給与計算アウトソーシング
賃金不払残業(いわゆるサービス残業)について、全国の労働基準監督署が労働基準法に違反していると是正指導した事案のうち、1企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた事案の平成23年度における状況が取りまとめられ、厚生労働省から公表されました。
今年は100万円以上の是正企業数は昨年より減ったものの、是正支払総額は22億円以上増えた、145億9,957万円になりました。
【割増賃金の是正支払の状況】
●是正企業数・・・・・1,312企業(前年度比 74企業の減)
●支払われた割増賃金合計額・・・・・145億9,957万円(前年度比 22億7,599万円の増)
●対象労働者数・・・・・11万7,002人 (前年度比 1,771人の増)
【支払われた割増賃金の平均額】
●1企業当たり1,113万円(前年度比 224万円の増)
●労働者1人当たり 12万円(前年度比1万円の増)
【業種別等の状況】
●企業数及び対象労働者数では商業が最も多いです。
●支払われた割増賃金額では建設業が最も多いです。
●1企業での最高支払額は建設業です。
1位・・・「26億8,844万円」(建設業)
2位・・・「9億8,207万円」(金融業)
3位・・・「7億5,687万円」(小売業)
◇◇◇厚生労働省が公表している賃金不払残業の是正事例◇◇◇
<事例1(製造業、約200 人、関東)>
会社は、始業・終業時刻をタイムカードにより管理するとともに、時間外労働の時間数の確認については自己申告により行っているとしていたが、工場の生産状況に照らし、日々の時間外労働が僅少であった。このため、監督署は、夜間の張り込みにより、時間外労働を行っている労働者がいることを調査し、その結果を示したところ、会社は時間外労働に対する割増賃金の不払があることを認めました。
【監督署の指導内容】
監督署は、確認した賃金不払残業について是正勧告するとともに、①②の事項を指導しました。
①労働者からのヒアリングや関係資料等により過去の時間外労働の実態調査を実施すること
②適正な時間管理を行うための制度を整備すること
☆ポイント☆
この例で分かるように監督署は細かく調査をしています。企業としては、労働基準法違反がないよう、日頃から、労働時間を適正に把握して、時間外労働を行う必要がある場合には、36協定の締結・届出、割増賃金の支払いといった手続きを適正に行う必要があります。さらに、あらゆるトラブルに対応できるよう就業規則を整備しておくことが重要です。また、変形労働制を取り入れたり、残業は「事前届出制」にするなど残業を減らす工夫も必要でしょう。
※36協定とは・・・原則的には、社員の方の労働時間は1日8時間、1週間に40時間までとなります。これを法定労働時間といいます。(従業員10人未満の一定の事業所では、法定労働時間は週44時間までとなります)
この法定労働時間を超え、さらに労働してもらう時(主には残業してもらう時)・法定休日に労働してもらう時は、従業員の過半数代表者又は労働組合の同意を得、その内容を「時間外労働・休日労働に関する協定」(労働基準法第三十六条による協定なので36協定といいます。)をし、「時間外労働・休日労働に関する協定届」を労働基準監督署に提出しておかなければなりません。
36協定により、延長できる労働時間には限度がありますので注意が必要です。36協定は協定期間開始前までに労働基準監督署に届け出が必要です。
※変形労働制とは・・・1ヶ月や1年の間を通して業務に繁閑の差がある場合に労働時間の配分等を行う(ある日は10時間働かせるが、ある日は6時間しか働かせないなどです)ことによって、法定労働時間を超えて労働させることが認められている制度です。
変形労働時間制には1カ月単位、1年単位、1週間単位の制度があります。
このほか、フレックスタイム制も変形労働時間制になります。