超高齢化社会と企業経営
通知を無視すると解散
この記事を見ている方は、令和2年10月15日付の法務局からの通知書を確認した社長様あるいはご担当者様ではないでしょうか。
この通知が来た以上、会社としては何らかのアクションをしなければ会社が解散されることになりますので、事業を行っている会社は注意が必要です。
この段階で通知に気付いてお調べいただいていることは、幸いなことで、何らのアクションをせず、解散されてしまった後に事業を継続したいと相談をされると多大な費用が発生することになります。
法務局ホームページ
令和2年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について
何故通知が来るのか
この通知が来たということは、この12年間の間に登記手続きを1度も行っていない株式会社、あるいは、この5年間の間に登記手続きを1度も行っていない社団法人又は財団法人ということになります。
株式会社の役員任期の最長は10年、社団法人・財団法人の役員任期は2年ですので、少なくともこの期間内に何らかの登記手続きを会社は通常行うものです。
これがされていないということは、会社が事業を行っていない可能性が高いため、法務局から一律に通知書を発送し、返事のない会社は解散みなし登記をしてしまうというものです。
登記簿謄本は、取引の安全円滑のために誰でも見れるものです。これが放置されているということは、役員が変更されている、亡くなっているのにそのままであったりするわけで、取引の安全を害します。そのため、このように1年に1度のペースで一斉に会社の整理事業が行われるわけです。
登記は義務なのか
役員任期登記を含め、登記手続き全般は義務であり、効力発生日から2週間以内に行うものと会社法で定められております。
会社法第915条1項(抜粋要約)
会社において登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
罰金があるのか
正確には、罰金ではなく「過料」という行政罰が発生します。
今回の通知に対して事業を行っている旨を返事をすると間違いなく過料が裁判所から決定されます。
この通知は代表取締役の個人自宅宛に送られます。
過料の金額については、裁判官の判断次第であり内容により一概には言えません。
少なくとも、会社法で上限は100万円とされておりますが、当事務所への相談者からの情報では20万円前後の過料が多いように感じています。
なお、この過料は会社経費にできませんので、代表取締役様が個人の支出で支払ってもらう必要があります。
会社法第967条第1号(抜粋要約)
代表取締役は、次のいずれかに該当する場合には、100万円以下の過料に処する。
① この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
どのような対応をすればいいのか
既に事業を廃止し行っていない会社は、返事をしないで良いでしょう。通知書にも「まだ事業を廃止していないときは届出をされたい」とあります。
一方で、事業を行っている会社は、アクションを起こして過料は甘んじて受け入れるしかありません。そして速やかに役員変更の登記手続きを行う必要があります。令和2年12月15日(火)までにアクションをしないと解散みなし登記がされてしまいます。
以下、場合分けして対応をご説明します。
①通知に既に返事をした会社様
既に法務局へ郵送または持参で不備なく届出書を提出したのであれば、解散登記をされることはありませんので、まずはご安心いただいて良いと思います。
しかし、後ほど裁判所から過料が届きますので覚悟が必要です。
過料がきた場合に、裁判所は形式的に、登記簿の役員就任日から起算します。会社法では原則として任期が2年だからという理由で、就任2年経過後から少なくとも登記申請を怠っているとして、過料を計算します。
この点がネックで、会社によっては、定款変更して任期を10年に伸長している会社もあると思います。会社によっては、任期伸長がわかる過去の株主総会議事録や定款があれば、証拠として裁判所に提出することで、過料を減額できることがあります。
弊所でもクライアントから相談を受け回答書を準備し、22万円の過料が8万円になった(実質14万円減額)というケースもありました。
ただ、この過料に対する異議申立て期間は、通知を受け取ってから『1週間以内』とされていますので、注意が必要です。弊所としても、通知を受け取ってから早急に相談いただかないと対応ができません。
また、届出をしたことで解散は免れましたが、役員登記手続きは自分で行う必要があります。解散されないからと登記を放置していると、来年も同じように通知が届き、過料が科されます。
②通知にまだ返事をしていない会社様
こちらは、期限内に上記のように届出を法務局にすることで解散を回避できることはもちろんですが、令和2年12月15日までに、役員登記手続きをすることでも回避できます。
届出をして過料の通知が来る前に、役員登記を速やかに行うということは、いつ役員が退任して、後任者がいつ就任したのかが登記簿で明確になりますので、上記の裁判所からの過料もある程度正確なものとなるでしょう。
登記を放置して、後で任期が5年でした又は10年でしたと証拠を1週間以内に裁判所に提出して対応することは本当に大変ですので、①②のケースいずれにしても役員登記手続きを速やかに必ず行うようにしてください。
みなし解散の対応については、会社様だけで判断することは難しいと思いますので、不安な方や、対応方法がわからない方は、弊所までご相談ください。
【文責 司法書士 山 添 健 志】
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