「墓じまい」を考える前に読んでほしい物語(13)「お墓物語」/寺田聡さん(63歳)

能島孝志

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テーマ:お墓物語

お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」 

一見、同じように見えるお墓だが、実はそれぞれのお墓には、
それぞれの思いと数々のエピソードがあります。

全国の墓石を含む石材関連業者約1,300社が加盟する、
日本最大の業界団体である、(一社)日本石材産業協会では、
お墓にまつわる感動的なエピソードを集めた小冊子、
「お墓物語」を、2011年3月に発行いたしました。(非売品)


お墓にまつわるエピソード集「お墓物語」

「お墓物語」を発行するにあたり、作品を募集したところ、
全国各地から数多くの応募作品が寄せられました。


その中から33名の方の作品がこの小冊子に収められています。


涙あり、笑顔あり、驚きありの素晴らしい物語ばかりです。


マスコミ等で「墓じまい」ばかりが大きく取り上げられる昨今において、
「お墓ってこんなに素晴らしいものなんだよ」ということを、
今一度、一人でも多くの人に気づいていただければと思い、
ここに、33話、全ての物語を順にご紹介させていただきます。

これまでに、以下12のをご紹介いたしました。

(1)「祖母との出会い」/三浦るるさん
(2)「お墓参りの不思議」/伊東徳久さん
(3)「祖父のお墓で」/水野真由美さん
(4)「おはからい」/漣ほたるさん
(5)「星よりも近く」/倉木敬人さん
(6)「泣き虫」/藤田徹朗さん
(7)「田舎のお墓を訪れて」/長坂隆雄さん
(8) 「祖母の墓を抱きしめて」/梅山太郎さん
(9) 「祖母VS母・お墓バトル」/森下純一さん
(10) 「一片の桜」/咲ママさん
(11)「心の掛け橋 」/棚橋すみえさん
(12)「おじいちゃんがくれたもの」/匿名希望さん

今回は、福岡県在住の寺田聡さん(63歳)の作品、
「お墓物語」をご紹介させていただきます。
心温まるエピソードを通じて、家族や大切な方との絆や、
命の尊さを考えていただくきっかけになればと考えております。


「お墓物語」/寺田聡さん(63歳・福岡県) 

私の家のお墓は、長崎市から諫早に向けて行ったところで、
諫早の手前の多良見(たらみ)という町にある、
小さな山の斜面に拓(ひら)かれた墓地にある。

小さいころ父に連れられて盆などお墓参りに行ったのは、
もはや遠い思い出である。


長崎への原爆投下

「お前たちの兄ちゃんや姉ちゃんたちがここにいるぞ。
小さな4人が原爆で死んだとぞ」と言いながら、
父は墓に水をかけ、花と線香を供えた。

その父が亡くなって、異母兄弟の兄と母と、
私の三人の弟妹たちとで父の骨を埋めた。


「お父さんは原爆がなかったら長生きしたとにねえ」


母の言葉が耳に残った。


兄も今は同じ墓にいる。


「玄武ちゃんも浦上の原子野をお父さんと一緒に、
弟妹を探して回ったもんねえ」


母のつぶやいた言葉があった。


お墓参り

94歳まで生きた母も今もそこに眠っている。


母を納骨するとき、「お前たちのおばあちゃんは、
人として立派に生きた人だったよ」、
と私は横の子どもたちに話しかけた。

彼らには、原爆で死んだ私の知らない、
小さな4人の兄と姉たちのこと、父のことも語った。


墓碑には亡くなった年月日と享年が深く彫られている。


それぞれにかけがえのない人生がいつも思われる。


今、私たちが在ることの深い感慨が身を包む。


墓は私といっしょに暮らした懐かしい父や母たちと、
会話を交わせるところである。

先祖からの、私の家のかけがえのない人たちとの、
絆を感謝し、確かめるとともに、
しっかり生きていこう決意するところである。

長い時を隔てても変わらない、
子孫に受け継いでいく大事な場所である。

私の子どもたちも胸の奥底に父と行った、
父の故郷の墓参りのことを覚えていてくれることだろう。

遠く離れたところに今は住んでいるので、
私が死んだ後、墓参りに来るのも少ないかもしれない。

しかし、ふと思いたった時にここに来れば、
いつでも父たちに会えるのだということを理解してくれるだろう。


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お申込みは第一石材までFAXまたはEメールにてお申込みください。
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・FAX:078・515・2737(24時間受付)
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なお、部数に限りがありますので業者の方のお申し込みはご遠慮ください。


             
            ~つづく~



次回は、渡辺笑子さん(29歳・東京都)の作品、
「温かい土」をご紹介させていただきます。


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