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有害な救済Ⅱ~自己都合ばかりのまやかし支援が長期化を促進する

2022年1月6日

テーマ:解決のための視点

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

コラムキーワード: 引きこもり支援引きこもり 対策不登校支援

ひきこもり (不登校)はその選択しかできなかった理由があります。
前回のコラムで述べたように、単なるやる気の問題ではありません。
そこには、必ず過去の傷つき体験によるトラウマがあります。

このことを話しますと、「今さらトラウマの解消よりも、早く仕事に就かせたい」と、
親御さんから返ってくることがあります。
これでは、わが子の痛みにまったく寄り添っておらず、ただ自分の困りごとの解決だけを
考えているのも同然です。
解決すべきは、わが子の困りごとです。

ひきこもり(不登校)者たちは、過去の痛み(未解決の悲しみ)に今を支配されている状態に
あり、その影響は、自尊心、自己信頼感を揺るがし、衝動の抑制や忍耐力、人間関係を
結ぶにあたっての、共感力や思いやり、自己表現力、などに強く現れます。
社会、集団への不適応感は、ここに起因しているのです。

お腹をこわしているときに、好物の料理であっても食べたいとは思わないでしょう。
まず不具合を治さないことには、本来の意欲も出せません。
しかも、過去の未解決の悲しみには、両親が深く関わっているのですから。

反発的に背を向けるのは当たり前のこと

前回コラムで述べたやるべきことを実行させていこうとしても、もちろん抵抗します。
「めんどくさい」とか「分かってる」とか、「うるせぇ!」というのもあるでしょう(笑)。
背を向けたり、あからさまに嫌な表情を見せたりもあります。

そういったことが続きますと、「嫌がることを促しても逆効果かな?」と、控えてしまう
ことが少なくありません。
声をかける方も決していい気分ではありませんからね。
しかし、それでは長期化するのは当然です。

そもそも、本人は現状維持を願っています。
親子で「なんとかならないか?」と思っていますが、中身は違うのです。
親は「なんとか前向きにならないか」ですが、本人は「なんとかこのままにならないか」
なのです。
ですから、反発するのは当たり前なのです。

親自身が傷つきたくないから無理をさせないは“愚者の慈悲”

不快、苦悩の回避を許すことは、命の活動としての“成長”を阻むことになります。
筋力増大、健康増進のためには筋トレをしますね。
筋肉に負荷を与えなければ強化されません。
「嫌がるのもかわいそう」では、仇になります。
もちろん、与える負荷は適切なものでなければなりません。
無意味な苦労はさせる必要はありませんが、楽をさせれば自力で立てるようには
なりません。
生んだ命を活かすことに決してならないのです。
快楽の先取り(前借り)は、将来の困窮を必ず招きます。

「共依存」自立を願いながら自立を妨げるという矛盾

わが子がひきこもり、自身のことをあれこれやらなくなってくると、過度な世話やき行為
が始まります。主に母親ですが。
これをイネーブリングといいます。
食事を部屋に運んだり、頼まれた買い物をしたり等々です。
一人暮らしのアパートに食事を運んでいるケースもあります。
直接的には母親が多いですが、もちろん父親の場合もあります。
父親は金銭的なことで間接的にイネーブリングをしてしまっています。

このイネーブリングは、もちろん自立を妨げます。
食事が運ばれてくるのは、ホテルのルームサービスと同じです。
「働かないと食っていけない」と常識的に促しても、ひきこもり者たちには通じません。
食っていけてるからです。
食事は三食用意され、汚れた衣服も常にキレイに洗濯され、メモに書いておけば、
買い物まで済ませてくれれば、自分で動く必要はなくなります。

イネーブリングは、「共依存」によるものです。
「共依存」は、親子で互いに依存しあう状態です。
なぜそうなるのか?
そこには、親子それぞれの愛着の問題があります。

「共依存」の底にある親子共にある満たされていない愛着欲求

親にとって、わが子からいつまでも頼られることは、親冥利につきるというものです。
ですから、世話をやくことで自分に頼らせようとしてしまうのです。
子どもは逆に、世話をしてもらうことで、それだけ大切にしてもらえている。
愛されているという実感を得られます。
親は必要とされることを必要とし、子どもは愛されることを必要としている。
これが「共依存」です。

ここには、互いの愛着欲求がそれだけ満たされていないことが背景にあります。
互いが相手から愛されたい、必要とされたいという意識が強まっているのです。
互いの需要と供給がマッチングし、「共依存」の呪縛にはまります。
こうなると、互いが相手が離れる(自立していく)ことを、阻むようになるのです。
自立を願っているようで、実は無意識に手元から離れないようにしてしまっている
ことに気づかないかぎり、長期化が進行します。

「原因を知る必要がない」というまやかし(大罪)がもたらすもの

有害な救済の最もたるものを最後に述べてみましょう。
「原因追究は、解決のための絶対必要条件ではない」という考えです。
ある行政の窓口では、相談者に配布するパンフレットの中に、
「原因がわからなければ解決しないと考える必要はありません」と明示しています。
これが大間違いです。
こうもあります。
「大切なのは、今いるところからどんな風に改善していくことができるかということです」
と。
もっともらしく聞こえますね。
これによりどれだけの有害な改善策がなされてきたことか。

ひきこもり者たちが、どうして身を潜めるような生き方しか出来なくなってしまったかを
無視して、何を解決しようとするつもりなのでしょうか?
今いるところにしか留まれない原因を解決してあげない限り、本人たちは動けません。
過去の痛み(未解決の悲しみ)に今を支配されているのが、ひきこもり者たちの状態なのです。
ひきこもるという行為を通して、周囲(親)に訴えていることがあることを理解しようと
しない横暴な姿勢です。

こういう誤った外側に立つ者の都合による考えが、「外に出せばOK」「就労させればOK」
といった愚行を招き、より長期化(深刻化)を進めたのです。
解決すべきは、心に抱えているわが子が困ってしまっていることで、親が困っていること
の解決ではありません。
わが子が抱え込んでしまっていることこそが、「原因」なのです。
「何が起こっているのか」が見えずして、解決はあり得ません。

この記事を書いたプロ

中光雅紀

ひきこもる人、その家族を再生へと導くプロ

中光雅紀(NPO法人地球家族エコロジー協会)

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