評価制度の研修で、いちばん空気が変わったのは「手紙」でした

道下真介

道下真介

テーマ:ビジネス・職場における”ほめ育”



こんにちは。

ほめ育コンサルタントの道下真介です。

先日、ある建築関係の会社で、人事評価制度をつくる研修をしてきました。

等級、給与テーブル、評価基準。

いわば「数字とルール」を決める一日です。


けれど、その日いちばん場の空気が変わったのは、制度の話ではありませんでした。

社長が、社員一人ひとりに宛てた手紙を読み上げた時間です。




社長が、手紙を読み始めた


この研修で、私は社長に事前に宿題を出していました。

社員一人ひとりへの「日頃の感謝」「努力や強みだと感じているところ」「次への期待」。

この3つを、文章にしてきてもらうことです。


社長は「自分のことを話すのは得意ではないから」と、想いを文章にまとめて読み上げる形を選びました。

自由に話すと、いろんな方向に飛んでしまうから、と。


そして研修の途中、社長は一人ずつ名前を呼び、手紙を読み始めました。

ちなみにこの手紙、講師の私も中身を読んでいませんでした。

だから、台本のない、社長の本音の時間です。


「あなたがいなければ」


最初に読まれたのは、先代のころから会社を支えてきたベテランの方への手紙。


「先代が倒れたとき、僕は現場のことしか分かりませんでした。

営業も、お金のことも、何も分からなかった。

日々、支えてもらっていることに感謝しています。」


「あなたがいなければ、今の会社は続いていなかったと感じています」


面倒な仕事を引き受けてもらっていること。

銀行との信頼関係を築いてもらっていること。


ふだん言葉にしたことのない感謝が、具体的な場面つきで、次々と読み上げられていきます。

読まれた本人は、少し照れながら、こう返しました。


「求められていなければ、勝手にはできないこともあります。

具体的に求めてもらえたら、もっと動きやすいです。」


感謝に対して、本音が返ってくる。

ふだんの業務では決して生まれない会話が、そこで生まれていました。


手紙は、続きます。


事務のスタッフの方には、

「あなたの電話対応は、私が今まで出会った中でいちばん上手です」。


いつも明るい方には、

「あなたがいるだけで、事務所全体の雰囲気が明るくなっています」。


入社して間もない若手の方には、

「分からないことをそのままにせず、すぐ電話で聞いてくれる。その素直さがすごくいい」。


抽象的な「いつもありがとう」は、ひとつもありません。

その人だけの場面を拾った言葉ばかりでした。


別のスタッフの方は、手紙を受け取って、こう言いました。


「今の仕事は初めてのことばかりで、ずっと不安でした。

でも頑張れているのは、社長がありがとうって言ってくれるからです」


数字とルールを決めるための一日の中で、この時間だけ、部屋の温度が確かに変わりました。


手紙には、順番がある


実はこの手紙、書く順番を設計してあります。


最初に、日頃の感謝。

次に、努力と強みの承認。

最後に、次への期待。


人は、

自分の存在に感謝され(ここにいてよかった)

能力を認められた(自分はやれている)状態になって

はじめて「次はこれを頑張ってほしい」という期待を素直に受け取れます。


順番が逆だと、同じ言葉が「ダメ出し」に聞こえてしまうのです。


期待だけを伝え続けて空回りしている職場は、少なくありません。

足りないのは期待の量ではなく、その手前の感謝と承認です。

そしてこの日、期待のパートでいちばん心に残ったのは、社長が若手に語った自分自身の後悔でした。


「僕は若いころ、ちゃんと学んでこなかった。

その機会損失の大きさを、今になって痛感している。

だから君には、学びに時間を使ってほしい」


自分の弱みを添えた期待は、説教ではなく、贈り物として届きます。


心の中の感謝は、ないのと同じ


「感謝はしていますよ。言わないだけで」

経営者の方から、よく聞く言葉です。

気持ちは分かります。

面と向かって読み上げるのは、正直、照れくさいものです。


でも、こう考えてみてください。

伝わっていない感謝は、相手にとっては存在しない感謝です。

だから、書くことをおすすめします。

話すと照れや脱線が混ざりますが、書けば想いは整理されます。

読み上げれば必ず届きます。

そして紙は、相手の手元に残り続けます。

まずは一人だけでかまいません。

いちばん感謝を伝えられていない人に、「感謝・承認・期待」の3行を書いてみてください。

その3行が、職場の空気を変える最初の一枚になるはずです^^


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道下真介
専門家

道下真介(ほめ育コンサルタント)

株式会社Torus

ほめる習慣を組織に根付かせる「ほめ育」コンサルティングを展開。社内のほめる基準となるほめ育コンピテンシーを明確にし、ほめる基準とほめて育てる文化を組織に根付かせ、人材定着や業績向上のサポートをします。

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