社内会議・プロジェクト開始時に共有すべき3つのこと(3)方法
研修では使えるけれど
会議・ミーティングでは使いにくいアイスブレイク
最初の緊張感をほぐす方法の一つで、「アイスブレイク」と言われるものがあります。
アイスブレイクは、直訳すると、氷を割る(壊す)ということ。
つまり、張りつめた緊張を壊すワークという意味で、暖機運転と言われることもあります。
弊社も研修を実施させていただく時は、たくさん使っていますし、
NPO法人ファシリテーション協会さんが提供されている
アイスブレイク集などもよく参考にさせていただいています。
しかし、アイスブレイクを紹介した際に、企業の方からこう言われることがあります。
「アイスブレイクは、社内の会議・ミーティングでは使いにくいんですよ」と。
どういうことかというと、見知った間柄の社内会議で、
いきなり社内の人間が研修講師のように
「さぁ、後出しジャンケン(※アイスブレイクのひとつ)をしましょう!」
と言い出すのは、余計に場を白けさせるというのです。
それでは、社内会議やミーティング、あるいは朝礼では、
挨拶の後すぐに議題に入った方が良いのでしょうか?
会議という場にチェックインしてみよう
ひとつおすすめなのは、挨拶の後「チェックイン」をすること。
チェックインとは、ホテルにチェックインするように、
「その場に入る」ことを意識する機会を持つということです。
会議の出席者は、たくさんの仕事を抱えていることでしょう。
もしかすると、先ほど上司に叱られた人もいるかもしれません。
そんな色々な事情、心境があるだろうけれど、
「さぁ、今から会議に集中しようと一人ひとりが思うこと」、それを「チェックイン」と言います。
チェックインには決まった型はありませんが、例えばこんな感じで始めます。
①所属(部署)
②名前
③いまの気持ち
③の部分は色々アレンジできます。
議論に直結するような、「働いていてここを改善すればよいと思うところ」
「前回の話し合いから今日までに感じたこと」といったテーマも良く使います。
あるいは、まったく議論に関係は無いのですが、
「今日の朝ごはん」「昨日一番嬉しかったこと」「自分を色に例えると」
などといったテーマ設定をすることもあります。
全く関係ないことであっても、とても意味があります。
一つは、自分以外のメンバーに興味を持つきっかけとなるということ。
いつも一緒に過ごしていても、隣に座っている同僚が、
朝ごはんにパンを食べるのか、ご飯を食べるのか知りませんよね。
「知って何になるの?」と感じるかもしれませんが、
何かの目的のために集まった会議・ミーティングをともにする者同士、
自分との共通点や、相手の意外な一面を見ることで、
結束力が少しずつ高まっていくものです。
朝ごはんにパンかご飯かどちらを食べる人でも構いません。
しかし、そこから話が広がったり、相手に興味を持つきっかけになるというわけです。
そんな一つ一つの積み重ねが、必ず最終的に良い議論につながっていきます。
そしてもう一つの目的が、
「場が始まったなるべく早い段階で、参加者に息を吐き出してもらう(声を出してもらう)」
ということです。こちらについては、次で詳しく触れていきましょう。
自分が話そうとする前に
「相手(参加者)に話してもらおう」とする姿勢
会議やミーティングの司会役・進行役にあたった時、
みなさんはどのようなことを考えてでその会議に臨みますか?
会議の進め方、話す順番、議論の進行についての予測
・・・ある程度は頭の中で想定することでしょう。
多少なりとも、会議のことを考えて会議の時間を迎えられることと思います。
また、うまく進めて短時間で終わらせたい…
そんな風に考える方もいらっしゃるかもしれません。
このように、自分のアタマで会議について考えていることは
もちろん良いことなのですが、1つ気を付けなければならないことがあります。
それは、「相手はそのレベルではない」ということ。
つまり、自分は会議や進行についてあれやこれや考えているのですが、
参加する他のメンバーは、
自分が考えているほど考えて会議に臨んでいるわけではないということです。
このように、スタート地点が違うということをまずは押さえなければなりません。
そのうえでどのようにすればよいか、というと、
先ほどの「チェックイン」が効果をもたらします。
チェックインが有効な理由の2つめ、それは自分が一方的に話すのではなく、
なるべく早い段階で相手に話してもらうことによって、
「相手がこの場に対して向き合うきっかけになり、
それを聞く自分自身のこころが落ち着く」ということです。
つまり、チェックインは足並みをそろえる一つの儀式だと捉えてみるとよいと思います。
自分が会議のことばかり考えていると、つい自分が饒舌に話してしまいがち。
しかし、身が入らない状態で聞いている相手は、残念ながらその言葉の2割も残っていません。
少し、想像してみてください。
例えばみなさんご自身が特に興味の持てない分野について
社内で研修が開催されたとしましょう。
外部講師がきて、饒舌に話し続けています。「よし!聞こう!」と思いますか?
明石家さんまさんほどのトークがあれば惹きつけられるかもしれませんが、
なかなか難しいものです。
それよりも、開始して簡単な挨拶のあと
「それでは、グループ内で名前と今日食べた朝ごはんを順に発表してください」と
「参加者が息を吐き出すタイミング」を作ったほうが、
参加者は「この場」になじんでいきます。
はじめは「なんで話さないといけないんだよ」という参加者も、
自分が話しているうちに、つい「場」になじんでいるはずです。
チェックインをする目的の2つめはココにあります。
ぜひ、開始後なるべく早いタイミングで、
参加者の方に息を吐き出す(言葉を発してもらう)タイミングを作ってみましょう。
そして、毎回チェックインを行います。
何回か繰り返していると「チェックインするのが当たり前」
「始まりはチェックインから」とみなが認識して会議を始められるようになります。
それは、参加者の「会議に対する切り替え」が早くなった証拠。
ここから議論を進めると、スムーズに意見が出るようになりますよ。
■まとめ
今回は、社内の会議やミーティングでの開始の仕方として「チェックイン」をお伝えしました。
アイスブレイクは「ブレイクする」突破力があるのに対し、
チェックインはまさに「じんわり」と効き目があるものです。
アイスブレイクとして存在する多種多様なワークも、
場を和ます、あるいは色々な気付きを体感で理解するにはもちろん有効です。
どのような会議か、参加者、雰囲気、使える時間に応じて、
「がらりと場を変えられるアイスブレイク」か、
「じんわりとよい雰囲気づくりをしていくチェックイン」か、選んでみてくださいね。
ポイントは、進行役がどう感じるかではなく、参加者がどう感じるかです。
進行役はアイスブレイクに抵抗がある!と思っても、
意外と参加者は楽しんで行う場合もあります(反対の場合もあります)。
ぜひ、参加者目線に立って考え、実際に行ってみてください。