便利さの中で失うもの 3

椎結子

椎結子

テーマ:こころ

溢れる情報や物に囲まれて

豊かなようで、肝心なものが欠落しているような

居心地の悪さを感じる時があります。


私自身も、その便利さを享受して日々を暮らし

居ながらにして様々なものを手にし、発信もさせていただいています。


いつでもどこでもの手軽さは

出来ない場所の空白地帯を埋めることであり

そのことで救われる命もあるので

決して悪いことと言いきれるものではありません。


出来ない場所の空白がなくなるということは

やらなくてもいい場所がなくなることでもあります。


まるで便利な隙間家具が、きっちりと収まるように

時間の隙間を埋めます。


かつてリビングや玄関に家族の共有物としてあった電話は

個人に直接繋がるものとなって


周りや間にチェックの目が入ることがなくなりました。


他の家庭に電話をかけるのに「誰が出られるだろう・・」という

ハラハラ、ドキドキや

「どのように取り次いでもらおうか・・」

という、練習も無く

長電話を諫める誰かの声が、受話器口から聞こえることもありません。

ここで身につけられたであろう

コミュニケーションの方法なども手に入れられません。


気も使わないし、便利です。

自由です。

でも、それだけにどう使うかを自分で規制しないと飲み込まれます。


かつて長電話を延々して、親から咎められた方も多いでしょう。

そんな時期があります。


いま、その時間はメールのやり取りで深夜に及んで

子どもたちの睡眠時間を奪います。


先日の授業で、
1日6000件やり取りしていた子どもの話を聞きました。


便利さに罪はありません。


どう使うか。


そして何より


【自分にとって何が一番大切なのか】

を見極めることが必要です。


子どもに限らず

わたしも含めた大人もです。


わたしはかつて、移動中の電車の中から外を見ているのが好きでした。

全集の分厚い本を、通勤時間に読んでいました。


でも、いま外を見ることも減り

持ち歩いている本も読めることはほとんどありません。

この本を思い出しました。


『モモ』ミヒャエル・エンデ


今盗まれているのは、

時間だけではないのかもしれません。



『便利さの中で失うもの (2010-05-12 )』
http://mbp-japan.com/hyogo/yu-cocoro/column/9447

『便利さの中で失うもの2 (2010-12-12 )』
http://mbp-japan.com/hyogo/yu-cocoro/column/15542

『通信手段(2010-11-13)』
http://mbp-japan.com/hyogo/yu-cocoro/column/14736

『「ノルウェイの森」(2011-01-05 )』
http://mbp-japan.com/hyogo/yu-cocoro/column/16212



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椎結子プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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