南海地震の発生確率が上昇しました。
耐震等級3{相当}と云う言葉が一人歩きしています
最近、耐震等級{相当}と云う言葉をよく耳にする様になりました。住宅のチラシを見ていても、耐震等級3{相当}とか記載されているのを良く見かけます。
耐震等級と云う言葉は、平成12年に施行された「住宅の品質確保の促進に関する法律」(品確法)に由来します。
品確法の中に、住宅性能表示制度と云う制度が規定され、一般の人でも住宅の性能を簡単な数値で、専門家に要求出来る様にする為に定められた制度です。
その法律の中では、耐震等級は1・2・3に区分され、耐震等級1は建築基準法同等程度、耐震等級2は建築基準法で規定する強度の1.25倍相当、耐震等級3は同法の1.5倍相当と規定されています。また、規定するだけではなく、耐震等級3を名乗るには、第三者機関による客観的な評価が必要であるとも規定されています。
しかし、チラシで良く見かける耐震等級3{相当}ですが、法律で定められた第三者機関の評価を受けていない疑いが持たれています。
第三者機関の評価を受けているのであれば、正々堂々と{耐震等級3}と謳えば良いものを、耐震等級3{相当}としているのです。
これは、「第三者機関の評価は受けていませんが、建築基準法の1.5倍の強度はありますよ」と云う言い訳ではないでしょうか。
第三者機関の評価を受けようと思えば、単に筋交い等の耐力壁の量を1.5倍に増やすだけでなく、品確法に規定されている構造検討(筋交い計算・水平構面検討・耐力壁線間距離の検討・N値計算等々)の検討を加えるか、許容応力度計算を行わなければなりません。
しかし、私の見たところ、建築基準法に規定される筋交い等の耐力壁の数量を、単に1.5倍にしただけで耐震等級3{相当}と謳っている様にしか、思えてならないのです。おそらく事業者本人も、耐震等級3の持つ意味も分からず、キャッチコピーとして勝手に使っているものと思われます。
近所に、建売住宅の工事をしていて、チラシが入っていましたので、ひやかしに物件を覗いて来ました。営業マンがやってきて、一生懸命セールスを始めます。案の定耐震等級3{相当}だから地震には強いと強調します。そこで、耐震等級3とはどんな性能なのかと聞き返すと、途端にしどろもどろになり、本社に電話を掛け始めます。一生懸命なのは分かりますが、駐在の営業マンの耐震に対する知識はこの程度です。
聞きかじりの回答で、「一般の家の1.5倍の強さがあります」と返事して来たので、水平構面倍率は幾らなのか聞き返すと、さすがにプロだと見抜いたのでしょう、セールスの情熱は薄れ、寄り付かなくなりました。
自社のみの評価で耐震等級は謳えない
耐震等級3の評価は、国交大臣の認定を受けた、検査機関(第三者機関)でないと行えません。自社で勝手に耐震等級3を名乗る事は出来ないのです。耐震等級3{相当}と云う表現も、非常に曖昧で、JAROに告発されてもおかしくないくらい、いい加減な表現です。
耐震等級3と正式に評価するには、住宅性能表示制度を活用する(地震保険等で優遇される)、長期優良住宅を活用する(税の減免等のメリットがある)、フラット35を耐震基準(金利優遇が受けられる)で申し込む、の三種類があります。
耐震等級3を目指すのであれば、上記のいずれかの制度を活用しましょう。
構造計算料を追加で請求する様な業者に頼んではいけない
「耐震等級3を取得する為には、計算料〇十万円必要になります」
業者に耐震等級3を取って欲しいと依頼すると、この様な返事が来る事があります。確かに第三者機関に評価を受ける為には、別途費用が必要になりますが、それは、評価手数料であって構造計算料ではありません。
構造計算は、評価を受ける受けないに関わらず義務として行う様、建築基準法で定められているのです。
それを、構造計算料が別途必要と返答して来るのは、「この住宅は構造計算もロクに行ず、ヤマ勘で構造材を決めて、適当に建てています」と宣言している様なものです。
まさかと思われるでしょうが、これが多くの木造住宅の実態です。構造計算を行う義務はありますが、建築確認申請に構造計算書の添付義務がないのです。嘘だと思われる方は、建築確認申請書をご覧になって頂ければわかります。構造計算書は添付されていません。
構造計算を行わなければならないのに、構造計算を行ったか誰も監視していないのです。つまり、構造計算を行って、構造的に問題の無い建物が建っているか否かは、業者の良心に掛かっていることになります。
計算料を別途請求する様な業者は、建築基準法や耐震等級の意味すら分かっていない業者です。絶対に相手にしてはいけません。