知恩院おてつぎ文化講座「受け容れる勇気、お任せする覚悟 〜発達障がいと不登校の出口〜」

長谷川満

長谷川満

テーマ:教育・人権講演会

 7月9日(土)は知恩院さんの「おてつぎ文化講座」で「受け容れる勇気、お任せする覚悟 〜発達障がいと不登校の出口〜」と題して55分間講演させていただきました。

 知恩院さんには講演の1時間半前に到着。
 知恩院さんは国宝にもなっている観光名所でもあります。
 まずはお参りさせていただきました。
 

 大きな三門です。



 とても気持ちのいい階段ですが、一段一段が高いです。



 ここは法然上人が祀られている御影堂。
 中は一見荘厳な感じですがゆっくり落ち着ける感じでしばし休憩。



 三門のすぐそばにある会場の和順会館。
 おしゃれで近代的なホテルです。
 眺めも素晴らしい。

 
 13時10分から講演開始。



(知恩院「おてつぎ文化講座」提供)

 最初に詩「しあわせになるれんしゅう」を紹介しました。
 


 

共苦共悲が不登校の子どもを救う


 呪いと憎しみの感情の中で苦しんでいた女の子を救った家庭教師の話(こちらを参照https://mbp-japan.com/hyogo/hasegawa/column/5114036/)の後
「共苦共悲」についてお話ししました。

 苦しみの本質は孤独にあり、その孤独から救うことこそ「共苦共悲」です。
 不登校にしても子どもは学校に行くことに対して、強い不安や苦しみを感じているからこそ学校に行けないわけで。そんな時に「ゆっくり休んだらいいよ。」とお母さんやお父さんに言ってもらえたらどんなに安心できることでしょう。

 こういうふうにお話ししますと「そんなこと子どもに言ったら安心しきって余計に学校に行かんようになりませんか?」と聞かれる親御さんがおられます。


(知恩院「おてつぎ文化講座」にて:日本講演新聞社提供)


 そんなとき僕はこう言うんです。
 「そりゃあ、もちろん、そうなるリスクはあります。でも、それでもなお子どもの不安や苦しみを取ってやりたいと思われませんか?」
 
 学校に行けない子どもがいたら「ゆっくり休んだらいい」と安心させてやって、その代わり親である自分が不安になったらいいじゃないですか。それが子どもの不安を少しでも背負ってやることになるのではないでしょうか。
 それが「共苦共悲」です。
 共に苦しみ、共に悲しむ。その先にこそ「共に笑い合う」幸せが待っているのだと思います。

不登校の背景にある2つの原因


 不登校の原因は様々です。
 でも主要なものとしては2つです。
 一つは背景に発達障がいがあって、学校生活や集団生活に元々馴染みにくい子。
 もう一つはいじめや先生が怖いとかがきっかけで不登校になる「うつ的不登校」です。

大人のうつと子どもの不登校

 最近、うつ病になる人身近で増えてきていませんか。
 私の弟が転勤による部署替えでうつになりました。
 息子も人間関係と過労でうつになりました。
 人間関係とか仕事が自分に合ってないとか、そんなことを我慢して我慢してある日突然体が動かないようになって会社に行けなくなるというのがサラリーマンの典型的なうつ病です。

 子どもの不登校もいじめとか友達との人間関係とか、学校が自分に合ってないとか、そんなことを我慢して我慢してある日突然学校に行けなくなる。
 そっくりでしょ、大人のうつ病に。


(知恩院「おてつぎ文化講座」にて:日本講演新聞社提供)

 でもその後の対応は大人と子どもでは全く逆なんですね。
 大人のうつの場合お医者さんが問診してうつ病と診断されたら2ヶ月から3ヶ月「会社休みなさい」と言って診断書書いてくれます。
 子どもの不登校の場合は「学校行け行け」言われて無理やり学校に行かされます。

 また大人のうつ病の場合は家族が呼ばれて「何が原因なの?これからどうするの?といった心に負担をかけるようなことは聞かないでください。とにかく普段通りに接してあげてください。」そう言われます。
 不登校の場合は「何が原因なの?ちゃんと理由を言いなさい。これからどうするの?」としつこく聞かれます。心に負担がかかりまくり、結果子どもは何も言わなくなり部屋に閉じこもるようになります。
 

