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コラム

年金と収入 

2019年8月31日

テーマ:年金

コラムカテゴリ:法律関連

企業には高齢者雇用確保措置として「65歳までの定年引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置を実施する義務があります。これにより、老齢基礎年金・老齢厚生年金を受給しながら、働いている方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
年金(国民年金法および厚生年金法)を受給しながら、収入を得ている場合や失業手当(雇用保険法)、労災補償(労働者災害補償保険法)を受ける場合、いずれかの支給停止や調整が行われることがあります。

<在職老齢年金>
 働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、年金額の一部または全部が支給停止されることがあります。対象となるのは、社会保険に加入し、一定以上の収入がある方です。
基本月額(加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当(標準報酬月額+標準賞与額の12分の1の額)に応じて支給停止の金額が決まります。

●60歳以上65歳未満の方で厚生年金を繰り上げ受給している場合
①基本月額+総報酬額額相当額=28万円以下の場合
→調整は行われず全額年金が受け取れます。

②基本月額が28万円以下かつ総報酬月額相当額が47万円以下の場合
→年間の支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)×1/2×12ヵ月

③基本月額が28万円を超えかつ総報酬月額相当額が47万円以下の場合
→年間の支給停止額=総報酬月額相当額×1/2×12ヵ月

④基本月額が28万円以下かつ総報酬月額相当額が47万円を超える場合
→年間の支給停止額={(47万円+基本月額-28万円)×1/2+(総報酬月額相当額-47万円)}×12ヵ月

⑤基本月額が28万円を超えかつ総報酬月額相当額が47万円を超える場合
→年間の支給停止額={47万円×1/2+(総報酬月額相当額-47万円)}×12ヵ月


●65歳以上
①基本月額+報酬月額相当額=47万円以下の場合
→調整は行われず全額年金が受け取れます。

②基本月額+報酬月額相当額=47万円を超えるの場合
→年間の支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)×1/2×12ヵ月

なお、加給年金額(一定の配偶者や子がある場合の加算)については、全額支給停止されている場合を除き、支給停止とはなりません(老齢厚生年金が一部でも支給されているのであれば加給年金額は全額支給)。また、老齢厚生年金を受給しながら働いている場合でも、社会保険の被保険者でない場合は、調整の対象となりません。

<高齢者雇用継続給付との併用>
 高齢者雇用継続給付とは、60歳以上65歳未満の雇用保険加入者に対して、賃金額が60歳到達時の75%未満となった場合に雇用保険から最大賃金額の15%に相当する額が支給されるものです。社会保険の被保険者で高齢者雇用継続給付を受けとる場合、在職老齢年金に加え老齢厚生年金の一部が支給停止されます。
 支給停止される年金額は、最大で賃金(標準報酬月額)の6%にあたる金額です。
高齢雇用継続給付による年金の支給停止額(調整額)=標準報酬月額×支給停止率

*高齢者雇用継続給付が支給されない者には調整はありません。

<失業給付(基本手当)>
60歳以上~65歳未満の方で雇用保険の失業給付を受給する場合は、一定期間(調整期間)老齢厚生年金が全額支給停止されます(加給年金が加算されている場合は、加給年金も支給停止)。
 支給停止期間は、求職の申込みを行った日の属する月の翌月~受給期間が経過した日(受給期間満了日の翌日)の属する月又は、所定給付日数が満了した日(最後の失業認定日)の属する月までです。なお、待期期間や離職理由による給付制限期間も支給停止されます。

●事後精算
 調整期間中に、失業給付を1日でも受けた月は年金が全額支給停止されるため、失業給付を受けた日数が同じでも、月をまたいで失業給付を受けたかどうかで年金の支給停止月数が異なる場合があります。そこで、調整期間後遡って年金が支払われます(事後精算)
支給停止解除月数(端数切上げ)=年金停止月数-失業給付の支給対象となった日数/30日
【例】
年金停止月数:7か月 所定給付日数:150日の場合
支給停止解除月数=7か月-150日/30日=7か月-5か月=2ヵ月
よって、2か月分の老齢厚生年金が遡って支払われます。

 基本手当を受給する場合は、老齢厚生年金が全額支給停止となるので、どちらを選択すべきかよく考えるようにしましょう。

<労働災害との調整>
 労働者が業務の事由または、通勤途中で負傷・疾病・障がい等となった場合、労働災害保険から「休業(補償)給付」や「障がい(補償)給付」「傷病(補償)年金」が支給されます。
しかし、労働災害の年金給付と同一の事由による障がいや死亡について、厚生年金及び国民年金の年金給付が行われる場合、原則として、厚生年金及び国民年金の年金給付が全額支給され、労災保険給付が調整(減額)されます(特別支給金は調整の対象外です)。
例えば、サラリーマンが業務上の事故で死亡した場合は、遺族に対して、遺族基礎年金、遺族厚生年金が全額支給され、遺族補償年金は、調整され支給となります。
*休業(補償)給付についても、障がい基礎(厚生)年金が支給される場合は調整の対象となります。

●例外
同一事由により国民年金の「20歳前傷病による障がい基礎年金」及び厚生年金の「障がい手当金」については、障がい(補償)給付を受けられ場合、支給されません(労災の障がい(補償)給付が全額支給される)。

<傷病手当金との調整>
業務外の傷病により、労務不能となり会社を休む場合、療養中の所得補償として「傷病手当金」があります。この時同一の傷病につき、障がい厚生年金の支給を受けることができるときは、原則傷病手当金は支給されません。また、障がい手当金の支給を受けれる場合は、傷病手当金の額の合計額が障がい手当の額に達するまでの間、傷病手当金は支給されません。

<労働基準法の補償>
労働基準法に規定の障がい補償及び遺族補償が行わる場合は、6年間、国民障がい(遺族)年金及び厚生障がい(遺族)年金の支給が停止されます。

昨今では、定年を70歳にといった話が出てきています。もし、70歳まで働いた場合、手元に入ってくる金額がどうなるのか把握しておくのも良いでしょう。

この記事を書いたプロ

鈴木圭史

労務相談の専門家

鈴木圭史(ドラフト労務管理事務所)

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