数字を使いこなして、賢く稼ぐ‼ -その1-【商人舎WEBコンテンツ7月号原稿】

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーの業務改善

あなたは、数字(算数)は好きでしょうか? そして、活用しているでしょうか?

スーパーマーケットに関わらず、ビジネスをする上で、数字は重要なツールです。
ビジネスは、「稼いでなんぼ」です。
数字が好きか嫌いかというより、「好きであるべき」です。
賢く稼ぎたかったら、「使いこなせるようになるべき」です。

なぜなら、数字の持つ意味を正しく理解して使えば、ビジネスにおいて、大きな成果に繋げることが出来るからです。

数字は、見るだけでは意味がありません。データは加工して、『情報』に変えて、活用することが大事です。

現場で使える数字を知っていれば、競争を優位に進めることも出来ます。
また、戦略策定に活用して、実際にそれを実行して、検証を加え、更なる成長のための施策を考えることが出来るようになります。

ところが、スーパーマーケットの現場では、数字に強い人は意外に多くないようです。
「見方を知らない」
「知っていても、活用できていない」
という場合が多いのです。

重要なことは、知って、使いこなすことです。数字は、知っているだけでは、何の価値もありません。

意味のない数値を使うことは、時間のムダ

私は、若いころ色々な数式を教えてもらいました。
しかし、数字には、実際に使うものと、ほとんど使わないものとがあります。

交叉比率や商品回転率など、実績帳票にのっている会社もあります。
しかし、これって使い物になるでしょうか?

なぜなら、それを割り出す在庫高に問題が有ります。
本来在庫高と言うと、実地棚卸した金額を使います。
しかし、この棚卸在庫高は、
①故意に、通常日より減らされている
②連休前など、通常日より過剰になっている
などがあります。

これらの数値を使って割り出した、商品回転率や在庫日数など、何の意味もない数値です。
当然、交叉比率も、です。
ハッキリ言って、机上の論議の時間を増やすだけで、貢献度は非常に少ないと言えます。

営業戦略上は、日々の在庫がどうなっているかが問題であり、全体の合計ではなく、個々の商品の在庫数に問題があるのです。

在庫は、総額がどうかということは、重要ではありません。
在庫で重要なことは、それら自体、生きているかどうかということです。
つまり、鮮度が良いか悪いかが問題なのです。

この様に、数値や数式など、現場で有効的な数値を正しく理解して、効果的に活用する必要があります。

カルテとしての数値

現場の数値は、病院のカルテと同じ意味を持ちます。

ですから、実績数値は、データを確認して、問題が有れば、出来るだけ早く何らかのアクションを起こすことが重要であり、効果的であると言えます。
そのためには、出てきた数値を、必要に応じて加工して、『情報』に変える技術も必要です。
また、その加工作業が苦手であれば、出来る人にお願いすることも、テクニックとして持つべきです。

①情報を早く手に入れること
②必要な加工を施し、情報化する
そして、
③出来るだけ早く、責任者が確認する
④検証する
⑤必要に応じて、即時、改善活動に着手する
という、業務改善のサイクルの『仕組みを構築』することが重要です。

ですから、数字を理解することが重要になるのです。
また、どの様な『情報を取れる仕組み』をつくっているかも重要になります。

お金を生む『ベストレポート』の活用

ベストレポートは、POSデータの中でも、使えるデータの上位になると思います。

データとしては、部門やカテゴリー別など、売上『金額』順位と売上『数量』順位で取ることが出来ます。
収集する範囲は、活用目的によって、決定することになります。
単純に、ABC分析として使うことが出来ますが、それだけでは、勿体ないと言えます。

売上『金額順位』データは、主に販売戦略に使うと有効的です。
特に売上高上位品目(または、単品)は、重点管理品目です。
①容量やバリエーションなど、SKUの品ぞろえを強化する
②売場の一等地で展開すること
③プロモーション計画と実行レベルを上げる
④価格戦略を考える(特に、価値情報によって、単価を上げる)
など、『売場づくりの4P』の徹底を図り、売上高構成比の高い上位品目の売上拡大をはかることと、
差別化戦略で、「他社の追随を許さない」という思いと、そのための活動を行うのです。

