南海地震の発生確率が上昇しました。
氾濫する耐震等級相当
耐震等級と云う言葉が世間に広く認識され始めたために、最近は建売住宅でも「耐震等級3相当」とかを宣伝文句に使っているチラシを見かける様になりました。耐震等級相当と云う言葉に、法的な規定はありません。品確法の耐震等級に、勝手な解釈で同等の効力を有する性能とでも言いたいのでしょう。
しかし、耐震等級とは、第三者の客観的な評価を得る事で、初めて耐震等級〇と名乗れるのです。
勝手解釈で、第三者の客観的な評価を得ずに耐震等級を名乗る事は出来ません。厳密に云えば過大広告又は詐欺です。
耐震等級相当では、何の安心にもならないだけでなく、地震保険の割引や、金利優遇措置も受けられません。
何も分からず業者を信用したでは済まされない失敗
先日、新築の物件が、どうも様子がおかしいと言う相談を受け調査しました。新築なのに、二階の物音が一階ではっきりと聞こえ、一階にいても二階で誰がどこにいるのか分かるのだそうです。お伺いして、様子を伺っていると、話し声とかは聞こえないのですが、二階で人が移動しているのが、軋み音とかで手に取る様に分かります。
竣工図面を拝見していますと、確かに壁の量は通常の家より多い気はしますが、配置が偏っており、木構造に詳しい設計者ではない事が一目でわかりました。
計算書らしきものがないので、同じ間取りで構造計算をし直す事にしました。
すると、簡易計算である壁量計算を行うと、確かに建築基準法で必要とされている壁量の1.5倍の耐力壁が確保されているのですが、許容応力度計算を行うと、なんとアウトになってしまったのです。壁の配置は辛うじてクリアしていましたが、一階と二階の壁の乗りが悪く、二階を支える梁の強度が全く足りていません。
これが、物音が筒抜けになってしまう原因でした。
この事実を報告すると、家主さんは愕然とされ、訴訟すると息巻いておられました。
後悔は先に立てない
当然民事での訴訟になりますが、勝てるかどうか微妙なところです。私も訴訟の専門家ではありませんので、何とも言えませんが、詐欺行為を相手がしている様にも思えません。(紛らわしくはありますが)
耐震等級3と名乗れば、明らかに詐欺行為です。しかし、チラシには「耐震等級3相当」と謳っているのです。また、許容応力度計算でアウトになっても、建築基準法には抜け道があり、木造では簡易計算で済ませる事が許されているのです。これも、許容応力度計算を行いますと、約束しているのでしたら契約違反ですが、どの計算方法を行うか家主さんは特にリクエストされていない様でした。
耐震等級3には程遠い家ではあるのですが、「耐震等級3相当」に明確な定義が無い為、相手の勝手な「耐震等級3相当」の言い分が通ってしまう可能性が高いのです。
建築基準法は、人命を守ると云う本来の趣旨から大きく逸脱し、造り手の立場を守る法律でしかなくなっています。建築基準法だけに頼らず、品確法に定義されている耐震等級を取得するように、積極的にリクエストしましょう。
リクエストするなら「耐震等級3」と明確に
耐震等級を取得する方法は現在三種類あります。
1住宅性能表示制度の活用
2長期優良住宅の取得
3耐震等級によるフラット35の活用
以上の三種類です。これらは全て、第三者機関が耐震等級を評価しますので、客観的な建物の耐震性能を知る事が出来ます。今回の様な不幸な出来事に合わずに済むのです。