「何度言っても伝わらない」の正体|同じ部屋で、全員が違う絵を描いた話

道下真介

道下真介

テーマ:”ほめ育”の基礎知識・理論



こんにちは。

ほめ育コンサルタントの道下真介です。

先日、ある建築関係の会社の研修で、ちょっとした実験をしました。


社長に1枚の絵を見てもらい、どんな絵が描いているのかを

言葉だけで皆さんに説明してもらう。

聞いている皆さんには、その言葉を頼りに白紙へ同じ絵を描く。


それだけのワークです^^


同じ部屋で、同じ説明を聞いて、全員が同じゴールを目指して本気で描きました。

でも、出来上がったのは、全員違う絵だったんです。




太陽が、消えた


お手本は、ペン1本で描けるような簡単な絵です。

山があって、太陽があって、ニコちゃんマークと矢印がある。

たったの、これだけ。


社長は説明するのに、一生懸命でした。


「左下に山を描いてください」

「山の左の斜面に、太陽が半分だけ見えています」


視覚情報を提供するのは禁止というルールなので、身振りを封じられながら、言葉を尽くして全体へ伝えていきます。


ところが、描き上がった絵を見せ合うと…


太陽がまるごと消えている人。

ニコちゃんマークが、指示の何分の一という小ささの人。

矢印にいたっては、向きも場所も、ほぼ全員バラバラでした。


説明した社長も、聞いていた皆さんも、誰ひとり手は抜いていません。

それでも、こうなるのです。


「伝わったこと」が「伝えたこと」


ワークのあと、社長がぽつりと言いました。


「結局、僕は普段、電話で指示しているんですよね。

だから、伝わったかどうかは、最後は『頼むぞ』と信じてるんですよ。」


ここに、職場のコミュニケーションの急所があると、私は考えています。


指示したのに、違うものが上がってくる。

「言ったはずなのに」

「何度言っても」

そのとき私たちは、つい相手の理解力を疑ってしまいます。


でも、思い出してください。

同じ部屋で、同じ目的で、全員同じゴールを目指している本気の状態ですら、絵はバラバラになりました。

これでは、電話、メール、メモ書き、LINE上なら、ズレはもっと大きくなって当然です。

だから、私が研修でお伝えしている原則は、こうです。

伝わったことが、伝えたこと。

相手の中に違う絵が描かれたなら、それが「自分の伝えたこと」です。

相手の受け取りを責めても、絵は正しくなりません。


伝わる人が、やっていたこと


実はこのワークで、受け取りが上手だった方には共通点があります。

例えば、

紙を4つに折って「右上のブロックの話ですね」と場所を区切りながら聞く。

伝えるのが上手な人も同じで、時計の文字盤にたとえて「6時の位置に」と言う。


コツは3つです。


全体から部分へ。

まず「紙は横向き、4つに分けます」と地図を渡してから、細部を伝える。

数字を使う。

「大きめの丸」ではなく「3センチの丸」。

「しっかり勉強しておいて」ではなく「この本を、1日1時間読む」。

例え話を使う。

お互いが知っているものにたとえた瞬間、イメージは一気にそろいます。


どれも、明日の朝の指示からそのまま使える内容だと思いませんか?


そしてもうひとつ、興味深い結果がありました。

社長との付き合いが長い方ほど、絵が正解に近かったのです。

なぜなら、「この人はここの表現が苦手だから、たぶんこうだろう」という仮説が立つからです。

共通言語は、日頃の何気ない会話の積み重ねで貯まっていきます。


疑う前に、思い出す


「言ったのに伝わらない」が続いたとき、相手の能力を疑う前に、この実験を思い出してください。

ズレの原因は多くの場合、相手の頭ではなく、言葉の渡し方にあります。

そしてこれは、指示だけの話ではありません。

感謝も、期待も、ほめ言葉も同じ。

伝えたつもりで終わらせず、相手の中にどんな絵が描かれたかまで見届ける。

その一手間が、「言ったはずなのに」を「伝わったね」に変えてくれるはずです^^



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道下真介
専門家

道下真介(ほめ育コンサルタント)

株式会社Torus

ほめる習慣を組織に根付かせる「ほめ育」コンサルティングを展開。社内のほめる基準となるほめ育コンピテンシーを明確にし、ほめる基準とほめて育てる文化を組織に根付かせ、人材定着や業績向上のサポートをします。

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