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笠中晴司

交通事故のトラブルを解決に導く法律のプロ

笠中晴司(かさなかせいじ) / 弁護士

丹波橋法律事務所

コラム

あおり運転に異例(?)の殺人罪を適用して起訴!

2018年7月24日

テーマ:時事ネタ「交通事故」

コラムカテゴリ:法律関連

大阪府堺市で四輪がバイクにあおり運転を続け,最終的に,制限速度60キロの道路で,100キロ近く出して,追突した結果,バイクが転倒し,バイクの運転者が死亡したという事故(?)があったことはご存知でしょうか。

今回,その事故(?)において,「殺人罪」が適用されて,起訴されたということがニュースになっていました。

ただ,この事例の場合は,ニュースを見るだけの判断ですが,「あおり運転」という範疇を超えて,「追突」という実際の衝撃を与えています。

ですので,自動車を「故意に(「わざと」という意味です)」バイクに追突させたのであれば,明らかに,「殺意」が認定できる事例といえ,「事故」ではなく,「事件」というべきものと考えられます。

つまり,過去にも,自動車を使用して,「故意に」と言える状況で,相手を死亡させた事例で,殺人罪が適用されているものは結構ありますので,「異例」という表現は弁護士から見ると,少し「違和感」があります。

ですので,冷静に見れば(新聞等が多用する「時事ネタ」的なニュースの取り上げ方を排除してみれば),「あおり運転」というのは,そこまで決定的な要素ではないとも考えられます。

そして,今回の場合の「あおり運転」の位置づけは,長い時間にわたり「あおり運転」を続けたという事実が,「殺人罪」に必要な「殺意(「殺す」という明確な意思だけでなく,「衝突した結果,死んでも構わない」という「未必の故意」も含む。今回は,「未必の故意」があるとされた。)」を裏付ける証拠のひとつとなったとみるべきかと思います。

さらに,この「未必の故意」の認定には,近くを走行していた他の車のドライブレコーダーとともに,加害者がつけていたドライブレコーダーも証拠のひとつとなったようです。

つまり,加害者の車のドライブレコーダーには,加害者のあおり運転の様子とともに,加害者が衝突直後につぶやいたとされる「はい、終わり」という発言も記録されていて,加害者の「未必の故意」の認定のひとつの根拠とされたようです。

この例と同様,弁護士が交通事故を担当する際でも,自身のドライブレコーダーは,不利にも働くことがあります。

しかし,ドライブレコーダーほど,きちんと事故状況(あおり運転の状況等も含む)を再現できるものはありません。

ですので,これだけ安全装置が色々と進化している時代ですから,これからは,ドライブレコーダーも衝突防止センサー等と同様,「安全装置」のひとつとして,自動車等に標準装備がされることもあるかもしれません。

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