遺言により財産の一部を公益法人に遺贈した場合
1 相続人以外の者が相続分を譲渡・贈与を受けた場合の相続税の申告
相続人は、共同相続人間で遺産分割が調う前に自分の相続分の全部又は一部を他の共同相続人又は共同相続人以外の者に有償又は無償で譲渡することができます。
相続人が、自分の相続分の全部を共同相続人以外の者に贈与した場合、その相続人は、いったん自分の相続分の割合に応じて遺産を相続し、その全部を相続人以外の者に贈与(無償で譲渡)したこととなります。
したがって、その相続人が相続税の納税義務者であり相続税が課され、相続人から相続分を譲り受けた相続人以外の者は、相続税の納税義務者となることはなく、相続税は課税されません。
2 相続分を譲り受けた者に対する課税
相続人以外の者が相続人から相続分の譲渡を受け、その後、遺産分割の手続きを経て、相続財産を取得することとなった場合、被相続人から直接にその相続財産を取得するのではなく、相続分の譲渡をした相続人を経由して取得することとなります。
相続分の譲受けが無償で行われた場合には、その財産をその相続分の譲渡をした相続人から贈与により取得したとされます。したがって、相続分を無償で譲り受けた者、つまり相続分の贈与を受けた者には贈与税が課税されることとなります。
(注1) 相続分を有償で譲り受けた場合であっても、その対価の額が譲り受けた相続分の価額に比して著しく低い価額の対価である場合には、当該対価の額と相続分に対応する財産の時価との差額に相当する金額の経済的利益を受けたこととなりますので、贈与により取得したとみなされ(相続税法第7条)、贈与税が課されることとなります。
3 相続分の贈与を受けた場合の贈与税の課税価格の計算
(1) 贈与税の課税価格の計算
①相続分の贈与を受けた日を含む年の贈与税の申告書の提出期限までに、遺産分割がされ、相続分の贈与を受けた者が取得する財産が具体的に確定している場合
その財産の価額を贈与税の課税価格に算入することとなります。この場合、財産の価額は、相続開始時の価額ではなく相続分の贈与を受けた時の価額となります。
②贈与税の申告書の提出期限までに遺産分割がされなかった場合
被相続人の財産の価額(債務がある場合には債務を控除した後の価額)のうち贈与を受けた相続分に対応する部分の価額を贈与税の課税価格に算入することとなります。この場合においても財産の価額は、相続開始時の価額ではなく相続分の贈与を受けた時の価額となります。
(2) 申告後に遺産分割がされた場合
遺産分割がされていない状況で相続税の申告を行った後、遺産分割が行われ、相続分の贈与を受けた者が取得する財産が確定した場合には、その財産の価額をもって贈与税の課税価格を計算することとなります。
したがって、遺産分割により実際に取得することとなった財産の価額を基に贈与税の計算をした結果、申告書に記載した贈与税額に不足を生じることとなった場合には修正申告を行うこととなり、申告書に記載した税額が過大となった場合には国税通則法第23条第1項の更正の請求(国税通則法第23条第1項)を行うこととなります。
※相続分の贈与を受けた場合の贈与税の課税価格の計算方法等に関しては、課税当局の公式の見解が示されていません。上記とは別の見解が示されることもありますのでご注意ください。