議事録に割印(契印)は必要か
なぜ株主総会は6月が多いのか
定時株主総会が6月に集中する理由の根拠は『基準日』という会社法上の制度に基づきます。
会社法の条文から紐解いて根拠をご説明したいと思います。
基準日制度とは
株主総会で議決権を行使することができる者や配当金を受領する者を確定するため、一定の日を「基準日」と定めて、その日現在の株主名簿に記載のある株主を、権利を行使することができる者と定めることができます。これを「基準日制度」といいます。
【参考条文】
(会社法第124条1項)
株式会社は、一定の日(以下「基準日」という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主をその権利を行使することができる者と定めることができる。
基準日がない場合
基準日の定めがない場合、株主総会で議決権を行使できる株主や配当金を受領できる株主は、原則として、権利行使時の株主、すなわち、株主総会日または配当金の効力発生日の株主ということになります。
しかし、会社にしてみれば実際の権利行使に先立って、議決権を行使できる者やその議決権数を確定して株主総会の招集通知の送付を行い、また、配当金の計算を行う等、事前の準備作業が必要となります。
株主が絶えず変動することが想定される「公開会社」では、権利行使時の株主をもれなく把握して、権利行使させるのは事実上不可能であるため、一般的に基準日制度が活用され、会社は、この基準日をもって株主名簿を確定し、その日現在の株主名簿上の株主に権利を行使させています。
基準日を定めるには
基準日を定める場合は、基準日に株主が行使することができる権利(基準日から3か月以内に行使するものに限ります)の内容を定めなければならず、基準日の2週間前までに当該基準日および権利の内容を、公告しなければなりません。
ただし、定款に基準日およびその内容が定めてあるときは公告する必要はありません。
【参考条文】
(会社法124条2項)
基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から3か月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。
(会社法124条3項)
株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。
定款に基づく基準日
ほとんどの会社には、下記定款例の要領で基準日が定められています。
この基準日は事業年度の終了日と一致するように定められていることがほとんどです。
【定款例】
第○○条
当会社は、毎事業年度末日の最終の株主名簿に記載された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする。
第○○条
剰余金の配当は、毎事業年度末日現在における最終の株主名簿に記載された株主又は登録株式質権者に対して行う。
したがって、定時株主総会においては、基準日を定めるために公告を行う必要はありませんが、臨時株主総会や臨時に基準日を定めて剰余金の配当を行う場合には、その旨の定款規定がないことから、基準日を定めて公告する意義があるということになります。
もっとも、会社の知らないうちに株主の変動することが想定されていない「非公開会社」においては、基準日を設定することは少なく、そのために公告することは希であり、権利行使時の株主(株主総会日の株主)を株主として取り扱っていることがほとんどです。
定時株主総会が6月に集中する理由
基準日株主が行使することができる権利は『基準日から3か月以内に行使するものに限る(会社法124条2項)』とされております。
日本の企業は毎年3月末を事業年度の終了日としている会社が多く、それに伴い、基準日も3月末となり、そこから3か月ギリギリの6月末に定時株主総会が集中するという要因となっています。
事業年度の終了日を基準日とすることについては、上記のとおり6月末に定時株主総会が集中する結果となり、多数の株式を保有する株主が議案を十分に精査したうえで議決権を行使できないなど批判もあり、基準日をあえて、事業年度の終了日から1か月ずらす定款変更を行うなどして、株主への配慮を行う上場企業も出てきているようです。
【文責:司法書士 山 添 健 志】
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