充電式バッテリーを内蔵したデバイスや機器の正しい使い方と寿命を延ばす5つの方法
目次
音でトラブルを早期発見できる!
●今回のコラム連載は「パソコンの音」についてです。
●パソコンからは様々な音が発生します。パソコン内部には様々な駆動装置がありますので稼働中は絶えず何らかの音が出ています。専門家は通常の作動音と故障の場合の音は聞き分けられますが、音まで気にして使用している一般の人はあまりいません。ですから故障につながる音が出ていても分からないのは当然だと思います。
●しかし専門家でなくても、音と言うのは普段使用している人が一番異変に気づきやすい現象です。ちゃんと注意していれば故障の早期発見がしやすい要素でもあります。
●トラブルが原因で発生している音を放置すると、性能が発揮できないだけでなく、パソコン内部にダメージが出たりトラブルが悪化したりすることがあります。是非この機会にパソコンと音について知っていただき、トラブルの早期発見に役立てていただきたいと思います。
●パソコンから出る主な音の発生源と種類は以下の通りです。
音が大きい順番から
①CPUファン、ケーシングファン、電源ファン、グラボファンの音(主にデスクトップPC)等の回転音
②HDDの駆動音(回転と読み書きの2種類)
③メイン基板のビープ音、その他(光学ドライブなど)
以上が主な音の発生源と種類です。
●今回から3回にわたってパソコンと音について解説していきたいと思います。
まず第1回は「パソコンのファン類の音」についてです。
第2回はHDDの音
第3回はビープ音、その他
を予定しています。
CPUファンの正常な音とは?
●CPU「中央演算装置」冷却用ファン等の回転音
CPUはパソコンの中でも最も発熱量が大きいために常時冷却する必要があります。アルミ製や銅製のヒートシンクを介し冷却ファンによって強制空冷します。ノート型、デスクトップ型など種類を問わずほとんどのパソコンにCPUファンは装備され稼働しています。中にはチップセットやビデオカードなどの発熱が大きいコア部分にもCPU同様ヒートシンクファンが設けられている場合もあります。
※CPUヒートシンクファンはパソコンの中でも最も発熱するので巨大なもので放熱する必要がある。
●最近の冷却用ファンは、基板側コントローラで回転数を制御しています。負荷に応じて回転数をコントロールしますので常に一定の音が出ているわけではありません。負荷が低いと無音に近く、負荷がかかると回転数が上がるため音がうるさくなります。負荷の変化に応じて音がうるさくなったり静かになったりを繰り返して脈動することがあります。
●特に高負荷時には発熱量が上がるため回転数が大きくなってブーンという激しい音が出ます。この音はCPUの種類や搭載ファンの口径、冷却効率、回転数などで違いがありますがかなり大きな音になる場合があり、パソコンから出る騒音の中で最もうるさい音になることがあります。
●ネット動画で高画質再生時とかゲームプレイの際などは特に高負荷になりますので発熱が増し、ファンが猛烈に回り始めます。静かな夜間などでは耳につくような結構な騒音になります。そうなると「故障したのか?」と間違えてしまうこともありますが、それは正常な音で故障ではありません。
●しかし、あまりにうるさいからと言ってこれを止めることはできません。止めてしまえばあっという間にCPUなどの回路は高温になって温度センサが働きパソコンは緊急停止します。画面が固まって動かなくなったり保護エラー表示が出たりします。回転数は設定などで緩めることもできますが、放熱が追いつかなければ不安定な動作は避けられません。
ファンの寿命や故障などによる異常音とは
●ファンにホコリがたまったりファンの軸受けが給油不足になる、または軸の摩耗などで劣化するとファンの回転数が落ちたり、止まったりしてしまいます。そうなれば冷却不足で頻繁にフリーズを起こすようになります。CPUファンなどの回転のチェックはとても重要です。
●おかしくなったファンからは普段とは違う明らかに異常な大きい音やブーンブーンとかウォンウォンというような波打つような異音が出ます。そのような音が出始めた場合は速やかにファンの清掃や給油、ファン交換を行う必要があります。
●ノートPCの場合はブブブとかブンブンブン、コロコロコロとかいう音が出ている場合は異常です。正常なら音自体するかしないか程度しか出ません。音の原因はCPUファンにたまったほこりによるもの、軸受けの消耗、摩耗、劣化、油切れによるものです。分解してリペアするか交換になります。リペアで治る確率は50%と言ったところでしょう。
●CPUやGPUファンの騒音は、性能で左右されます。高性能なCPU、GPUほど発熱量が大きくCore i7などのCPUやGeForce、RADEONなどの高性能GPU搭載機種ではファン音も故障ではないか?と思うくらいにそれなりに大きくなりがちです。しかし故障したファンから出る音は明らかに普段と違っておかしいと思える音色と大きさになりますから判別はできると思います。
●最近のバリューモデルのCPUは消費電力が極端に低く、発熱もあまりないことからファンも静かな傾向になります。高性能なCore i5、i7などの中には低消費電力版というCPUがありますが、かなり低発熱で騒音や消費電力が気になる場合の選択肢になります。
●次に、CPU以外のファンについて述べてみましょう。ほとんどはCPUファンの話と重なる部分が多いのですが、特にデスクトップPCの音に関連があるのがファン類の音です。
デスクトップPC内部はファンだらけ
●デスクトップPCにはCPUファン以外に様々なファンが装備されています。
例をあげると、
○チップセット用ファン
○ケースファン(フロントとリアに1個ずつある物もある)
○電源ファン
○ビデオカード用ファン