一方、売上『数量順位』データは、主に発注や陳列量管理に使うと有効的です。
ムダな作業(工数)を生む原因の多くは、
①仕入れ過ぎ
②作り過ぎ
③出し過ぎ
なのです。
結果として、見切りや廃棄など、多くの修正作業(工数)の発生を招きます。
数量管理が出来ていない店舗は、これを一年中、当たり前の如く繰り返しています。
残念なことは、このことを「不思議にも感じないで」です。
これでは、生産性など上がるはずもありません。

有効な改善策としては、売上数量順位データの単品別・販売数量を確認して、陳列量と発注数の改善に取り掛かることです。
データの『値引き数量』を勘案して、適正値を探って、陳列量と発注数の修正を行い、適正数量に近づけていきます。

これらの行動は、粗利益改善だけに限らず、人時(人件費)削減と売り場効率アップなどにより、営業利益拡大に大きく関わる重要課題です。

その意味から、ベストレポートの活用は、P-D-C-Aの仕組みとして構築すべきです。

ベストレポートによる、値引き率と商品ロスの改善

更に、ベストレポートの活用について、解説します。
意外と知られていないのが、ベストレポートの応用価値です。

通常、POSシステムの場合、パソコンのモニター画面で見る他にも、帳票出力してみる方法があります。
更に、データをCSV(Comma(カンマ)Separated (区切った)Value(値))方式で、外部メモリーに取り出して、Excelなどの表計算ソフトにデータに取り込めば、様々に加工して活用出来るようになります。

例えば、下の表が、Excelを使って加工したものです。
この表-1は、販売情報を見る目的で、値引き率とロス率を割り出しています。

          【表-1】
商人舎1907①.png
値引き金額と値引きパック数から、改善箇所が見えて来ます。

例えば、順位1位の鮭切り身は、値引き金額(率)が低く、チャンスロスが推測できます。
(この場合、実地確認を合わせて行うことが必要)
その他の商品は、値引きのパック比率が高く、日々の陳列量の改善が必要であることが考えられます。

また、下の表-2は、「ちりめんじゃこ」のベストレポートの販売実績を加工したものです。
全体として、値引きパック数は多いのですが、値引き金額は、それほど高くないことが解ります。
売上高、粗利益高共に拡大させるためには、一部のSKUを除き、全体的に欠品を出さないことが、重要であることが読み取れます。現場の売場確認と管理が重要でることが読み取れます。

          【表-2】
商人舎1907②.png
もう一つ事例を紹介しましょう。
下の表-3は、かなり問題を抱えている鮮魚部門の刺身のベストレポートのデータです。

値引き点数も多く、商品ロスも非常に大きくなっています。
単純に造り過ぎ、出し過ぎが、考えられます。
また、このような案件の場合、全体としての管理レベルが低いことが考えられます。
開店時の品ぞろえや夕方の品ぞろえ、値引きのタイミングなど、現場の状況を確認することが必要です。

改善を加えれば、値引きが減り、売上高は一時的に低下することも考えられます。
しかし、粗利益の改善効果は、相当な金額が期待できます。
また、製造、値引き、その他売場管理に関わる、オペレーションが改善されて、工数削減による、人時削減も大きく期待できるでしょう。

           【表-3】
商人舎1907③.png

仕組みを作る

この様に、ベストレポートの販売実績データを加工することで、改善箇所は勿論ですが、粗利益貢献度や人時削減などの他、品質特性なども見えてくるようになります。

是非とも、データを情報化する仕組み構築したいものです。
費用対効果で考えても、外部に委託して、瞬時に出る仕組みを構築することも考えても良いと思います。

データは、見るものでは無く、活用するものです。
多いに使いこなして、『営業利益の拡大』に繋げましょう。


以上の様に、次回から数回に分けて、「利益を拡大するための」データの活用方法をお伝えします。

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新谷千里
専門家

新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングと作業改善、そしてコスト削減。他では教えてくれない理論と実地指導で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

新谷千里プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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