内にまで浸入すると影響を受けることがあります。上からかぶってなければ大丈夫・・という判断は危険です。SSDであっても端子に浸み込むとショートしますので安心というわけではありません。

以上、飲み物こぼしなど起こしてしまった場合は最善の措置とその後のケアを適切に行うことで被害が最小限に留まることもあります。
ITの知識を正しく理解して知る事は緊急時の間違った判断、対処を防止する・・ということにつながります。

しかし、飲み物こぼしの最強の予防策、対策は・・・「パソコンの周辺で飲み食いしない!」・・・ということに尽きます。

筆者の実績 :http://www.kumin.ne.jp/kiw/#ss

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古賀竜一(システムエンジニア)

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ITのユーザーサポートの現場で実際に問題を解決しながら、ITの最新の状況とその問題点を追及している専門家です。多様で複雑になってきたITのことをユーザーにわかりやすく丁寧にお伝えします。

古賀竜一プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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