社内で実践!働き方改革の進め方(3)知る~多様な働き方って、例えば何?(社外編)
36協定(時間外労働・休日労働に関する労使協定)
設定する「時間数」について
2018年6月、働き方改革法案が成立しました。
2019年4月(中小企業は2020年4月)から改正される内容を見ていきましょう。
(参考)ウチの会社は中小企業?それとも大企業?
まず、36協定で定める時間設定に上限が設けられ、上限違反には罰則があります
(1)原則
月45時間、年360時間
(一年単位の変形労働時間制を採っている場合は、月42時間、年320時間)
(2)臨時的な特別な事情がある場合
(1年のうち、6か月以内(12回の労働時間計算のうち、6回まで)認められる例外)
・月100時間未満(休日労働含む)
・複数の月を平均して80時間以内(休日労働含む)
・年720時間以内
【ココが変わります】
1.いわゆる「特別条項」(臨時的な特別な事情がある場合)に定める時間数について、
これまではひと月100時間でも、年732時間でも「法違反」ではありませんでしたが、
今後は法律違反となります。
ひと月は99時間未満、一年720時間までの時間数を設定する必要があります。
2.繁忙期の働き方について見なおす必要があります。
今回の改正により、「複数の月を平均して80時間」という条件が追加されました。
もう少し詳しく言うと、2・3・4・5・6か月をそれぞれ平均して、
それぞれ80時間以内に収めることとされています。
例えば、1~12月の労働時間を振り返った時に、
11・12月が忙しいから、各月85時間の時間外労働(休日労働含む)だったとしましょう。
すると、この2か月を平均すると「80時間以内」に収まっていないのでNGということになります。
忙しくて時間外労働の時間が増えた月の翌月は、
労働時間が増えないような工夫をするなど、「恒常的に忙しい状況」からの打開が求められています。
有給休暇の最低取得日数について
10日以上の有給休暇が与えられる従業員の方に対し、
最低でも「年5日」取得させなければなりません。
なお、計画的付与などで取得する日数については、「最低年5日の取得」に含めます。
※事前にどの日を取得するかを決めていなくても、
結果的に5日間ご本人による指定で取得できているようであれば問題ないとされています。
【ココが変わります】
有給休暇が取得できていない状況にある場合は、
最低「年5日」は取得できるように促す、あるいは取得できる環境づくりを進めて行く必要があります。
高度プロフェッショナル制度について
高収入(年収1075万円以上)の高度の専門職(例:金融アナリスト、コンサルタント、
研究開発など、詳細は今後労働政策審議会を踏まえ決定されます)は、
労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金に関する法律が適用されないこととされました。
・個別の従業員の同意が必要(かつ、一度同意した後に撤回が出来ること)
・労使委員会を設けていること
・年間104日の休日を確保する
その他条件もあります。
【ココが変わります】
該当する職種・年収の方がいて制度を導入した場合は、
「労働時間に対する給料」ではなく、「成果物(仕事の結果)に対する給料」が支払われることになります。
導入する場合は、社内規程や運用ルール、対象者などを明確にしていく必要があります
フレックスタイム制における「清算」のスパンの変更について
フレックスタイム制は、毎日の出勤・退勤時刻を働く方の自由に任せ「フレキシブルに働く」という制度です。
清算期間とは、「1か月間働いて、総労働時間(以下、「労働時間の枠」といいます)に
足りない時間数は翌月に回してもよい、超えた分は時間外労働手当として清算する」というもの。
この「清算期間」について、これまで1か月が上限だったものを、3か月に延長されることとなりました。
つまり、「1か月で労働時間の枠を超えているかどうか」を判断していましたが、
法改正後、自社の清算期間を3か月とした場合は、
「3か月で労働時間の枠を超えているかどうか」を判断すればよいということになります。
よりフレキシブルな働き方が可能になるというわけです。
※従来通り「清算期間を1か月にしておく」ということも可能です
【ココが変わります】
フレックスタイム制を導入していて(あるいは導入予定で)、
清算期間を「3か月にしたい」「1か月を超える期間にしたい」と言う場合は、次の注意点があります。
・週50時間を超える労働時間については、時間外手当を支払う必要があるため、
時間外労働の集計の仕組みを検討する
・労使協定を届出する
(清算期間が1か月以内の場合は労使協定の作成・締結は必要ですが、届出は不要)
「勤務間インターバル」について
※この制度は、中小企業であっても2019年4月から施行されます
御社で働かれる従業員さんが健康で働くために必要な
「終業から始業までの時間の設定」をするよう努めることととされました。
これを勤務終了時刻から次の勤務までの「間」(インターバル)を空ける制度として、
「勤務間インターバル」と呼んでいます。
【ココが変わります】
努力義務(~努めることとする)であるため、絶対ではありませんが、
定める場合は就業規則に記載することになります。
産業医の方との情報連携について
※この制度は、一つの事業場で働く人数(パート・アルバイトを含む)が
50人以上である場合に2019年4月から施行されます
50人以上の事業場においては、「産業医」の方を選任し、
月に1回(あるいは2か月に1回)の巡視や、面接指導、
健康診断の結果報告におけるサイン等をお願いしているかと思います。
(50人未満の場合は、医師のほか、保健師の方などにより健康管理を行うよう努める)
今回、従業員の健康管理を適切に行うための情報として、
会社から産業医の方に対して、労働時間などの情報を提供することされました。
その他、産業医の方に対しても「誠実に職務を行うこと」という条文が追加されました。
【ココが変わります】
これまでは、「長時間労働」の方や、
産業医の方から求められた場合にのみ労働時間の情報提供が必要とされていましたが、
改正後は会社からの情報提供が必要となります。
■まとめ
今回は、2018年6月29日に成立した「働き方改革」に関連する法律改正のうち、
2019年4月(中小企業は2020年4月)に改正される内容をお伝えしました。
内容は多岐にわたっていますので、一つ一つ確認して進めて行くことが必要です。
特に労働時間の制限に関しては、現在の御社の時間外労働の状況に応じて、
「何から手を付けていけていけば良いのか」「改善することで得られる効果は何か」を判断し、
どう進めることが御社にとって良いのか検討する必要があります。
「法律が変わったから変えねばならない」という視点だけではなく、
「これを機会に自分たちの働き方を見直し、会社にとっても働く人にとってもよい状態にしていこう」
という契機にしていきたいものです。
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