お金を掛けずに地震に強い家にする方法
木構造には、不可解なダブルスタンダードが存在する
鉄骨造も鉄筋コンクリート造も、広い意味では、安全を検証する手段は一つです。構造計算による安全検証のみが認められています。しかし、木造だけ、簡易な壁量計算による方法と、詳細な構造計算による方法が認められています。
普通であれば、簡易計算を行う場合は安全率を多く見込みます。例えば、省エネ計算も、簡易法と詳細法がありますが、簡易法は計算が簡単なのですが、使用する断熱材は詳細法よりも性能が良い、高価な断熱材を使用しなければなりません。これに対し詳細法は、より詳細な計算をする事によって、性能の劣る安価な断熱材を使用しても、所定の性能を満たす事が確認できるのです。
これが普通のダブルスタンダードです。
しかし、木構造は簡易法と詳細法の計算結果が逆転しています。簡易法の方が基準が甘いのです。
簡易な壁量計算は、昭和26年の建築基準法発足以来ある計算方法で、昭和56年と平成12年に一部改正されていますが、基本的な考えは昭和26年のままで、経験を頼りにした方法です。後発で構造計算法が確立されましたが、構造計算と壁量計算ではその結果の乖離が甚だしいのです。
下に同じ条件で、壁量計算と構造計算を行った結果を掲載します。
壁量計算で耐震等級3を設計してみた
この画像は、筋交い計算を行って耐震等級3を設計した場合の筋交いの位置と数を示しています。赤く塗られた場所が筋交いの位置で、90x45mmの筋交いをたすき掛けで配置し、外周部には面材耐力壁を設けています。筋交いの数は1階で6か所2階で5か所あれば、良い事になります。これでも耐震等級3を狙っていますので、通常の建物の1.5倍の耐力があるとされている構造なのです。
構造計算で耐震等級3を設計してみた
この画像は、構造計算によって耐震等級3を設計した場合の筋交い位置と数を示しています。赤く塗られた場所が筋交い位置で、90x45mmの筋交いをたすき掛けして、面材耐力壁も筋交い計算と同じ位置に同じ数量を配置しています。筋交いの数は1階で12か所に増え2階でも8か所に増えています。しかしそれだけでは足らず、面材耐力壁を配置した外周部にも90x45mmの片筋交いを1階で10か所2階で3か所いれています。これでようやく耐震等級3が取得出来るのです。
矛盾している二重の基準
省エネ計算でも云いました様に、簡易計算の方が安全率を上げないといけないのに、こと木構造に関してのみ、壁量計算の方が筋交いの量が少なくて済んでしまう(安全率が下がった結果でもOK)のです。これが、地震が発生する度に、木造の建物ばかりが倒壊してしまう大きな原因です。熊本地震では筋交い計算を行った耐震等級2の家が倒壊していいます。
国が何故、こんな理不尽なダブルスタンダードを黙認しているのか理由はただ一つです。木構造に熟知した技術者が、需要に対し圧倒的に少ない為です。今まで何度も、このダブルスタンダードを解消する事が国会でも議題として上がりましたが、建設業界の混乱を理由に沙汰闇になっています。
木造住宅を地震から守るのは貴方自身です。
国がこの間違った二重基準を、政治的な理由で是正しないのであれば、貴方の財産を守るのは貴方自身でしかありません。建物を建てる際に、貴方が何も言わなければ、簡易な壁量計算を元に、地震に弱い家を建てられてしまいます。国が壁量計算を認めている以上、業者が壁量計算を根拠に家を建てて、万が一それが倒壊しても何も文句が言えないのです。家を建てる際は、構造計算が条件だとはっきりと業者に伝えましょう。