地震が起きたら大阪平野に安全な場所はない。
昭和56年に建築された分譲マンションの耐震改修設計の依頼がありました。
木造ばかりでなく、RC造の耐震改修も数棟こなしましたが、分譲マンションは初めてです。新たな問題にぶつかっています。
●地権者の多さ
分譲マンションは、住戸の中は個人所有ですが、バルコニーの床を除けば、構造体・廊下・エントランス・エレベーター・階段は共有持分です。共有持分の部分だけで耐震改修出来れば問題ないのですが、個人所有の住戸内に補強が及ぶことがあります。外壁の塗り直しと云った共有部を修繕するのと訳が違い不公平感が生まれます。
●費用の問題
管理組合が管理費を徴収し、改修積み立て金を毎月募っているのですが、外壁改修程度の資金がせいぜいで、億単位の耐震改修となると、一住戸当たり負担額も数百万円に及ぶ事になります。支払える人ばかりなら問題ありませんが、中には管理費さえ滞納する人もおられます。
●助成金の少なさ
木造住宅の耐震改修も同様ですが、被災して避難民が多く出てしまえば、困るのは行政のはずなのに行政は耐震化工事にまだまだ積極的ではありません。住民がこぞって耐震改修を受けようとする意欲を削がれる様な、微々たる助成額です。国会の質疑で、耐震改修に掛かる費用と瓦礫撤去・仮設住宅建設等復旧費用の比較をしていましたが、耐震改修費用は復旧費の半分程度の予算で済みます。
公共の税金を使って耐震改修を全額補助すると、持ち家の人と借家の人に不公平が生まれると云う意見もありますが、死者数を抑えて、費用が少なくて済むのであれば、全額行政負担でも結果的に全市民の幸福につながります。
●専門業者の少なさ
耐震改修工事の専門業者が以外に少ないのに驚きました。ここ十年程は木造住宅が殆どでしたので、あまり感じませんでしたが、中堅クラスのゼネコン(総合建設業)が弱体化しています。名前だけは残っていますが、大々的にリストラを図り会社のポテンシャルが以前と比較にならないほど落ちています。相談を持ちかけても、云われた通りの施工はするが、積極的な提案をする能力はうちには無いとの返答が返ってきます。億単位の仕事を取りに行くのに、この消極性は10数年前には考えられませんでした。
このまま、救済の手が差し伸べられなければ、大地震が来れば倒壊の恐れがあります。倒壊に至らなくても、復旧工事もままなりません。解体工事は阪神大震災の例を見ても公費が当てられるでしょうが、解体に際しては居住者は建物の権利放棄を要求されます。
改めて、分譲マンションは買うべきではないとの気持ちを新たにしました。