高性能なパソコンでは多いもので1台に10個前後のファンが入っていることもあります。バリューモデルでも最低CPUファンと電源ファン、ケースファンで1台に付き最低でも2~3個はファンが内蔵されています。
●3個以上のファンが同時に回ればやはり結構な音量と音質で音が出ます。それでも最近では清音を求められる傾向が強いですから、ファンの品質改善などで以前ほどうるさくはなくなってきています。
●以前は、ファンの音自体がそもそも大きかったり、内部パーツの発熱が激しすぎて起動直後からゴーゴーと音を出し、負荷が大きくなるほど爆音に近い音が出るパソコンも平気で存在していました。この音が大きいほどすごい機械を使っている証明になってステイタスが満たされるといった倒錯した感覚の人もいました。
●時代は変わって、清音ブームの今ではすっかり爆音マシンは廃れてしまいました。周辺機器メーカーもそのことは十分に分かっていて、ファン自体が設計的にも清音化してきていることは確かです。しかし、ほこりや摩耗、故障などで騒音が出ることは避けられず、静穏化されたファンであってもほこりなどを放置すれば騒音レベルに達することも珍しくありません。
ノート型でもファンの音に注意
●ラップトップの場合は通常CPUファンが1個ですがチップセットファンが装備されている物もあって、ビデオチップ用ファンも加わり3個内蔵されている機種もあります。さすがにファン3個のノートパソコンは相当に五月蠅いです。
●ノートPCのファンは羽径が小さいので排気量を満たすために回転が高速になります。それによって周波数の高い音になりがちで、デスクトップのファンよりも耳触りに聞こえてしまいます。特に異音が発生すると我慢がならないほどの音になることがあります。とにかく清音のPCを望む場合は購入時にファンの個数などもしっかりと確認をした方が良いです。
※ノートPC用は小口径、高回転型なので耳触りな音色が多い
1個のファンが原因でパソコンが一気に危機的状況に
●パソコンのファントラブルの深刻度を音であらわすとどのような感じになるのでしょうか。
●最近何だかファンの音が少し大きくなってきたな・・・と言う程度の音でも実際には内部のほこりが驚くほどたまっているときがあります。音が出始めているということは何らかに異常が起き始めているということに他なりませんから、この時点での早期対策が必要です。
●次に、ウンウンと起動直後からうるさい、パソコンの中でネコでも鳴いているかのような音がして耳に付くときは、ファン類が既にダメージを受け始めています。冷却効率が悪くなり、パソコンがおそい、固まるなどしやすくなり寿命を短くしてしまいますので、我慢せずに一刻も早く対応をした方が良いでしょう。
●ほこりの掃除をしても音が改善しない場合は既にファンの回転軸摩耗やダメージが進行している可能性があります。交換修理の必要がありますので各メーカーサポートに相談しましょう。
●そして、ファン類最大の危険な音の状態、それはどんな音かというと!!!
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ーーーーー「無音」-----です。
●ファンの排気口から音がしない場合は要するにすでにファンは回転していません。動かなくなってます。完全に終わってます。パソコン内部はアツアツです。音がしない場合は危機的状態です。内部温度はすさまじい事になっている可能性が・・・この時点でパソコンは起動しなかったり起動してもすぐにブラックアウトする状態になっているはずです。ノートパソコンなら本体全体がトーストされたような温度になります。
●デスクトップPCで無音になったファンの種類で一番まずい状況のものから言うと、電源ファン、CPUファン、ビデオカードファン、ケースファンの順です。
なぜパソコンには冷却ファンが必要なのか
●最後に、なぜパソコンはこんなに熱くなってファンで冷却しなければならないのでしょうか?
自動車のエンジンで分かり易く説明してみましょう。エンジンはガソリンを燃焼爆発させてそのエネルギーを運動エネルギーに変換させることで動力を得ます。その燃焼すべてが運動エネルギーに変わることはなく、半分以上が燃焼熱となって余剰の熱エネルギーを周囲に放出しています。そのためエンジンは熱くなり、そのままでは焼けてしまいます。水冷式のラジエターなどで排熱して冷却する必要があります。
●これと同じようにパソコン内部でも集積回路や素子類の電子部品で消費する電力の100%すべてが計算に使われることはありません。計算中のリーク電流、余電圧、電気抵抗などで熱が発生します。この熱は稼働している間は止めることはできませんので冷却する必要があるわけです。
●そこで、銅やアルミ製のヒートシンクなど熱伝導の良い金属を発熱部分に密着させ、ファンによる空気冷却で放熱を促進させます。この熱の発生源は電気抵抗の問題ですので、原理的に今の技術でも避けることはできません。要するに永久機関が無いのと同じで、発熱の無い状態、つまり100%の効率というものが事実上無いのと同じですから熱の問題からは人類は逃れられないのです。
高耐久・高性能なPCファン メルセデスの車載ファンも作っているメーカーの物。
●パソコンのファン類はたかがプラスチックのファンなので軽視されがちですが、これが無ければパソコンは稼働できませんので重要性はCPUと同等です。
●やはり、日ごろから音には注意していただき清掃や修理で早期対策をすればトラブルを未然に防ぐことが出来ます。
●次回は パソコンと音 第2回「HDDの音について」です。
https://mbp-japan.com/saga/pc-pro/column/4005781
「パソコンとほこり」
http://www.kumin.ne.jp/kiw/hokori.htm