一人ひとりに出来ること。

椎結子

椎結子

テーマ:こころ

4月になりました。

日常がいきなり非日常になり、
混乱のなか、3月が去って行きました。

初めて東日本大震災の映像を見た3月11日の夜、リモコンを持ったまま凍りつきました。
津波が住宅を、畑を呑み込んでいく映像に茫然とし、
沿岸部の町の変わり果てた様子に息をのみました。
そしてそれに続く、福島原発の問題が更に厳しく追い打ちをかけています。

その場に居合わせ、避難した高い場所から流されていってしまう人を見ながら
「何も出来ない・・・」と呟いた人のことを読みました。

ライフライン(水道、ガス、電気)・交通・通信の遮断されたなかで、
まさに着の身着のまま、身ひとつで避難所におられる方々の様子を見ながら、

テレビの前の日本中の人たちが、同じように無力感にさいなまれたのではないでしょうか。
そんな中、節電・募金・・・それぞれが何か出来ることをとやってきたのだと思います。

被害の大きさ、相互に伝わらない情報、燃料不足・・様々なことが複合して
なかなか援助の手の届かないもどかしさが、日を追うごとに募って行きました。

現場に入られた国内外の救援隊の方々・自衛隊による、懸命の捜索活動、復旧活動により、
ようやく水・食料が届きはじめて、やっと少し安堵出来たのではないでしょうか。


私たちは先ず、食欲・睡眠・安全の確保といった
『生存していくための欲求』が満たされないとその次の社会的な欲求について進めません。

災害時においてもその基本は同じですが、
突然日常生活を遮断されたことによって生じた様々な変化を元に戻す、
あるいは新たに作るための欲求・ニーズが生じます。

それは、次のように時間の経過とともに変化するといわれます。
 (『病院防災の指針(日総研出版)』より)

1.命の安全の確保:
  災害から身を守り、避難し、命の安全を確保する。

2.心理的安全の確保
  自分の役割の在処の確認=家族・社員等の安否の確認をする。
  自宅・会社等の被害程度。仕事への影響の把握。

3.生活の復旧
  住居・ライフライン(水道・電気・ガス等)・交通手段・通信方法・情報入手手段の復旧。
  例)仮設住宅、給水車、発電機、カセットコンロ、ガソリン確保 など

4.生活の再建
  被害の全貌を把握しその後の措置を考える。被害は金銭で換算され、再建への経済力が問題となる。
  不公平感が生じやすい時期。 例)見舞金、保険金、融資制度、減免措置など

5.人生の再建
     心の傷跡の回復。心・行動の変化についての知識を身につける。心理的なサポートを受ける。

6.災害文化の育成
  体験からの教訓を残す。風化させないための事業。


また、援助をすることには3つの段階があります。

第1段階 差し出す(上から)・・・「技術力」が必要
  例)各々の持っている技術を差出して、命を助ける。

第2段階 支える(下から)・・・「技術力+人間力」が必要
  例)慢性疾患の方の毎日の薬を確保して、健康全体を支える。

第3段階 寄り添う(横から)・・・「見極める力」が必要
  例)自立するために精神的に支えの必要な人・時期を見極め、側に寄り添う。

私たちが、テレビの前で何も出来ないと無力感にさいなまれたのは、
災害に遭われた方々に対して、上から引き上げて援助できる技術力を持っていなかった
すなわち、その役割ではなかったからでした。


そして、災害に遭われた方々や遺族の方々は、【全人的な苦痛】があると考えられています。

それは、次の4つの苦痛です。

・身体的な痛み:悲嘆反応として、二次的に表れることがある

・精神的な痛み:不安、怖れ、憂鬱 など

・社会的な痛み:仕事や役割についての心配 など

・魂の痛み:例)どうしてこんなに若くして死ななければならないのか?自分が生きていて良いのか?

これらの痛みを癒していくための、多方面の支援も必要になります。


これから、災害に遭われた方々、町、県、地方、日本が回復していくために
沢山のニーズが生じ、様々な問題も生じてくることでしょう。

発生当時、テレビの前で、一人でも多くの方の方が助かりますようにと祈り続け、
(携帯)電話を握りしめて、家族・親戚・知人たちの無事を願い続けた、

私たち一人ひとりが、これから出来ること・・・。


上に書いた過程、段階のどこかに自分が出来ると思うところが見つかれば、

そのことを、やりましょう。

それは、まだ先のことかも知れない。


それでも、その時に向けて今ある命を大切に生きることはこの一瞬から出来ます。

それぞれが出来ることから、まず始めましょう。


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