生産性を確実にアップさせる、ツールをつくる!【商人舎magazine4月号・原稿】
「あちらを立てれば、こちらが立たず」
「二兎を追う者は、一兎をも得ず」
など、昔からのことわざがある。
「仕事の現場で、よく耳にする」人も多いだろう。
「効率を追えば、お客満足度が低下する・・・」
「チェーンストア理論では、顧客満足は実現できない・・・」
本当にそうだろうか?
正しい効率の上げ方を、どれくらい知っているだろうか?
どれくらいチェーンストア理論を勉強して、実践してみたことが有るだろうか?
私は、批判に花を咲かせたい訳ではなく、それらの議論で勝ちたい訳でもない。
厳しい経営環境の中で、出来るだけムダ無くし、『稼げる経営』を遣ってもらいたいと強く思っている。
ただそのためには、「あちらを立てれば、こちらが立たず」のトレードオフの考え方ではなく、「あちらを立てて、こちらが立てる」という、トレードオンの賢い考え方が重要であると考えている。
■効率を追求すると、顧客満足度が下がる
効率を上げるということは、単純作業のムダを無くし、作業の処理量を高くするやり方を工夫するなどして、単位時間当たりの生産量を高めること。
そして、そこで浮いた時間や資金を、独自性を追求できることや、お客に喜んでもらうための商品やサービスを、戦略的且つ優先的に開発して、売場に投入をするということだ。
逆の良い方をすると、顧客満足を高めるために、ムダを無くして、時間と資金を有効的に使い、生産性を上げるということだ。
結果として、投入した時間や資金に対する、リターンを高めることに繋がるのである。
■人員が足りないから、遣りたいことが出来ない
現場で、人が足りないというとき、その多くは、「今まで10人いたのに、8人に減った」と言う様なことだ。
「人時売上高が〇〇万円だから、人が足りない」とは、あまり聞いたことが無い。
これは、販売部門も、レジ部門も同じだ。
人時売上高は、現場の生産効率を計るための重要な数値だ。
高めるためには、在庫の削減や作業改善、作業指示や物流、マルチタスクや横断的応援体制、リーダーのコントロールや担当者の作業訓練など、改善を積み重ねることが必要だ。
そして、それらの日々の改善努力によって、生産性の数値に大きな変化が生まれる。
特に現在起こっている様な、変動、固定、両コストの高騰や、競合環境を考えた時、絶対に努力しなければならない、経営課題である。
「人が足りない」は、「スキルが足りない」ことなのかもしれない。
そして、それが改善できれば、少ない人員でも今以上の成果を実現できるかもしれない。
■人材不足で思う様に業績が上がらない
人材不足ということは、多くの現場で事実かもしれない。
だが、人材は降って湧いては来ない。
人材は、ハンティングすることも必要である場合もあるが、基本的には、普通の人を教育訓練して、スキルアップをすることを計画して実行し、人材に育てる工程を踏まなければならない。
「うちは人材不足で・・・」という社長も、何人かお会いしたことが有るが、まず教育など遣っていない場合が殆どだ。
また、遣っているけど的外れ、という場合が多く見受けられる。
そして、そのほとんどの場合、社長自身も必要なことを学習していない。
他所の遣っている、表層的なことの真似だけではなく、基本原則から学べば、中長期的に成長するための重要な「考え方と、取るべき行動」が見えてくる。
業績は、それらのプロセスの実行レベルに比例すると考える。
■売ったことあるけど、売れなかった
「あっ、それね。売ったこと有りますよ」
「でも、売れませんでしたね・・・」
これも、現場でよく聞くフレーズだが、実践的マーケティング、取り分け「お客に興味を持ってもらうために、プロモーションの施策をどこまで実行したのか?」ということが、問われるところである。
多くの場合、プライスカードやお客の心を打たないPOPを付けただけという事例がほとんどだ。
「お客のためになる」「お客に絶対喜んでもらえる」と考えたら、正しい努力をして、お客に価値を伝えるべきだ。
その努力をして、お奨めの商品が売れた時、売ることの楽しさが実感できて、仕事のやり甲斐も高まるだろう。
実践的マーケティングの実行プロセスは、楽しく、面白いものだ。
それは、人と店舗の成長を支える重要課題だ。
■最低賃金では、良い人が集まらない
低い賃金では、募集を掛けても、なかなか良い人は集まってこないだろう。
そのためにも、先述した通り、生産効率を上げたり、人財育成の制度を作ったりして、仕事の楽しさを感じられる職場づくりに、日々努力する必要があるだろう。
現場では、やり方がまずいだけで、人員不足ではない場合も多く見かける。
この状態を続ければ、個人の報酬は上げられない。
良い人に入社してもらいたければ、賃金を上げることの出来る仕組みに変える必要がある。
生産性の高い会社にするためには、何と言っても現場のムダを少なくするための業務改善を、計画的に確実に実行することが求められる。
■企業規模が小さいから、安く仕入れられない
例えば、スーパーのバイヤーが、商品を少しでも安く仕入れたい場合、仕入れ先に対する折衝交渉力が重要だ。
仕入のロットや納品時期(時間)、配送や梱包方法、納品場所など、考えられる色々な価格決定の条件を出し合い、全体としてコストを下げる方法を探るようなことだ。
場合によっては、製造現場に出向くことも有るかもしれない。
その結果として、「商品の本当の価値がお客に伝わっていない」ということが発見できて、取引条件をそのままで売価を据え置くか、場合によっては値上げすることも有るかもしれない。
目指すべき関係は、仕入れ先と、Win-Win(自分も勝ち、相手も勝つ)ということを考えることだ。
折衝交渉力を、「こちらが勝つためのモノ」と考えている人もいるが、決してそうではない。
お互いにアイデアを出し合って、どちらもが得をする。
結果として、双方の利益になり、「足した利益が最大化する」と言うことを考えることだ。
そのことで、お互いの関係が長続きするし、結果として、仕入れ先から、価値情報を優先的に提供してもらったりできる様になる。
これが、プロの交渉力だと考える。
低価格だけが商品価値ではないし、お客が望むものは、他にたくさんある。
幾つかの事例をお話ししたが、参考にしてもらえる部分があったなら幸いである。
「・・・だからできない」と考えたら、脳は思考停止になるだろう。
考えることをしなくなる。
そして、それは楽なことかもしれない。
しかし、その先に成長は無いし、衰退に向かう。
「だからどうする」と考えると、トレードオンのアイデアや協力者が出てくるだろう。