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コラム

親子で苦難を乗り越えたはてにある絆のぬくもり

2024年1月8日

テーマ:解決のための視点

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

1.不登校、ひきこもり、家庭内暴力のはてに

定時制高校を25歳で卒業し、就職したある青年の話をしてみましょう。

高校2年から不登校が始まりやがて退学、幾多の試練を家族で乗り越えてきました。

自宅へ訪問した時のことです。

ご両親は、全てのガラスが割られた戸、幾つもの穴の開いたフスマや壁をあえて

そのままに残しておられました。

包丁で切り裂かれた跡もそのままの状態です。

正直、来客を招かれないようなありさまでした。

失礼ながら「どうして直されないのですか?」と思わず尋ねました。

「親子で当時を忘れないように自戒するためです」と答えられました。

幾度と無く親子の衝突もありました。

暴力で母親に大けがをさせてしまったこともありました。

部屋へ閉じこもり会話もほとんどない時期もありました。

2.卒業式での答辞で

彼は卒業式の際、卒業生代表で答辞を読み上げていますが、その中で自身の

ひきこもり体験を赤裸々に述べています。

一部ご紹介しましょう。



『二十歳を過ぎてからというもの、高校を中退して家にひきこもっている自分を、

周りがバカにしているように思えて、同年代に対しコンプレックスを抱いていました。

家族の言葉にむかつくこともよくあり、「オレなんか何の役にも立たないんだ」

とか、「どうせ、お前ら、オレのこと、笑っているんだろう」と、そんな言葉を

家族に投げつけていました。

毎日毎日イライラして、食器を割ったり、窓ガラスを割ったり、家の中は

めちゃめちゃでした。

自分に自信がもてず、親がどんな気持ちでいるのかなんて到底わかりませんでした。

「なんでこんなふうにならないといけないんだ」と、自分のことだけしか考えられず、

すべての怒りを、家族にぶつけていました』

3.親が逃げずに向き合うことでなされる家族再生による解決

今回の訪問は実は初めての訪問でした。

大変だった時期を思い返しながら、笑い話のように親子で語っておられました。

定時制高校に入学する前からこの青年とは関わっています。

当協会の支援法では、ほとんどのケースで、自宅へ訪問しないで当事者たちが

動き出します。

それはご家族が動くからです。



青年たちの心の傷(家族トラウマ)、痛みへの共感、理解を徹底するからです。

不登校、ひきこもりを病気や障害としてしまう傾向がまだまだあります。

「子どもを信じて黙って見守る」「病気だから治療しかない」と考えるのは、

一番楽な方法です。

楽をしますから、もちろん事態の改善ははかれず、より深刻化します。

現実から目をそらさず、真正面からわが子と向き合った親だからこそ、

その苦悩の何倍もの喜びを得られるのです。

この親子も本来の親子の深い絆を取り戻しました。

答辞の中で両親に対しての言葉も残しています。



『今、両親に言いたいことがあります。二人とも、ずっと私を見捨てずに

見守り続けてくれました。

あの頃、私は、自分のことしか見えてなくて、本当に申し訳なかったと思います。

ごめんなさい。

夜遅くまで話を聞いてくれた親父、次の日、仕事で朝が早いのに、きつかったろうに。

親父、本当にありがとう。自分が仕事をし始めたからこそわかりました。

いつも励ましてくれた親父。

そんな親父の偉大さが今、やっとわかるようになりました。

そして、身体が弱いのに、いつも私の身体のことを心配してくれたお袋。

あの頃、割れた窓ガラスや粉々になった食器を、何も言わずにただ黙って片づけて

くれたお袋。

きつかったろ?痛かったろ?今まで面と向かって謝れなくて本当にごめんなさい』

4.健康な人間にできることは、人を愛することと働くこと

定時制高校に入学してからは、無遅刻、無欠席、生徒会活動と早朝からの

アルバイトを両立させています。

荒れていた時期からは想像もつかないような成長ぶりです。

これが本来の彼の姿なのでしょう。



人は社会的な生き物です。社会は共生、共存、共栄の世界です。

互いが助け合い、支えあう世界です。

社会の中で他者と関わり合い、他者と違う独自性を自覚しながら、役に立っている、

必要とされているという実感を得、そして人を愛すことができてこそ生きている

ことに喜び、感謝を感じられるのです。



本当の病気、障害(現実は非常にまれ)でない限り、適切な親御さんの関わり方が

あれば、ほとんどが本来のその子の状態に回復します。

決してあきらめないでください。

絆は気綱です。

母体と胎児がへその緒でつながっているように、結んだ、つないだ気(心)の綱を

切らないでいてほしいのです。

絡まった綱は、根気強くほどいていけばよいのですから。

この記事を書いたプロ

中光雅紀

ひきこもる人、その家族を再生へと導くプロ

中光雅紀(NPO法人地球家族エコロジー協会)

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