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神野沙樹

「活き生き組織」をともに作る社会保険労務士

神野沙樹(かみのさき) / 社会保険労務士

株式会社Niesul(ニースル社労士事務所併設)

コラム

3分で分かる!「リテンション」の意味とたった1つの効果的な方法

2019年6月5日 公開 / 2021年2月26日更新

テーマ:いきいき職場づくり(組織活性)

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 退職 手続き退職金制度 導入

リテンション

この間ニュースを読んでいると出てきた言葉が「リテンション」という言葉。
「リ」というのは、リプレイやリカバリーなど、「再び」といういう意味かありそうです。

「テンション」は「テンション上がる」のテンションのこと?
いや、「エクステンション」といったら付け毛だから伸ばすということか?

「リテンション」という言葉が人事の世界で使われているけれど、
どんな意味で使われているのか、ご紹介します。

リテンションの意味は「人材の流出をどう防ぐか」




人事系のニュースを見ていると、時として出ている言葉が「リテンション」という言葉。

このリテンションを一言でいうと
「人材の流出を防ぐ方法、社員の定着率を上げるための方策」という意味です。

つまり、採用コストをかけて採用し、手塩にかけて育てた社員が退職してしまうと、
また1から育てることは大変です。

そうならないために、どうすれば退職せず働いてくれるのかと考え、取る人事施策・人事戦略を
「リテンション施策」「リテンションマネジメント」という言葉で表現しているというわけです。

実は、この「リテンション」というキーワードは、元々はマーケティング用語で、
「既存顧客との関係を維持していくためのマーケティング活動のこと」を指します。

マーケティングの世界では、一度顧客が離れてしまうと、
新たに顧客を開拓するには5倍のコストがかかるという「1:5の法則」という考えがあり、
いかに既存顧客を維持し、離反させないかが重要である、と言われています。

そのため、既存顧客と安定的な関係性を築くことが大切であり、
必要な施策を取って行こうという考え方です。

自社の社員を「既存顧客」と捉えることは少し抵抗がありますが、
とはいえ、せっかく採用した「仲間」が活躍する場面を持たないまま
退職してしまうことは避けたいもの。

それでは、どのような「リテンション施策」があるのでしょうか。

社員のリテンション施策を考える前に確認しておきたい2つの視点




具体的なリテンション施策を考える前に、
前提として御社として求めているアプローチ方法な何なのか、確認をしておきましょう。

優秀な人材が流出しないために取る施策として、以下の2つの視点が考えられます。

1つは「どうすれば流出を引き留めるか」という視点。
もう1つは「どうすれば会社でその人を活かすことができるか」という視点です。

風邪防止をたとえに考えてみると、
1つは「風邪の引きはじめにどう対処するか」という視点、
もう1つは「風邪をひかないように、健康でいるためにはどうするか」という視点です。

「風邪をひかない」という点では同じですが、
いつ・何のため・何をするかという具体的な施策が変わってくることは
お分かり頂けると思います。

もし、みなさんの会社で
「リテンション施策を考えていこう」という話になっていたとするならば、
果たしてどちらのアプローチなのか、まず確認することが大切です。

緊急性から考えると、前者、
つまり「どうすれば流出を引き留められるか」という話になるでしょう。

しかし、今すぐ退職する社員や退職予備軍の社員数と、
実際の退職まで決めていない社員数・会社を続けていきたい社員数を比較すると、
普通は「会社を続けていきたい社員」の方が多いはず。
(もちろん、直近1年間の離職率が30%を超えるような職場だと別かもしれませんが…)

そのため今回は、後者、つまり「どうすれば会社でその人を活かすことができるか」、
ひいては「どうすれば社員の定着率を上げるか」という視点から、
リテンション施策を見ていきましょう。

リテンションの効果的な方法は、給与でも休日でもない!

