断熱材は省エネに重要ですが、断熱材の良否で全てが決まる訳ではない。
どちらが優れているか
昭和40年後半、一般住宅にも断熱材を入れる事が、旧住宅金融公庫の設計基準に盛り込まれ、急速に普及しました。断熱材の始まりはグラスウールが先行しましたので、壁体内にグラスウールを張り付ける内断熱が一般的でした。その後昭和50年代末に、自己消火機能を持つ発泡成形板が開発され、断熱材として用いられる様になりました。成形板ですので、グラスウールの様に壁の内側に納めると、隙間が出来易く不都合なので、壁の外側に張る、外張り断熱が考案されました。
価格的には、発泡成形板の方が割高な為、性能でグラスウールを凌駕する必要がありました。外張り断熱のメリットは、ヒートブリッジ(熱橋部)を作らずに、家全体をすっぽりと覆える事です。成形板の熱伝達抵抗の良さと相まって、数値的には外張り断熱の方が良い断熱性能が得られます。
価格重視ならグラスウール
グラスウールの特徴は安い事です。30坪前後の家であれば、30万円代で断熱工事が可能です。同程度の性能を発泡成形板で施工すれば、50~60万円程度必要になります。グラスウールは性能で発泡成形版に劣りますが、断熱性能は断熱材の厚みも加味されますから、性能の悪い分断熱材を厚くしてやる事で補う事が出来ます。グラスウールはガラス繊維で出来た綿ですので、湿気を嫌います。結露水等で濡れてしまいますと、極端に性能が低下します。ですので、市販されているグラスウールは防湿シートにくるまれて販売されています。また成形板と同等の性能を得ようとすれば、厚みが必要ですので、壁の中に用いられます。外張り断熱に使用すれば、厚みが得られず、性能の悪い家になってしまいます。
内張り断熱が特に性能が悪いと云う訳でもない
外張り断熱の特徴として、ヒートブリッジが無いので性能が、内断熱に比べ良いと云われますが、断熱性能に限って云えばそうでもありません。熱橋部分に当たる柱は木材ですから、断熱材に比較したら、熱伝達抵抗に劣りますが、食卓では鍋敷きに使われるほど、熱伝達抵抗の大きい材料です。軽量鉄骨のプレファブ系住宅であれば、柱は鉄骨ですので、ヒートブリッジの影響は避けられませんが、木造では大きな問題とはなりません。温熱計算を行う際には、断熱材の入ってる部分の壁と柱等で断熱材が途切れている部分を個別に、熱貫流率の計算を行い、それらを面積按分した合計値がその壁体の熱貫流率となりますので、正確な施工さえされていれば、内断熱と外張り断熱では、性能の違いは出ません。
外張り断熱の優位性は気密性能に現れる
単位床面積当たりの壁面の隙間面積をC値として表現します。これが気密性能と呼ばれるものです。丁寧な施工をすれば、内断熱でも性能の良い家は造れますが、同程度の施工レベルであれば、外張り断熱の方が気密性能は良くなる傾向にあります。住まいの温熱性能は、断熱材の断熱性能と建物の気密性能で決まりますので、お金を掛けてでも温熱性能の良い家を望む方は、外張り断熱をお勧めします。しかし、地域的に見て寝雪が見られるような地域ではない、温暖な地域であれば、内断熱でも十分な温熱性能を得られるかと思います。