自傷から回復した男の子

 私の生徒でね。
 中1の5月くらいから不登校になりまして。
 初めは親御さんも「何が原因なの?」とか「これからどうするの?」とかそういう事ばっかり聞かれていたんですね。
 そうするとその子が「死にたい」言いだして、電気コードで痣ができるくらい首を思いっきり絞めたり、壁に自分の頭を思いっきりぶつけたり・・。
 それでお母さんも怖くなって「とにかく生きていてくれたらいいわ。学校なんかどうでもいいわ。」と思えるようになられて、それからは一切「学校行け」とも「なんで?」とも「どうするの?」とも言われなくなりました。

 そうしたらその子も落ち着いてきて、
 自分から勉強すると言いだして、高校も自分の意思で決めて
 今は「楽しい、楽しい」と言って充実した高校生活を送っています。
 また不登校中にパソコンで動画編集を独学で勉強して、
 今やe-sportチームのメンバー紹介の動画をビジネスとして編集・作成しています。
 将来もそっちの方向に進みたいと言ってます。
 それでアメリカで動画編集の技術を学びたいから留学しようかなあ、なんて言ってます。
 「アメリカ行ったら友達いないし心細くない?」て聞いたら「友達つくんの得意やから大丈夫。」て言ってました。
 友達作るの得意になったんやと思って何か感無量でした。


(知恩院「おてつぎ文化講座」提供)

放てば手に満てり

 「放てば手に満てり」
 道元禅師の言葉です。
 執着していたものを手放したとき、望んでいたもので満たされている自分を発見するという意味の禅の言葉です。
 似た意味の言葉に「捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」。
 「学校なんかどうでもいい。生きてさえいてくれたらそれでいい。」と子どもへの執着を手放されたとき、本来の元気で、才能溢れる、友達大好きなその子が現われたのです。


(知恩院「おてつぎ文化講座」にて:日本講演新聞社提供)

 

発達障がい傾向は受け容れることで改善する


 発達障がいは決して悪い事ばかりではありません。
 いいところもいっぱいあります。
 発達障がいの子の好きなことをするときの集中力は素晴らしいし、優しい子も多いです。接し方ひとつ育て方一つで素晴らしい子に育ちます。
 あの将棋が強い藤井聡太君もそうですし、エジソンとかイチローもそうですね。
 私の孫にも2、3歳の頃発達障がい傾向がありまして

 ・偏食がある
 ・すぐにひどい癇癪を起こす
 ・同じ服しか着ない
 ・言葉が遅い
 ・オムツがなかなか取れない
 ・すぐ手が出る
 ・初めての場所を嫌がる
 ・怒られるのがすごく嫌い

 娘と相談してこれら全てを受け容れようと決めました。
 今日のテーマである「受け容れる勇気」です。
 これら一切を直そうとせず、この子の望む通りに嫌いなものは食べさせず、着たい服だけ着させてこの子が嫌がるようなことはしませんでした。

 すると幼稚園入園後、少しづつ言葉数も増えて、オムツも取れて、偏食もましになり、小学校入学時点では上にあげた発達障がい傾向はほぼ消えていました。

 現在、小学校3年生ですが一輪車も乗りますし、書道も書き方もすごく上手です。勉強も問題ありません。こだわりが強いぶん、できるまで粘り強く努力し、集中力もあります。

 この子を育てる時にどんなことに気をつけて育てたのか、資料にまとめています。
 
 

発達障害傾向を改善する5つの接し方




 発達障がい傾向のある子は例えて言うなら外国人留学生です。
 外国人留学生ですから日本語で説明されてもよくわかりません。ですから図や絵を使って視覚的に理解できるように配慮してあげてください。
 また日本語を使って説明するのが苦手ですから、自分のやりたい事ややりたくない事をすぐに行動で表現してしまいます。すぐに手が出るのも勝手に帰ってしまうのもそういうわけなんです。
 
 だから「どうしたい?」て優しく聞いてあげてください。
 
 初めて日本に来て食べ物も口に合わないし文化も風習も違うから最初は戸惑ってしまうけれども、自分のことを理解してくれて優しく日本のことを教えてくれる先生や友達がいてくれたら、留学生たちも日本のことが好きになって日本の風習や文化に馴染んでくれるのと一緒で、発達障がい傾向のある子も、彼らのことを理解して優しくゆっくり教えてくれる先生や友達がいたら日本の学校や社会にも馴染んでやっていけるようになるのです。