たった1つのこと




「リテンション」「施策」と調べると、たくさんの施策例が出てきます。

多くは、「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」と分類され、
金銭的報酬は給与、賞与、インセンティブ、退職金といった施策が挙げられます。

一方、非金銭的報酬とは、ブラザーシスター制度の導入、
社内部活動の開始、こまめな定期面談の実施など「やる気を高める施策」が挙げられます。

もちろん、どれも間違いではありません。

しかし「仮に御社で導入した場合、有効かどうか」という点については、
「やってみないとわからない」という答えになるのではないでしょうか。

なぜならば、どうすれば定着率が上がるのか、なぜ離職してしまうのかは、
会社特有の理由があるからです。

そこで、リテンション施策としてはずせないたった1つのこととは、
「自分ごと」にするということです。

自分の会社、自分の働き方、自分の役割…
一人ひとりが「自分ごと」にしていったうえで、リテンションの細々とした施策が活きてきます。


言い換えれば、社員が自ら必要だと感じたこと、
やってみたいと感じたことを導入しなければ、何の意味もないというわけです。

「そんなこと社員に意見求めたら、ウチの社員は給与を上げて、って言いますよ」
「まず人事が提案すべきでしょ、って言われます」

そんなお声が聞こえてくることもあります。

確かに、これまでトップダウンだった会社様や、
「決められたことしかやりません」という社風が根付いている会社様であれば、
社員の方からそのようなお声が返ってくるかもしれませんね。

しかし、だからといって無理やり「社内部活動を導入します」と言ったところで、
社員の定着率は上がるでしょうか。

給与を一律1万円上げると、その時は喜んで頂けるかもしれませんが、
本当に社員の定着率につながるでしょうか。

一時的な施策を取ったところで、長い目で見れば「不要な支出・コスト」が増えるだけです。

だからこそ、「自分ごと」にするためのステップを踏んでいくことが必要です。


【一人ひとりが「自分ごと」になるためのステップ】

1.目的を提示し、
2.トップの熱い想いを提示し、
3.相手を心から信じて
4.じっくりと時間をかけて話合う

以上ができれば、必ず、組織は変わってきます。


良かれと思って、
業績不振の中賞与を出したのに「思っていたより少なかった!」と文句が出てくる。

良かれと思って、
ノー残業デーを入れたのに「余計なことをしないでくれ!」と文句が出てくる。

よくある話です。

これらはすべて「自分ごとになっていない」から。

自分の会社、自分の働き方、自分の役割…そう思うことができた瞬間に、
定着率は見違えるほど改善します。

だからこそ、一人ひとりが「自分ごと」にする機会を作るために、
ぜひ社員一人ひとり、あるいはプロジェクトを立ち上げて話を進めて行ってくださいね。


ALLマン経営で組織が「ツナガル」!
自分ごとに変わるプロジェクト型の就業規則づくりはこちら

【参考】
社内会議・プロジェクト開始時に共有すべき3つのこと(1)目的

キックオフ、開始時に押さえておきたい3つのポイント


■まとめ

今回は「リテンション」というキーワードをひも解いてきました。

1.リテンションを一言でいうと
「人材の流出を防ぐ方法、社員の定着率を上げるための方策」という意味です。

2.自社で「リテンション」(定着率アップ)の話が出た場合は、

「どうすれば流出を引き留めるか」という視点なのか、
「どうすれば会社でその人を活かすことができるか」という視点なのか、

確認をすること。

3.リテンション施策として外せないたった1つのこととは
「働くことを自分ごとにする機会を作る」ということ。
「自分ごと」なくして細かな施策を取っても不要な支出・コストがかさむだけです。

ぜひ、定着率の高い、生き活きと活躍できる職場を作って行ってくださいね。

ALLマン経営で組織が「ツナガル」!
自分ごとに変わるプロジェクト型の就業規則づくりはこちら

この記事を書いたプロ

神野沙樹

「活き生き組織」をともに作る社会保険労務士

神野沙樹(株式会社Niesul(ニースル社労士事務所併設))

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