上町断層帯の危険な兆候
10月9日NHKスペシャルでリビングの広い家は危ないと云う趣旨の報道がありました。二階の壁と一階の壁が揃っている割合を壁の直下率と云います。直下率が高ければ高いほど安全で直下率の低い建物を建てたばかりに新築の家が倒壊に至ったと報じていました。
大筋で間違いはありませんが、闇雲に直下率の高い建物を建てる必要もありませんし、直下率だけを信用して建物を建てても耐力壁のバランスが悪ければ危険な建物に成り得ると云う事を忘れてはなりません。
NHKが報道したかった意味を汲み取ると下の画像の様な、一階に耐力壁が無く二階に耐力壁が乗っている家は危険だと云う事です。
前回もお話ししましたが、家が水平力を受けると屋根面とか二階床面と云った固い部分に力が集中します。その結果建物の構造体に力が加わり、赤で示した構造材には圧縮方向の力が加わり、青で示した構造材に引っ張りの力が加わります。
すると一階に耐力壁が存在しませんので建物は右に傾き始めます。そして建物が許容する以上の力が加われば筋交いが破断したり外れたりして倒壊に至ります。
ここまでの内容は全く正しいのですが、例として取り上げていた倒壊建物は間口がもっと広くリビングの一部分を取り上げてここが弱いから建物が倒壊したと結論づけるのは尚早かと思います。なぜならば、リビングに耐力壁を設けずとも他の空間で耐力壁を設ける事ができたはずです。下の画像の様に他の部分で耐力壁を確保できればリビングを大空間にしても、地震には抵抗できます。(耐力壁直下の梁は通常より大きくする必要はあります)
結果的に見れば、倒壊事例の建物は倒壊方向の耐力壁が総量として少なく、今回の地震に耐えられなかったのです。
番組の構成上、話題性とか新事実とか一目を引くタイトルを設けないと、人々の関心を集める事が出来ない為あの様な編集になったのかと推測しますが、事実はもっと平凡で悪い要素が重なり合って不幸にも倒壊に至ってしまったと云うのが真相です。
住宅設計は、安全性・快適性・利便性・意匠性等々様々な要求を満足させないと良い住宅は出来上がりません。間取りを考える時は素人判断せず、かと言って専門家に下駄を預けるのでもなく、専門家と協調しながら進めて行くのが宜しいかと思います。