上町断層帯の危険な兆候
専門家はJ-shis Mapをこうして見る
国立研究開発法人防災科学技術研究所がネット上で公開しているJ-shis map。見る人が見れば土地の軟弱度合いが一目で判り、活断層の情報まで出ていますので不動産購入を検討している人には、お勧めのページなのですが非常にわかり難いのが難点です。
そこで今回は、建築技術者がJ-shis mapをどう見ているのかご紹介します。
どのポータルサイトでも構いませんので、ポータルサイトの検索欄にJ-shis mapと打ち込みましょう。そうすれば画像の様な一覧が現れます。そこからJ-shis mapに移動する事が出来ます。
これがJ-shis mapの初期画面です。スタートをクリックして始めます。
すると日本地図が現れます。普段見掛ける日本地図と色が違います。この地図は確率論的に地震が発生しやすい場所を色で表現しています。じっくり見ていると北海道の東部を除いて、人が集まっているところが地震の発生確率が上がっている様に思えます。但しあくまでも確立の話しですので、今回発生した能登半島地震の様な地震をピンポイントで予想しているものではありません。
今回の地震を考えると、日本に住んでいる限り何処に住んでいても安全な場所は無いと覚悟する事です。その方が対策が立て易いです。
どの様な対策が立てられるのか
地図の上部に「表層地盤」と書かれたタブがあります。そこをクリックすると地盤の浅いところの軟弱を示す地図に変わります。
青い場所は地盤の固い場所。赤い色に近づくに従って地盤が軟弱になって行きます。地図を見慣れている人なら固い地盤は山岳部で平野に固い地盤が存在しない事が一目で判るでしょう。平野と云うのは山から土砂が流れて来て、水のお陰で平らになった地形を指します。つまり固い地盤であるはずがないのです。
マウスのホイールを回しますと、地図を拡大する事が出来ます。
これは大阪平野を拡大したものです。右側の青い部分は生駒山地です。左上の青い部分は六甲山脈です。あとの大部分は黄色又は赤ですね。大阪平野の真ん中に縦に黄色い線状の地形がみられます。上町台地です。上町台地は平野の中では比較的地盤がしっかりしていて、この台地上に「あべのハルカス」も建っています。上町断層さえ動かなければ上町台地は地震時に揺れの少ない平野の中では珍しい地域なんですが・・・・
ホイールは回し続けると、どんどん拡大し、四角のマス目模様になって行きます。東西に300m南北に200mほどのグリッドになります。ピンポイントではありませんが、その範囲内の土地の情報を確認する事が出来ます。任意のグリッドを複数回ダブルクリックしてみてください。
2~3回ダブルクリックを繰り返すと、画像の様な別ウインドウが開きます。これが重要になります。
このウインドウには土地の情報が掛かれています。情報の上から7段目に地盤増幅率を描かれた欄があります。右側に書かれた数字(画像では2.3)が大きければ大きい程、軟弱地盤である事を指しています。能登半島地震の映像でも、地面がうねる様に波打っていました。
軟弱地盤では地震は波と同じですから、標準的な地盤が1.0だとすると画像の地盤は2.3倍揺れるという事を示しています。軟弱地盤の地域を地震波が通り抜けて生駒山地の様な固い岩盤にぶつかりますと、地震ははそれ以上は進まず反射してやって来た方向に戻って行きます。さっき通り過ぎた地震ががまた戻ってくるという事です。
軟弱地盤で家を建てるには
軟弱地盤の地域では家を建てない事をお勧めしますが、家族の事情や経済的事情により軟弱地盤でした建てられない要はケースもあるでしょう。
では、被害を最小限に食い止める方法は無いのでしょうか。
考えられる方法は二つあります。一つは建物を出来るだけ軽くする事です。地震の際に受ける力は建物の重さに比例して大きくなります。大きくて立派なお屋敷が被害を受けているのに、簡単なパイプで作ったビニールハウスに被害はありません。ですので出来るだけ建物を軽く作り、地震をやり過ごす事でしょう。
もう一つは、基礎を頑丈にする事です。現在木造住宅で主流になっている「べた基礎」でも、まだ心もとないです。「べた基礎」にするだけでなく、地中梁を確実に機能するように十字に通し、建物が不同沈下しても、震災後セメントミルク等を地中に注入する事で不同沈下を是正出来るくらい頑丈にする事でしょう。