社長の一番の仕事は、マーケティング⁉

新谷千里

新谷千里

テーマ:スーパーマーケットのマーケティング戦略

先日、ある和菓子メーカーの社長から連絡が有り、「相談したいことが有る」ということで会うことになりました。

この社長は、10年ほど前、長年経営していた食品問屋を業績不振で廃業し、大変ご苦労をされていたことを以前うかがっていました。
現在は、和菓子製造のビジネスをやって、何とか債務の返済も終わりかけているとのことです。

和菓子売場

 ビジネスのこれから先が、描けない?

社長曰く、
「百貨店の催事販売や、ナショナルチェーンのスーパーのスポット販売など、これまで付き合いのあるベンダーなどの協力で、何とかやっています」
「でも、これから先、ビジネスの展開をどうしたら良いのか、考えてもわからないんです」
ということです。

更に、
「色々な人に相談をしていると、あれもこれも遣らなければ・・・という様になって、一体どうしたら・・・と、余計に判らなくなってきています」

ただ、
「今、Aという商品を製造して販売していてるのですが、取引先からは結構いい反応があるので、これを何とか拡大したいんです」
というのです。
「(商品Aは)添加物を出来るだけ使わずに製造していて、味も人気です」
「遠くからベンツに乗って、買いに来てくれる人もいます」
「数社のスーパーマーケットで販売してもらっていますが、リピートも来ています」
と言います。

私は、社長のお話を聞いていて、中小企業の社長の悩みと苦労を改めて感じました。
また、それと同時に、意外に簡単にビジネスを拡大することが出来そうだとも思いました。


 お金無し、アイデア無し⁉

更に社長の話は続きます。
「問屋からも、(商品Aのデザインは)あまりにも安っぽいパッケージで、何とかしたほうが良いと言われています」
「うちの嫁さんは、パッケージのデザインを変えようと頑張っています」
「でもそれも、いまいちパットしたものが、なかなか出来上がりません」
それと、
「今は、少人数の手作業で作っているので、製造量が限界に来ています」
「なんとか中古の製造機械を買って、製造量を上げたいと考えています。」
と言います。

ただ、
「今は、手元資金に余裕が無く、ギリギリの会社運営で、大きな投資が出来ません」
とも言うのです。

社長に、商品Aの写真を見せてもらいましたが、パッケージデザインは確かに何の飾り気も有りません。
エンドユーザーや販売先のターゲットを設定して、戦略的にデザインを考えることは重要です。
また、今後売上を拡大するためには、機械化して製造数も上げることを考えなければならないでしょう。

しかし、
先立つお金が無いし、前回の会社経営の失敗で、金融機関からの借り入れも難しいと言います。


 お金が無くても、マーケティング力が有れば・・・

私は、
社長から色々な話を伺って、逆に聞き返しました。

「商品Aには、スーパーマーケットや個人など、リピーターがいるんですよね・・・」
「昔からの取引先などに協力してもらって、製造メーカーを調べることは可能ですか・・・」
「過去の顧客リストのデータは、有りますか・・・」

社長からの答えは、すべてYESです。
この会社には、成功するための、隠れた資産が、十分に有ります。

第一に、リピーターがいるということは、商品力は有るということです。
添加物を極力抑えて製造している(将来は無添加を目指す)ということですから、潜在顧客は大いに期待できます。
あとは、『売れる』マーケティングの仕組み(プロモーション)づくりです。

第二に、ターゲットとする製造メーカーを探すことが出来れば、この商品の製造を委託することの可能性が出てきます。
もし、販売不振のメーカーが見つかれば、機械の稼働率を上げてお互いのビジネスを成長させる、ジョイントベンチャーを組むことが出来ます。
当然、初期投資はゼロで考えることが出来ます。

そして、第三に、
何と言っても、顧客データは、会社にとって最大の資産です。
「(商品Aは)過去の取引先に、商品を紹介しましたか・・・」と私が聞くと、
社長の答えは、NOです。


私は、
「奥さんに、パッケージデザインを考えることを止めてもらって、すぐにダイレクトメールを発送する準備をしてもらってください」
「A4サイズ一枚の紙に、商品案内のお便りを書きます」
「拝啓、・・・・・・・・・ この度、弊社の自信作が出来上がりましたので、ご連絡申し上げます ・・・・・」
「封筒に、商品を一個忍ばせましょう」
「宛名は、手書きです」
「差出人は、奥さんの名前にしましょう」
等々、直ぐに実行することを指示しました。


 POPとホームページ作成

商品は、リピーターが有るのですから、商品力は十分に有るようです。

必要なのは、潜在顧客に伝えるためのプロモーションです。
具体的には、
スーパーマーケットなどの店舗に、掲示してもらう『売れるPOP』です。
商品は、良いだけでは売れません。
販売数を上げるために重要なことは、POPなどのダイレクトなプロモーション・ツールです。

特に商品のデザインが今一つでも、マーケテイングの仕組みが有れば、売り上げを拡大することは十分可能なのです。

そして、ホームページの開設を考えました。
5ページ程度のホームページを制作して、直接的な経費は、2~3万円程度です。
ターゲットは、一般ユーザーで、商品の強みを徹底して伝えて、ギフトなどの商品化も考えます。

その後、販売店やベンダーをターゲットにした、BtoB用のホームページを作る予定です。
今までの百貨店との取引実績など、会社のアピール情報を掲載するのは勿論ですが、
販売店舗で使える営業POPなど、販促ツールのアウトプットも出来るように考えていきます。

この様に、大きくお金を掛けなくても、遣れることはいくらでもあります。


重要なことは、マーケティングとプロモーション。
そして、重要事項の理解とそこへの時間配分の優先です。

今後の結果は、今後紹介していきたいと考えています。



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新谷千里(経営コンサルタント)

有限会社サミットリテイリングセンター

100社以上の業績向上を実現した業務改善のプロ。売れてしまう実践的マーケティングと作業改善、そしてコスト削減。他では教えてくれない理論と実地指導で、競争の厳しい時代に確実に営業利益を向上させます。

新谷千里プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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