交通事故の基礎知識~過失割合(2)~
これまで何回か述べていますが,交通事故の被害者になった時,後遺障害を認定してもらえるかどうかで,その賠償額は大きく異なってきます。
後遺障害の認定をしてもらうのには,「症状固定」した後に「自賠責後遺障害診断書」という書類を作成して,自賠責保険に申請をするのですが,自賠責後遺障害診断書だけでは判断できないケースも多数あります(「症状固定」と「後遺障害診断書」の意味については,別のコラムがありますので,ご参照ください)。
特に,明確な症状がない場合,つまり,骨折等があって,関節の可動域が制限されている等の外から見て明らかな症状がない場合は,後遺障害診断書だけでは判断できないことが多いです。
そのような場合に,後遺障害の有無や等級を判断するために,次に何を見ていくかということになると,それは,医師が作成した他の書類ということになります。
これは,自賠責での認定段階もそうですし,また,自賠責では後遺障害の満足した認定が得られず,さらに裁判所で争う場合でもそうです。
医師が作成した書類を具体的にいうと,医師の意見書・回答書や医師が作成したカルテ等です。
特に,カルテは,その時々の症状が,客観的に書かれたものとして,重視されます。
カルテの中には,患者である被害者が申告する症状の内容も書かれています。
簡単にいうと,被害者の方が,その時々の状況について,医師にどのように説明していたかということです。
この時,被害者の方に,ご注意いただきたいのは,医師に対し,「大丈夫です」や「だいぶマシになりました」と簡単に言わないことです。
日本人の特性でしょうが,治療をしてもらっている医師に対するリップサービス的な物言いとして,実際はまだ痛みが続いている場合であっても,我慢できる範囲であれば,上記のような表現をしてしまうことがあるように思います。
でも,後遺障害の認定段階や裁判となって,あとからカルテを見た時に,「大丈夫です」と書かれていれば,「その時点で,患者さんご自身で,『もう大丈夫』と言っていますよね」となります。
また,カルテに「だいぶマシになりました」と書かれていれば,「その時点で,少なくとも,前回よりは回復していましたよね」となります。
これに対し,「それは医師に対するリップサービスです」と抗弁しても,なかなか裁判所などには伝わりません。
交通事故にあった瞬間から,「裁判のことも考えて動きましょう」とは言いづらいですが,そのようなこともあるということは理解しておいてください。
そして,こんな説明(これは一例であり,もっと色々と注意すべきことはあります)を受けるためにも,交通事故に遭われた場合で,特に後遺障害が予想されるような場合は,一刻も早く,弁護士に相談してください。