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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

木造免震住宅の現状

2012年5月8日

テーマ:【免震住宅・地震対策】

コラムカテゴリ:住宅・建物

免震構造住宅は、まだまだ一部の人にしかその能力を知られていません。
建築の専門家でも制震構造と免震構造を同じ視点で比較する人がいます。それも経済性を比較対象項目に入れて制震構造が有利であると結論付けています。
装置単体で比較すれば、制震装置の方が経済的です。しかし、建物全体の価格比較や被災後の復旧費も比較の対象にすれば、経済性は逆転します。
耐震や制震構造が震度7の地震が来れば、震度7かそれ以上の揺れ方をするのに対し、免震構造は震度4程度(1/16程度)に抑え込みます。
水道・ガス・電気のライフラインさえ復旧すれば、直ぐに普段の生活が出来るので、地震災害の時家族のことより仕事を優先しなければならない人からの問い合わせが多数寄せられています。

しかし、それほど優秀な免震住宅が何故専門家でも積極的に導入しないのか疑問が残ります。それは免震装置が、ほぼ一社に独占された装置であるためです。特に木造住宅の様に重量が軽い建物で、有効に免震させられる装置は、転がり免震以外ありません。免震装置にはゴム免震・滑り免震・転がり免震が国交省の告示に規定されていますが、ゴムや滑りは摩擦係数が大きすぎて木造住宅には効果が疑問視されているのです。転がり免震装置(支承)はIAUと云うメーカーがシェアの殆どを占めています。一社独占は市場の健全な成長を阻害します。
パソコンやカラーテレビが開発当初よりどんどん価格が低下したのは、競争原理に基づく市場原理が働いた為でした。複数のメーカーが技術を競って且つ価格競争が無ければ健全な成長はありません。

今後30年以内に7割の確率で発生すると云われている、東海・東南海・南海地震に国が真剣に対処することを考えているならば、国策として転がり免震装置以外に木造住宅でも免震する装置を開発させて一社独占状態を解消させることでしょう。

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福味健治

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福味健治(岡田一級建築士事務所)

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