(知恩院「おてつぎ文化講座」:日本講演新聞社提供)

 

自己肯定感の低下が二次障害をもたらす

 不登校になったり発達障がいがあるとどうしても親や先生はその子を直そうとして、結果その子を責めるような言い方になったり、その子自身も自分を責めたりして自己肯定感が下がってしまうことがよくあります。
 
 そうなってしまうと二次障害って言いましてうつ病や不安障害、自傷(リストカット等)や引きこもりになってしまうことがあります。
 それを防ぐと同時に前向きに生きていこうとする意欲や自信を持ってもらうことが大切です。

 

自己肯定感とは何か

 自己肯定感とは「自分はダメなところもある、弱いところもある、でも自分はそのままで愛され、喜ばれ価値のある人間であるという自分自身に対する信頼感」のことです。
 わかりやすく言うと「自分はそのままでOKなんだ」と思えるということです。
 この自己肯定感がしっかりありますと前向きに積極的に生きていけますし、欠如しますとうつ病や不安障害になりやすく生き方も消極的で自信のないものになりがちです。

 

自己肯定感を高める2つの方法

 自己肯定感を高める方法は2つあります。
 一つはその子が失敗した時や挫折した時に優しく受け入れ、愛情を持って支える時に自己肯定感は最も高まります。
 もう一つはその子が素直な気持ちを言った時に否定しないで共感的に聴くということです。

 

受け容れる勇気、お任せする覚悟



 受け容れる勇気とは何か。
 それは不登校のまま、発達障がいのまま、ありのままのその子を愛し受け容れていく勇気です。
 その子を変えようとする心を捨てると言うことです。

 お任せする覚悟とは何か。
 それは親である自分にはこの子を直すことはできないと悟って、はからい心を捨て全てを天にお任せする覚悟を決めるということです。
 その覚悟が決まった時に心は安らぎ笑顔が戻り、事態は好転し始めます。

 

自然(じねん)の力

 この字をなんと読まれますか?

 「 自然 」

 これは明治以前は「じねん」と読んでいました。
 それは四季の移り変わりのような「自然にそうなっていく」力や動き、しかも変化しながら次第に良くなっていくという「生成発展」していく力や動きのことを言いました。
 そういう良くなっていく力、進化していく力が自然界に宿っている。
 そしてこの自然(じねん)は人間にも宿っています。
 
 不登校や発達障がいは親にも先生にも直すことはできません。
 でもその子のうちに宿る自然(じねん)すなわち自己成長力だけは直すことができます。
 それを引き出すのが「受け容れる勇気」であり、「お任せする覚悟」です。
 そこにこそ発達障がいと不登校の出口があります。

 本日は誠にご清聴ありがとうございました。

 (講演終了)

 講演後には主催者様のご厚意で拙著「あなたも子どももそのままでいい」(税込500円)を販売させていただきました。



 

        < リンク >

 
 教育講演・人権講演のテーマや内容、お問い合わせについては
 http://mbp-japan.com/hyogo/hasegawa/column/64075/

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 https://www.kouenirai.com/profile/3820

 子どもさんの学習の悩み・家庭教師のご相談は
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      < 最近行った講演会 >

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 「自信とやる気を引き出すプラスの問いかけ」
 https://mbp-japan.com/hyogo/hasegawa/column/5124364/

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 「自信と意欲を引き出すプラスの問いかけ」
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 https://mbp-japan.com/hyogo/hasegawa/column/5123967/

 2022年11月 高砂市立荒井中学校
 「自分の可能性を開く7つの問いかけ」
 https://mbp-japan.com/hyogo/hasegawa/column/5123130/

 2022年11月 和歌山県橋本市立清水小学校
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 https://mbp-japan.com/hyogo/hasegawa/column/5122986/

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長谷川満(家庭教師)

家庭教師システム学院

発達障がいや不登校の子の意欲を引き出すには自己肯定感を高める必要があります。その子のありのままを受容し、信頼関係を築き、成功体験と褒め言葉で自信と意欲を引き出します。

長谷川満プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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