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パソコン、スマホ、IT周辺機器も叩けば直ることがあるの?叩いて直るわけと、そのリスクとは

2015年6月8日 公開 / 2024年3月30日更新

テーマ:機器と端末の管理と保守

コラムカテゴリ:くらし

コラムキーワード: パソコン修理パソコントラブルパソコン修理 業者

昭和では叩いて直っていた!

●昭和の昔の話ですが、ラジオやブラウン管テレビ、ステレオなど家電製品が古くなり調子が悪い時、「叩いて直す」ということが日常的に行われていました。また、実際それでラジオやテレビは受信や受像が回復したり、ラジオからは音が出るようになったりしたものです。

●映画やテレビドラマでもそのような描写がこれまでも数多く描かれてきました。当時の高度経済成長、エレクトロニクステクノロジーの台頭で人間性が失われていく様を皮肉る意味の表現としても良く使われていました。

●しかし、今現在のデジタル、コンピュータ時代でも、ネット上などでIT機器が「叩いたら直った!」という話も多く聞かれます。叩くということが有効なトラブル解決手段のひとつとして今でも認知されているようです。

●でも本当にこの「叩く」ということは有効なトラブル解消の手段なのでしょうか?


※叩くというのは昭和世代に染み付いた悪癖

今時のIT機器類も「叩いたら直る」ことがまれにある

●そもそも叩いたらどうして直るのか、技術屋としてはそんな原始的なことで直るなんていうことは、到底許せないと思うわけです。しかしながら冷静に考えてみると実はこれにも一応根拠はあるのです。

●IT機器の中には光学ドライブユニットやスイッチ類、ファン類などのように機械と電子部品の組み合わせでできているものがあります。その中でも機械の部分に起きるトラブル要素として、経年による部品の劣化や変形、潤滑剤の劣化消耗、硬化による駆動部の固着などがあげられます。

●電子部品については、ユニット化、チップ化された部分の故障は少なく、多くは電気的に接続する金属端子などの「接点」にトラブル要因があります。

●これら2つの共通点は、外部から物理的な衝撃や振動などの力を加えることによって、ある程度の回復が見込まれるという点です。要するに「叩く」という行為が有効に働くことがある部分です。

●たとえば、機械的なメカ部の潤滑剤や接合部が劣化して固着したり、ほこりなどの付着などによって駆動部分が動きにくい状態になっている場合があります。叩くことで衝撃を与えると、その固着が外れたり、潤滑が一時的に回復するなどして動き出します。

●その結果、回らないファンが回り出すとか、出てこなかったディスクトレイが出てくるようになったりします。また、電気的接点も、叩いた衝撃や振動で接点がわずかながら動いたり摩擦が生じたりすることがあります。その結果接触不良が解消され、通電が一時的に回復して動作し始めることがあります。

●身近でよくある例としては、テレビなどのリモコンの電池が接触不良などで効きにくくなっている場合、リモコン本体を叩くと効くようになることがあります。それは電池が内部でわずかに動いて接点が多少回復して導通が良くなるためで、原理としては同じです。

●そのような原理で、無線式マウスやキーボードなど電池を使用している今時のIT機器類も「叩いたら直る」という現象が起きるようです。


※リモコンを叩くと電池が衝撃で動いて接触が一時的に良くなり使えるようになる。

叩くとリスク大!無理せずに修理したほうが得策

●しかし、叩いて直っていたリモコンも翌日にはまた効かなくなることもたびたびです。それは接点不良を根本的に解決していないからです。端子を磨いたり接点復活剤を塗布するなどの修理をせずに「叩けばどうにかなる」という勢いで毎日のように叩くことはお勧めできません。

●とりあえず一時的にどうしても動作させたいために叩くのは仕方が無いとしても、それを回復措置として当たり前のようにしてやるのは問題です。

●どんな問題があるかというと、繰り返し叩くことによる影響で外装が割れたり無理な力が加わって変形する、内部の回路に悪影響が出るなどして破損し、別の故障に発展しかねません。

●リモコンやマウスならまだしも特にパソコンを叩くというのは大問題です。衝撃や振動に弱いHDDが入っていますので、叩くことは止めておいたほうが良いでしょう。パソコンは精密機器ですから液晶モニタをはじめ、外装や端子類などは度重なる衝撃には耐えられる構造をしていません。

●また、タブレット、スマホ、音楽プレーヤなどの機器類は内部がオールインワンのユニットになっていて、メカ部や接点などはほとんどありません。叩いて直ることはほとんど見込めません。それどころかパソコンと同様に精密機器ですから叩くことで逆に故障の原因を作ることになるかもしれません。

●さらに、パソコンのソフトやスマホアプリが動かない、遅い、ネットがつながらないといったソフトウェアによるトラブルは叩いたところで全く意味がありません。かえって故障やトラブルの原因になります。本人のストレス発散以外、何らメリットはありません。「百害あって一利なし」とはまさにこのことです。

●叩くというのは、コンピュータ時代でしかも宇宙ステーション時代に現代文明人がやることとしてはとても知的な解決法とは言えません。無理せずに、おかしいと思ったら早めの診断、修理で重症化を避けたほうが得策です。

九州インターワークス 注目のページ
http://www.kumin.ne.jp/kiw/osoi.htm
「パソコンの安定化対策」

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古賀竜一

コンピューターサポートのプロ

古賀竜一(九州インターワークス)

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