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「けがをした時に・・・」 その1

2014年6月24日 公開 / 2015年7月28日更新

テーマ:暮らしの中で

コラムカテゴリ:スクール・習い事

震災の年の9月、私は左足の甲を骨折しました。
震災の時でさえ、無傷で難を逃れたのに、思わぬところでのけがでした。

それは東京に出張した帰りで、駅に向かう途中でした。
私はキャリーケースのキャスターがうまく動かないのに気を取られ
電柱の根本が陥没している事に気づかず、足を取られて崩れるように転んでしまったのです。

その瞬間は、痛みよりも大通りで転んでしまった恥ずかしさの方が勝って
慌てて周りをキョロキョロ。
そして、誰も見ていなかったことと、ストッキングが破れていなかったことにホッとして
服を払いながら立ち上がった 次の瞬間でした。

足の先から、頭のてっぺんまで突き抜けるような、激痛が走ったのです。
せいぜいくじいたくらいで、悪くても捻挫だろうと思っていたのですが、
この痛みは、どうやらそんなものではないと直感しました。

何とか駅までたどり着き、その日の予定を変更して、仙台へまっすぐ帰ることにしました。
新幹線の中で座っている間は、そんなに強くは痛まなかったのですが、
仙台で降りる頃には、左足はくるぶしのあたりから下が、象の足のように腫れていました。

ホームに降りてからが大変でした。
エレベーターに乗ろうと思ったら、そんな時に限って点検中。
仕方なく、キャリーケースを杖がわりに、一段ずつ階段を降り始めました。
一歩一歩、足をつく度に、痛みが頭を突き抜けます。

その時、ひとりの男の人が、私を横目でチラリと見ながら、追い越して行きました。
するとその人は、3~4段降りるとハタッと止まり、私の方を振り向いて
「どうしたんだ? 足けがしてるのか?」 と、ぶっきらぼうにききました。
私が、トホホという感じで 「はい」 と答えると、
「なんだ じゃあ 荷物下まで持ってってやるよ」 といいます。

そう言われた瞬間、きっと私はちょっと不安気な顔をしたのだと思います。
するとその人は、「大丈夫だよ!! 持ってったりしないよ!!」 と言って、
私のキャリーケースを軽々と持つと、下まで降りていきました。

そして下に着くと、「ここに置いておくからね」 と言って、立ち去ろうとするのです。
きっとこの時、私はまた不安気な顔をしたのだと思います。
その人は 「わかったよ!! 下りてくるまでここにいるよ!!」 そう言いました。

そして私は一段ずつ手すりにつかまって、階段を降りました。
私がやっとたどり着くと、その人は
「もう大丈夫だね! じゃあ!」 と言って、足早に行ってしまいました。
私は、その人の背中に 「ありがとうございました!!」 と大きな声でお礼を言いました。
その人は、あっという間に人波の中に消えてしまいました。

涙が出そうになりました。
出先でのけがで、とにかく帰り着くことで頭がいっぱいで・・・
張りつめていた気持ちが、ふっと和らいだ瞬間でした。


お陰様で足はだいぶ良くなりました。
まだ時々、雨が降る前日など気圧の変化のせいか、シクンと痛むことがあります。
その度に私はあの男の人の、ぶっきらぼうだったけれど、温かい声を思い出します。

きっと急いでいらしただろうに、見かねて声を掛けて下さった方。
あの時は、あまりの痛さにお名前も聞かず、お礼の言葉もお粗末なものでした。
この場を借りて、お礼を申し上げます。

本当にありがとうございました。

私も、これから困っている人を見かけたら、積極的に声を掛けたいと思います。



ホームページにブログを掲載しています。 是非ご覧ください!!
http://www.stage-up.info/person/cat1/

この記事を書いたプロ

長野淳子

生きた言葉のプロ

長野淳子(ステージ・アップ)

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