注意義務違反~予見可能性と回避義務~(1)一般論として

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:交通事故理論

東日本大震災時の大川小学校での不幸な出来事に対し,第一審の判決が出ました。

裁判の中身については,新聞報道以上の情報はありませんので,コメントを差し控えます。
ただ,新聞に載っていた「注意義務違反」やそれを根拠づける「予見可能性」と「回避義務」については,交通事故等の事故における責任(過失)の有無の判断でも,今回の判決と同様の判断がされますので,交通事故等でも参考になります。
そこで,今回は,それら用語の解説をしたいと思います。

まず,「注意義務違反」とは,簡単に言えば,「過失(≒責任)」とほぼ同義語と考えていただければ結構です。

なお,「過失」という言葉は,「損害賠償義務を根拠づける賠償義務者の行為等のうち,故意(わざと)ではないもの」という感じでご理解ください。

次に,「注意義務違反」の有無を判断するのには,まず,「予見可能性」の有無をまず判断し,その後,「予見可能性」があった場合に初めて,次の段階として「回避義務」の有無が判断されます。

つまり,「注意義務違反」があると判断されるのは,「予見可能性」があったうえで,「回避義務」があったと判断される場合に限定されるということです。

では,次に「予見可能性」とは何かということになりますが,言葉からもわかるかもしれませんが,「事故等損害を発生させるような危険な事象の発生を,その事象が発生する前に予想することができたかどうか」ということです。

もっと細かくいうと,「注意義務違反」が認められるには,「予見可能性」があったうえに「予見義務(予見する義務)」があったことが必要です。

最後に「回避義務」とは,「予見した危険な事象に対し,その事象が発生する前に対処し,その事象の発生を回避する義務」です。

これも細かく言うと,「回避可能性(回避できる可能性)」があることを前提としたうえで「回避義務」の有無を判断することとなります。

ただ,言葉で説明すると簡単なようですが,これらを具体例で判断した場合は,「注意義務違反」の有無の判断は極めて微妙な判断となります。

そして,実際,東日本大震災関係の津波被害に関する裁判でも,大川小学校とは異なり,管理者側に「注意義務違反」がないと判断された事例もあるのです。

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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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