超高齢化社会と企業経営
取締役の決定とは
司法書士で実務を行っていると、『取締役の決定書』なる書類がしばしば登場します。
これは、何かといいますと、取締役会を置かない会社においては、会議体の業務決定機関が法律で定められておりません。そこで、会社法は、取締役会を置かない場合、業務執行については、『取締役の過半数で決定する』と定めています。(会社法348条2項)
そのため、議事録に代える形で取締役の決定を証明するために「取締役の決定書」なるものが必要となるわけです。
定款の定めや事案によりますが、主には、次場面で「取締役の決定」が必要となります。
・ 『本店移転』
・ 『代表取締役の決定』
・ 『株主総会の招集』
・ 『支店設置、支配人の選定』
決まった様式はあるのか
取締役会の場合、開催した際には、取締役会議事録の作成義務があり、議事録の記載事項も法定されています。
一方、取締役の決定については、作成義務や記載事項を定めた明文の規定が存在しません。
ただし登記の場面においては、商業登記法46条1項においては、「取締役の過半数の一致があったことを証する書面」が登記の添付書類に必要となると定められており、これにより、実質は作成を義務付けられているに等しい場面が多くあります。
法文は上記のとおり抽象的な規定ですので、様式については適宜の方式で差し支えないとされています。
しかしながら、一定数の取締役の「一致」を証するというためには、必要数の取締役が記名押印する必要があるとされています。
定足数はあるのか
取締役会と比較すると、最低出席人数(定足数)はあるのかという疑問が生まれます。
取締役会の場合、最低でも総取締役数のうち、過半数の取締役が出席しなければ議事を開くことが認められていません。
一方で、「取締役の決定」の場合は、明文の規制が特段ありませんので、定足数はありません。
また、会議体であることも要求されていませんので、会議を開催して決議をする必要もなく、持ち回り決議(書面決議)をすることも差し支えないと解されています。
実務で馴れてしまいますと、法律の根拠を意識をしなくなってしまいがちです。
今回は、取締役の決定について、立ち返って考えてみました。
【文責:司法書士 山 添 健 志】
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