養老院「三太」
プロは間取りを考えている時、同時に立体もイメージしています。一階の間取りを考えながら二階の間取りを考えたり、外観を考えているのです。
また、柱位置や壁の位置、外側の景色や光の入り方、道路からの見られ方も考えています。それらを同時に殆ど無意識でやっているのです。
将棋の上手な人に、定石の話しを聞いた事がありますが、その名人曰く「いつも流れに注意して駒の一つ一つは見ていない」との事でした。凡人は駒の進み方ばかりに気を取られ、盤全体を掌握出来ず相手の進み先も読めていないと云う事なのでしょう。
また、モーツァルトも知人への手紙に同様の事を書いています。作曲する約束の期日が近づいているのに、中々作曲しないモーツァルトをたしなめると、「頭の中では全部出来上がっているのです、今晩一晩掛けて楽譜に写すだけです」と。モーツァルトは主旋律をイメージするのと同時にハーモニー全体がイメージできたのでしょう。フィガロの結婚序曲を聴いていると、次から次へと出てくる場面展開の様なメロディーの多様性に圧倒されます。
一晩で書き上げると云うのは虚言ではなく、本当にそんな作曲方法をしていたのだろうと、なんとなくですが判る気がします。
私もプロの端くれですので、カタチを創造する時は、同時進行で色々な角度からモノを見ています。ただ凡人ですので、コンピューターの助けを借りてちょっとだけ未来を覗き見したりします。
頭の中で写真の様な立体がイメージ出来てはいるのですが、建築は高額物件でしかもお客様のお金をお借りしてカタチにしていく商売ですから、イメージ先行で工事を進める訳にはいきません。
そこで、こっそり画像の様な構造模型を見たりして、イメージの検証を行います。この模型はパソコンの中で自由に向きを変える事が出来て、自分のイメージを頭に焼きるける事ができます。
こうした、イメージ→具体化→検証→改良と云うサイクルを経て正確なカタチになって行きます。