ACアダプタはコネクタ形状や電圧・電流表示が同じでも互換性があるとは限らない
誰もが気になるパソコン、周辺機器まわりの配線
今では、どこの家庭や職場でもIT機器が溢れかえっています。それに伴って配線類も多くなり、いつの間にかパソコン、スマホ、ネットワーク機器の周辺は配線だらけ。機器のトラブルが起きるたびに、絡みつく配線をたどるだけでも大騒動、という経験はないでしょうか。
特に設置してから年数が経過し、配線状況を忘れていると、いざというときにどれが何の線なのかわからなくなってしまいます。
そこで、「この際、すべての配線をひとまとめにしてしまえば、簡単に見栄え良くすっきりするかも・・」と誰もが考えると思います。
ところが、配線にはそれぞれ種類や機能があり、性質も様々です。単に小さく綺麗にまとめたり、束ねたりするだけの方法では、逆にトラブルや不具合の原因を作り出してしまうことがあります。
安易な考え方やネットで見つけたという整理術は、エンジニアから見て推奨されないケースがあるのです。
今回は、実際のサポート現場での事例を交えながら、IT機器やその周辺機器に関連する「正しい配線の整理法」をお話ししたいと思います。
【現場のひとコマ】

※サポートに訪れたある事務所のネットワーク機器周りの配線状況。とにかくデスクの下に押し込んだのはいいけれども、それから先どうしたら良いかわからないということで悩んでいる方は多い。
100Vの電源ケーブルには要注意

パソコン周りのケーブルは、大きく2種類に分けられます。ACアダプターのように電源供給を行う「電源線」と、大きな電流は流さずデータを行き来させるUSBやLANケーブルなどの「通信(信号)線」です。さらに電源線には、コンセントへつながる100Vの交流配線と、ACアダプターでDC(直流)変換された後の低電圧ケーブルがあります。
コンセント側の100V電線周りには、通電時に「電磁界(ノイズのもと)」が発生します。この電磁界が、微弱な信号を扱う通信線に影響を与えることがあります。
「電磁界」とは (中部電力パワーグリッド(株)ホームページより)
https://powergrid.chuden.co.jp/anteikyokyu/denjikai/jik_chishiki/dchi_about/
通常、通信線には外部からのノイズ影響を防止する「シールド(保護被覆)」が施されているため、通電した電源線と多少隣り合っても大きな問題にはなりません。
しかし、シールドの効果が薄い安価なケーブルや、ACアダプターの直流(DC)出力側の細い線などは、強い電磁界の影響を受けて通信エラーなどを引き起こすことがあります。
特に消費電力の大きい高容量機器の100V電源線は発生する電磁界も強いため、通信線とは少し離して整理するのが得策です。
また、ACアダプターの本体(黒い箱)からも、変圧の際に生じるノイズが出ています。特に古いトランス型のACアダプター本体からは、他の配線や精密機器を遠ざけて配置を工夫しましょう。
電源のノイズについて
TDKホームページより 「電源のEMC対策」
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/noise/19

要するに電源線と通信線は一緒にせず、分けて整理する必要があるということです。
【整理のヒント】
コンセント側の100V電源線を何本もぎゅうぎゅうに束ねると、中心付近の配線が放熱できなくなります。
配線同士の間に少し間隔をとって平行に並べるマウント器具(配線ステーなど)を活用したり、家庭では結束バンドを工夫して隙間を作りながら固定したりするのがおすすめです。
※配線の間隔をあけてマウントする器具などを使用する
※家庭では結束バンドを使うとコスパ良く配線同士の間隔をあけて整理することができる
配線の状態次第でトラブルや危険が迫る

配線類を整理する際に最も気をつけたいのは、「小さく丸めてきつく縛らない」ということです。
特に高容量の電流が流れる100Vの電源線を丸めて重ねると、熱が外に逃げずに蓄積される「放熱不良」が起こります。
最悪の場合、熱で被覆が溶けてショートし、火災(車両や家庭のコード火災の典型例です)を引き起こす恐れがあります。
また、電気的に「コイル化」現象が起きることで、予期せぬ電圧降下やノイズの原因にもなります。
※100V電源線を小さく巻くのは厳禁。見た目はすっきりしますが、もっとも危険なトラブルの元です。
また、束ねる際に折りたたんだり、直角に近い角度できつく曲げたりするのも避けてください。外観上は問題がなさそうに見えても、中の銅線が伸びたり切れかかったり(断線寸前)していることがあります。
※無理な力で配線を曲げると、中の芯線が傷ついたり、被覆が破れて配線がむき出しになったりして非常に危険です。
このような傷んだ配線は、給電効率や通信速度が落ちるだけでなく、異常発熱の原因になります。
インターネットの光回線を引き込んでいる「光ケーブル」も同様に、極端な曲げは厳禁です。
光ケーブルの中身はガラス繊維(光ファイバー)でできており、光の全反射を利用してデータを送っています。
急激に曲げると光が外へ漏れて通信速度が低下(減衰)したり、最悪の場合は中でガラス繊維がパキッと折れて完全に不通になってしまいます。
※配線を巻いたり、曲げたりしたまま使用しないようにする。
明らかに異常な配線はすぐに交換する

オフィスの床などにLANケーブルやUSBケーブルがむき出しで這いまわっているサポート現場をよく見かけます。最悪なのは、オフィスの回転椅子のキャスターで常に踏みつけられているケースです。被覆はボロボロになり、中の銅線が見えてしまっていることもあります。
案の定、そのような環境では「時々ネットワークが切れる」「プリンターの印刷が途中で止まる」といった不調が多発しています。
LANケーブルのような有線の通信配線は、人間でいう「血管」や「神経」です。踏みつけられたり、重いデスクの下敷きになったりしないよう踏まない経路に移設したり、配線カバーを取り付けたりしておきましょう。
また、傷んだケーブルは速やかに新品へ交換して、仕事の効率化を妨げる要因を排除しましょう。
見た目ではなく、線の種類と用途で管理する

ただ「見た目を綺麗にするため」だけに配線をまとめてしまうと、思わぬ通信不調や、最悪の場合は発熱・火災というリスクを抱え込むことになります。
パソコン周辺の配線整理で大切なのは、「電源線と通信線を分けること」「放熱を妨げないこと」「無理な負荷をかけないこと」の3点です。
IT機器が増えたり、レイアウトを変更したりするタイミングは、配線環境を見直す絶好のチャンスです。見た目の美しさだけでなく、機器が安全かつ快適に動くための「正しい配線管理」をぜひ心がけてみてください。
●配線の整理に役立つお勧めのアイテムを以下のページで紹介しています。
ケーブル類を簡単、安全に整理する方法
●正しいコンセント配線管理についてはこちらの過去のコラムもご参考ください。
「たこ足配線は危険!でも何個も挿せる電源タップなら大丈夫なのか? 」
http://mbp-japan.com/fukuoka/pc-pro/column/8618/



