ひきこもりの子に欠けているのは「やる気」ではない

中光雅紀

中光雅紀

テーマ:解決のための視点

ーーはじめにーー

ひきこもりの子どもが「動けない」のは、

意志が弱いからではありません。

そもそも自分を律するための

「内なる基準」が育っていないのです。

親にできることは何か。

現場の視点からお伝えします。

「自分を動かす力」は、どこから来るのか

自律とは、自分の中に判断の基準を持ち、

それに従って自分をコントロールすることです。



外から誰かに言われて動くのではなく、

誰も見ていなくても、

自分で自分を律することができる

それが自律です。



そして、自律には必ず「自制心」が伴います。

この自制心がなければ、

自律はどこまでいっても絵空事に終わります。

また、「自律」無くして、

「自立」はあり得ません。

誰も見ていない状況で、あなたはどうしているか

「慎独(しんどく)」という言葉があります。

独りのときこそ、身を慎む、という意味です。

人の目がないとき、

自分の行動にブレーキをかけられるのは、

自分自身の目だけです。

これは“良心”とも言えます。



「天地神明に誓って」と申しますが、

天に恥じることのないものが良心でしょう。

かつては「お天道様が見てござる」

と子どもをたしなめるお年寄りがいました。



現代では“天”という概念、認識そのものが

無くなってきたように感じます。

でも、何かに祈るとき、深く感動したとき、

人は自然と空(天)を仰ぎませんか?

うしろめたいことがあるとき、

逆に顔をうつむかせませんか? (笑)



良心は、そういう「体ごとの反応」として

現れるものだと私は感じています。

道徳観と倫理観は、まったく別物です

自分を「律する」というのは、

道徳的規範に基づいて、行動を統制すること

ですが、道徳観と倫理観の違いを述べますと、



「人様(世間)の手前、恥ずかしい」

これが道徳観で、

他者の目が基準になっています。



「空恐ろしくてできない」

これが倫理観です。

内側からこみあげてくる感覚です。

まさに、“良心”です。


  • 道徳観:人に見られているから、しない
  • 倫理観:人の目に関係なく、できない

現代に増えているのは、後者の欠如です。



ネット上の匿名での誹謗中傷、ゴミのポイ捨て、

粗大ゴミの不法投棄——

「自分だとわからなければ何でもやる」

という行動の根には、倫理観の崩壊があります。



「惻隠(そくいん)」という言葉があります。

命あるものを傷つけることへの、生理的な拒否感。

人の苦しみを黙って見過ごせない、

あの心の動きです。

誰かに教えられなくても、

人間の中に元来備わっているはずのもの

——それが惻隠であり、倫理観の核心です。

「良心は両親が育てる」という重い事実

良心は、生まれつき完成しているものでは

ありません。 親が育てるものです。

子どもの心の中に

「これはしてはいけない」

という内なる規範が育っていなければ、

人の目さえなければ何でもOK、

という姿勢が身についてしまいます。



「天」という感覚を持てないなら、

せめて母親(父親)の顔を思い浮かべてほしい、

と私は思います。



その行動をとるとき、

母親はどんな顔をするだろうか。

その顔を想像したとき、

それでも同じことができるか。

それが、子どもにとっての

「最後のブレーキ」になりうるからです。

それでも、ブレーキが効かない子たちへ

しかし現実には、

母親の顔さえ行動の歯止めにならない

子どもが増えているようです。



ひとつには、

惻隠そのものが失われている場合。

感情が麻痺していれば、

大切な人の悲しみにも心が揺れません。



もうひとつは、逆の問題です。

「インナーマザー」

——心の中に母親を内在化しすぎた子どもたちは、

母親の人生に取り込まれ、

自分自身を生きられなくなります。



自制ではなく、支配。

自律ではなく、依存の裏返し。

そういう子どもたちもまた、自制がはたらかず、

自律の前に立ち止まってしまうのです。



ひきこもりの背景には、

トラウマ愛着の問題だけでなく、

こうした「良心の未形成」という

見えにくい原因が潜んでいます。

時代は変わった。でも、親にできることは残っている

両親が良心を育てにくい時代になってきた

ーーそれは確かかもしれません。

天を仰ぐ感覚もなく、

昔の良き慣習を教えてくれるお年寄りもなく、

手本となる大人の姿も少なくなった。



それでも、親の顔は子どもの心に残ります。

その顔が「悲しみ」ではなく

「信頼」として刻まれるよう、

日々どう接するか。

良心を育てるとは、

結局そういうことではないでしょうか。

まとめ

  • 自律には自制心が必要であり、自制心の核は「良心」にある
  • 良心とは、人に見られていなくても自分を律する内なる基準のこと
  • 道徳観(他者の目)と倫理観(内なる感覚)は別物であり、現代は後者が育ちにくい
  • 「惻隠」=命や他者の苦しみへの生理的な感受性は、倫理観の根本
  • 良心は親が育てるものであり、育たなければ「見られなければ何でもOK」になる
  • ひきこもりの原因のひとつに、この「良心の未形成」という問題が潜んでいる
  • インナーマザーに支配された子は、自律でなく依存の裏返しに陥りやすい
  • 時代が変わっても、親の存在が子の良心に与える影響は消えない






あなたのお子さんの「動けない理由」、

一度一緒に考えてみませんか。

「うちの子はなぜ動けないのか」

その答えは、意志や努力の話では

ないかもしれません。

この記事を読んで「思い当たる」と

感じた方は、

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中光雅紀
専門家

中光雅紀(不登校・ひきこもり支援者(家族心理教育コンサルタント))

NPO法人地球家族エコロジー協会

トラウマの視点からひきこもりの原因を見える化していくアプローチを行い、そのもがきのプロセスから人間としての成長を果たし、ひきこもりから脱却。新しい自分に生まれ変わるような変化をサポートしていきます。

中光雅紀プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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