中小企業における経営理念の現状①
これまで私は、このコラムで「経営理念」という言葉を用いてきました。
もちろん、この表現が間違っているわけではありません。実際、多くの企業がホームページや会社案内で「経営理念」という名称を使用しています。また、書籍やセミナーでも「経営理念」が一般的な表現として使われることが少なくありません。
しかし、中小企業の経営者の皆様をご支援する中で、私は「企業理念」という言葉の方が、会社が本当に伝えたいことを表現できるのではないかと考えるようになりました。
今回は、その理由についてお話しします。
「経営理念」と「企業理念」に明確な正解はない
まずお伝えしたいのは、「経営理念」と「企業理念」の使い分けに絶対的な正解はないということです。
企業によって定義は異なり、経営理念を最上位概念としている企業もあれば、企業理念という名称を採用している企業もあります。
つまり、どちらの名称を使うかが重要なのではなく、その理念が何を表しているのかが重要です。
そのうえで、私は次のように整理しています。
•企業理念:会社が社会に存在する目的や価値観、会社全体で共有する考え方
•経営理念:経営者がどのような考え方や信念で会社を経営するかという経営哲学
このように考えると、それぞれの役割がより明確になります。
従業員やお客様が知りたいのは「会社の考え方」
会社に入社した従業員は、何を知りたいでしょうか。
もちろん、「社長はどのような考え方で経営しているのか」も気になるでしょう。
しかし、それ以上に知りたいのは、
•この会社は何を大切にしているのか
•どのような価値を社会へ提供しようとしているのか
•判断に迷ったとき、何を基準に行動すればよいのか
ではないでしょうか。
また、お客様や取引先も、
「この会社は、どのような考え方を持っている会社なのだろう。」
という視点で会社を見ています。
つまり、多くの人が知りたいのは「経営者個人の考え方」ではなく、「会社としての考え方」です。
だからこそ、私は「企業理念」という表現の方が、多くの人にとって分かりやすいと感じています。
中小企業だからこそ「会社の理念」が必要
中小企業では、社長の存在感が非常に大きく、社長の考え方が会社そのものになっていることも少なくありません。そういった意味で、私は今まであえて「経営理念」という言葉を使ってきました。
しかし、会社は社長一人だけで成り立っているわけではありません。
従業員が働き、お客様が商品やサービスを購入し、取引先や地域社会との信頼関係の上に会社は成り立っています。
だからこそ、理念は「社長だけのもの」ではなく、「会社全体のもの」として共有されることが大切です。
従業員が企業理念を理解し、その考え方に共感できれば、日々の判断にも一貫性が生まれます。
お客様も、「この会社らしさ」を感じることができ、長期的な信頼につながっていきます。
私が考える理念の体系
私は、理念を次のような構造で考えています。
企業理念
会社は何のために存在するのか。
会社が社会に対して約束する使命や価値観です。
経営理念
経営者が、企業理念を実現するためにどのような信念や判断基準で経営を行うのかを示します。
ビジョン
企業理念を実現した先にある、将来目指す会社の姿です。
行動指針
企業理念や経営理念を実現するために、従業員一人ひとりが日々どのように行動するかを示します。
このように整理すると、それぞれの役割が明確になり、理念が単なる「額縁に飾る言葉」ではなく、実際の経営や現場の行動につながるものになります。
今後は「企業理念」という表現を用いていきます
これまで私は「経営理念」という言葉を使ってコラムを書いてきました。
しかし、私がお伝えしたかったのは、経営者だけの考え方ではなく、「会社全体が共有し、従業員やお客様にも伝わる価値観」の重要性です。
その思いをより正確に表現するため、今後は「企業理念」という言葉を中心に用いていきたいと考えています。
もちろん、名称そのものが重要なのではありません。
最も大切なのは、
「この会社は、このような考え方を大切にしている会社なんだ。」
と従業員やお客様、取引先から理解され、共感される理念になっていることです。
企業理念は、会社の存在意義であり、会社の人格そのものです。
環境が変化し、経営者が代わったとしても受け継がれる「会社の軸」があるからこそ、企業は長く社会から信頼され、持続的な成長を続けることができるのではないでしょうか。
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