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コラム
注意義務違反~予見可能性と回避義務~(2)交通事故での具体例(予見可能性につき)
2016年10月28日 公開 / 2017年3月3日更新
昨日のコラムで,損害賠償義務の判断のうえで,「注意義務違反(≒過失)」があると判断されるのは,「予見可能性」があったうえで,「回避義務」があったと判断される場合に限定されると説明しました。
では,これを交通事故にあてはめると,どうなるのでしょうか。
まず「予見可能性」とは,「交通事故が発生するような動作(主に相手の動き)を予想することができたかどうか」ということになります。
そうすると,「車を運転する以上,あらゆる事態を想定して,危険を予知しないといけない」と考えることも可能です。
実際,実務上はそれに近い考え方がされていて,「交通事故を起こした以上,『責任がない』とされることは少ない」ということはそうなのですが,一方,いわゆる「もらい事故」等「責任がないとされる事故」があることもご存知かと思います。
具体例を検討していきましょう。
例えば,センターラインをオーバーしてくる対向車と衝突した場合,原則として,衝突された側(センターラインをオーバーしていない側)に責任がないと判断されるということをご存知の方もいらっしゃると思います。
この場合は,「対向車線から対向車がセンターラインオーバーして迫ってくる」という事態に対し,予見可能性がないので,注意義務違反がないとされるのです。
しかし,結果的に,センターラインをオーバーしてきた車と衝突した事故であったとしても,衝突された側にも責任が認められる事故も実はあります。
例えば,対向車線に障害物等があり,その障害物を回避するには,センターラインオーバーして走行するしかないというような状況の場合は,衝突された側にも,「センターラインオーバーしてくる車もあり得る」という予見可能性があったと判断される場合があります。
また,センターラインオーバーしている車が,衝突された側の車線を走行している距離が,数百メートルに及び,センターラインオーバーの状況を発見したのが,衝突する瞬間よりかなり前(例えば5秒くらい)であったというような事例を想定すると,衝突された側にも,少なくとも,その状況を発見した後は,危険を予見することができたと判断される可能性もあります。
こうなってくると,「予見可能性」というのは,各交通事故につき,詳細な発生経過を検討してみないとわからないということがわかると思います。
また,交通事故の場合は,「予見可能性」があったかどうかというよりは,「予見義務(予見できる可能性があったことを前提にして,予見することが必要とまで言えるのかどうか)」があったのかどうかが重視されるという見方もできると思います。
つまり,確かに,センターラインオーバーしてくるような「非常識」ともいえる運転者がいる可能性があるが,そこまで想定して運転する必要があるのかどうかということです。
これらを難しくいうと,「信頼の原則(相手はまさか,そのような常識外れの運転や動作はしないであろうと信頼できるような状況であった場合は,過失責任は問われない)」という言葉もあるのですが,難しいので,語感だけでイメージしておいてください。
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