「危機管理」から見る「驕れる者久しからず」
江戸時代、若い近江商人の野田六左衛門が行商のために中山道を通って江戸に向かう。
その途中の上州・板鼻宿(今の群馬県安中市)に着く。
この上州・板鼻宿は中山道でも屈指の大きな宿場町で、ここにはあらゆる物資が集まり
それを扱う店が多数あった。
そのため、この上州・板鼻宿で、新たな商いを行う新参者とっては入る余地がないと
永く言い伝えられていた。
話しは戻り、六左衛門は宿に着くと夜の灯り用として「ろうそくを1本」買いに行く。
宿に戻るなり、六左衛門は「この宿場町には、たくさん売れるものがある」と見抜き
江戸に向かうことを取りやめ、この地で酒屋を開き、飛ぶように売れ大繁盛したとのこと。
酒屋はどこの宿場町でもあったが、なぜ六左衛門の店だけは大繁盛したのか?
ろうそくを求めに行った時に、どの店も「1本しか買わないお客には相手にしない。
後からやって来たまとめ買いするお客ばかりに接客する」ことに六左衛門は不快を感じる。
ここまでは、いまの時代でもよくある話ではあるが、六左衛門は目の付ける所が違った。
「この宿場町には、親切は売っていない」と気づく。
六左衛門の開いた酒屋は「少量の酒を求めるお客にも、差別することなく誠心誠意に接客し
「あの店はこの宿場町では一番親切だ」という評判が広がり、いまで言うならば
「お客がお客を呼ぶ」へと評判(情報)は拡散していく。そして商いは大繁盛・・・
いつの時代でも、商売繁盛の原点は「目の付け所が違う」ことだ。
そして、商いには「研ぎすまされた感性」が必要なことは言うまでもない。