交通事故体験記9~発生から示談成立まで~(番外編「人身傷害補償特約」について)

笠中晴司

笠中晴司

テーマ:個人ネタ

 人身傷害補償特約について



  前回に書いた「人身傷害補償特約」については,保険を契約する際,説明があるので,名前くらいは聞かれたことがあると思います。

  また,その時の保険会社の説明は,たいがい「事故で自分に過失があっても,その過失分(相手からは賠償を受けられない)をカバーする保険です」という程度だと思います。
  
  よって,その内容を正確に理解している人は,一般の方ではほとんどないと思います。

  それどころか,「交通事故事件をよく扱っている」弁護士でさえも,「正確には」理解していないと思います(「交通事故事件をあまりしていない」弁護士は,より「理解が足りない」可能性もあります)。

  その理由は何か。

  それは,「人身傷害補償特約」というのは,「特約」ですので,会社によって(あるいは,下手をすると,会社は同じでも契約の内容によって),異なるからです。

  しかも,その違いが,給付額や支払対象の違いだけにとどまらず,「特約の位置づけについての基本的な考え方(制度設計)まで違う」のです。

  ですので,「交通事故事件をよく扱っている」弁護士でさえも,保険会社にこの特約につき,照会して初めて,「貴社の特約の内容は,そのようになっているのですか。」と驚くこともあります。

  ただ,言えることは,「人身傷害補償特約」は,その特約により,基準の決められた保険金額が支払われるもので,その基準は裁判で認められる基準よりは低いということです(つまり,保険会社のセールストークとは異なり,「自分の過失分を(少なくとも100%)カバーするものではない」ということです。)。

  もちろん,損害の金額のうち,治療費等は,基準も何もなく,実際にかかった費用ですので,あまり変わりはありません。

  一方,慰謝料については,裁判で認定される慰謝料の金額と人身傷害補償特約で決められている慰謝料の金額には,大きなかい離(人身傷害補償特約の基準のほうがかなり低い)があります。

  ですので,人身傷害補償特約による保険金の支払いを受けても,まだ相手方に対し,賠償請求ができるケースがあります。

  また,保険会社によっては,
「① 先に裁判をして,相手から賠償を受けた後,その後,人身傷害補償特約による請求を自分の保険会社にする」場合と
「② 先に自分の保険会社に対して人身傷害補償特約による保険金請求をした後,その後,相手に対し,裁判等で請求をする」場合で,
トータル(相手からの賠償額と人身傷害補償特約で受領できる金額)の金額が異なってくる場合があります(おおむね,①のパターンのほうが,トータルの金額が少なくなる場合が多い)。

  これらを一般的に,文書で,説明することはほとんど不可能ですので,個別の事案が出てきたときに,弁護士に相談していただければと思います。


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笠中晴司
専門家

笠中晴司(弁護士)

丹波橋法律事務所

大学卒業後,民間企業(地元銀行)で10年間勤務。その後,志をもって弁護士を目指し,弁護士になってから丸17年の経験を積みました。経験に基づく,バランス感覚は,他の弁護士より優れていると自負しています。

笠中晴司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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