木造三階建ての基礎は短期で決まる。

福味健治

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テーマ:【免震住宅・地震対策】

木造三階建ては風に弱い

木造の住宅の基礎と、その他の構造を比較した場合、圧倒的に違うのは、建物の重さです。
鉄骨の建物で㎡あたり5トン前後、鉄筋コンクリート造で10トン前後なのに対し、木造の建物は三階建てでも2トンを上回る事は稀です。
木造は他の構造に比べ圧倒的に軽いのです。地震の力は物体の重さに正比例します。つまり重い建物ほど地震の力を大きく受けるので、木造の建物は地震には有利なのですが、その軽さが台風時には仇になります。
三匹の子豚を例に出すまでもありませんが、藁の家や木の家は風で吹き飛ばされてしまいます。

木造の基礎は長期荷重に耐えられても短期荷重に耐えられない。

常々、建物が地球の重力で垂直方向に受けている力を長期荷重と云います。長期荷重に耐えようと思えば、柱の数を増やしたり、梁背の大きい梁を用いる等します。
それに対し、地震とか、台風とか、横から受ける力を、長期荷重に対応する言葉として短期荷重と云う言葉を用います。短期荷重は長期荷重と異なり、常に受ける力ではなく、瞬間的に受ける力ですから、柱とか梁の抵抗する力(許容応力)を1.5倍まで大きくする事が認められています。
瞬時であれば、長期的に受ける力の1.5倍程度は耐えられるのは感覚的に考えても納得がいきます。
私達が、木造住宅の構造設計を行う場合、その拠り所となる、「木造軸組工法住宅の許容応力度設計」(グレー本)と云う本があります。この本を見ていますと、木構造に関しては上記と同じ内容の事が書かれているのですが、基礎に関しては、長期荷重の検討がメインで、短期荷重の検討は殆ど書かれていません。コンクリートの底盤の設計に至っては何も書かれていません。
その為、グレー本だけを真に受けて、検討を終えてしまうと、台風が来た時にペタンと倒れてしまう家になり兼ねないのです。

短期荷重が長期荷重の1.5倍を超えると短期荷重の方が大きい

長期荷重の場合、基礎の底盤にはほぼ均等に建物の重さが加わります。しかし、短期荷重は建物を倒そうとする力が働きますので、回転モーメントが加わります。その為、押された側の端部に荷重が集中します。許容応力が1.5倍ありますので、短期荷重と長期荷重の比が1.5倍を超えると、基礎の構造は短期荷重で検討しなければなりません。
しかし、先ほど言いました様に、拠り所となる構造設計の解説書には、短期の検討がなされていないのです。
実際に木造では、短期と長期の比が何倍くらいになっているのかと云いますと、建物の軽さが災いして長期荷重が少ない為に、3倍前後が普通です。1.5倍以内に収まる建物はまずありません。
殆どの木造住宅の基礎の構造は短期荷重を検討しなければならないのです。
去年、今年と大きな台風が日本列島を襲いましたが、これは、地球温暖化に伴い、巨大台風の来襲が常態化するでしょう。その時の憂いを少しでも無くす様、短期荷重による基礎の設計を心がけたいものです。

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福味健治
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福味健治(一級建築士)

岡田一級建築士事務所

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