親が変わらなければ子どもは変われないのか

中光雅紀

中光雅紀

テーマ:解決のための視点

ーーはじめにーー

ひきこもりの子から

親へ向けられる激しい言葉は、

単なる反抗ではありません。

そこには、

自分の人生を奪われたような無念さと、

親にまだ望みを抱いている心が

隠れています。

「俺の人生を返してくれ」という言葉の奥にあるもの

「俺の人生を返してくれ!」

「親が変わらない限り、俺は変われない!」

「親の判断に任せていたら、間違ってばかり。

親の資格がないやつが指図をするな!」



ひきこもりのわが子から、

このような言葉を浴びせられたとき、

親御さんの胸には怒りも湧くでしょう。

悔しさもあるでしょう。

けれど同時に、

返す言葉を失ってしまうことも

多いのではないでしょうか。



それは、言葉が乱暴だからだけではありません。

どこかに、心当たりがあるからです。



親として精いっぱいやってきた。

それでも、すべてが正しかったとは

言い切れない。

その弱い部分を、

わが子は正確に突いてくるのです。

自分の問題から目をそらすために、親や家族を責めることがある

ひきこもりの子が、親のことだけでなく、

身内の問題や家業のことにまで

口を出してくることがあります。

中には、バイトすら経験したことのない

ひきこもりの兄が、

大学を卒業して就職する妹に向かって、

社会人としての心得を諭すように語る

ケースもありました。



一見すると、矛盾しているように見えます。

自分のことは動かないのに、

人のことには口を出す。

親からすれば、

「まず自分のことをどうにかしてほしい」

と言いたくなるでしょう。



しかし、ここで

見落としてはいけないことがあります。

これは、自分自身の問題に

向き合いたくないために、

他の問題へ意識をそらそうとしている

姿でもあります。

同時に、親の意識を自分から離したい

という心理も働いています。



本当は、自分の苦しさを見られたくない。

本当は、自分の行き詰まりに触れられたくない。

だから、親や家族の問題を持ち出すのです。

子どもは、親のいちばん痛いところを突いてくる

ひきこもりの子は、

親の弱点とも言える「子育て」を非難します。

ときには、両親であること自体を

批判することもあります。



「なんであんな親父と結婚したんだ!」

この言葉は、親への批判であると同時に、

自分の存在そのものを否定している言葉

でもあります。

なぜなら、

その両親から生まれたのが自分だからです。



子どもは、親を責めているようでいて、

実は自分自身の存在にも傷をつけています。

ここに、ひきこもりの苦しさの深さがあります。



親を否定する。

けれど、その親から生まれた自分も

否定してしまう。

怒りの矛先が親に向いているようで、

最後は自分自身に返ってきてしまうのです。

返す言葉を失うのは、親の中にも痛みがあるから

多少なりとも心当たりのある親御さんは、

子どもからそこを突かれることで、

返す言葉を失います。

「そんなつもりではなかった」

「自分なりに一生懸命だった」

「親だって苦しかった」

そう言いたくなる気持ちは当然です。



けれど、子どもが訴えているのは、

親の言い分ではありません。

自分が感じてきた無念さです。

自分が受け取れなかったものです。

自分の中で、いまだに終わっていない痛みです。

だからこそ必要なのは、反論ではありません。

まず、わが子の無念さを理解することです。

未練があるから、子どもは親に訴える

ここで大切な視点があります。

未練があるから、子どもは訴えます。

未練があるから、そこに留まり続けます。

未練とは、ただの執着ではありません。

未練は、まだ残っている望みです。



親に対して、もう何も望んでいないのなら、

訴えることすらしないかもしれません。

怒りも、恨みも、責める言葉も、

そこにまだ関係への望みがあるから

出てくるのです。



「分かってほしかった」

「助けてほしかった」

「ちゃんと見てほしかった」

「自分の人生を一緒に取り戻してほしい」

乱暴な言葉の奥にあるのは、

こうした声かもしれません。

過ぎた人生は返せない。それでも、新しい人生は一緒に創れる

もちろん、過ぎた時間を

そのまま返すことはできません。

あの日に戻ることはできません。

子ども時代をやり直すこともできません。



けれど、取り戻しになるだけの

新たな人生を創っていくことはできます。

そのための協力は、親にできます。



与えてあげられなかったものがあるなら、

今から与えていく。

奪ってしまったものがあるなら、

今から補っていく。

失わせてしまった希望があるなら、

親自身が変わることで、

もう一度希望を見せていく。



「親が変われなければ……」

と言われるまでもありません。

自主的に変わっていけばいいのです。

人は、ここまで変われる。

親がその手本を示すのです。

その姿は、子どもにとって

大きな希望になります。

親が感じる痛みは、子どもが感じ続けてきた痛みでもある

わが子から厳しい言葉を突きつけられると、

親も深く傷つきます。

腹も立つでしょう。

情けなくもなるでしょう。

逃げ出したくなることもあるかもしれません。



けれど、その痛みは、

子どもが親に対して感じ続けてきた

痛みでもあります。

そう理解してあげてください。



親が今感じている痛みを、

子どもは長い間、抱えてきたのです。

そう思えば、耐えられるはずです。

わが子は、それを

我慢してきたのですから。



これは、

親だけが悪いという話ではありません。

責めるための話でもありません。

しかし、回復の入り口は、

痛みの受け止め直しにあります。

ぎこちなくていい。不慣れなことこそ、やっていく

「うちはコミュニケーションが苦手だから」

「何を言えばいいか分からない」

「うまく話せない」

「要領を得ないから、かえって悪くなりそう」

そう感じる親御さんも多いでしょう。



しかし、

不慣れだからやらないのではありません。

不慣れなことこそ、積極的にやっていくのです。

ぎこちなくていいのです。

うまく言えなくていいのです。

最初から自然にできなくて当然です。



なじんでいないものは、

イメージすらしにくいものです。

だからこそ、エネルギーがかかります。

だからこそ、疲れます。

だからこそ、やる意味があります。

なじんできた生き方が、今の苦悩を招いた

ここを見誤ってはいけません。

これまでなじんできた生き方が、

目の前のわが子の苦悩を招いたのです。

ならば、同じ生き方を続けたまま、

違う結果だけを望むことはできません。

解決のためには、なじみのない生き方を

試してみる必要があります。



今まで言わなかった言葉を言ってみる。

今まで聞かなかった話を聞いてみる。

今まで認められなかった痛みを認めてみる。

今まで避けてきた関わりに、

少しずつ向き合ってみる。

それは簡単ではありません。

しかし、

そこにしか変化の入口はありません。



親が変わるとは、

子どもに迎合することではありません。

親が自分を責め続けることでもありません。



わが子の苦悩を正面から受け止め、

新しい関わり方を始めることです。

なじみのない生き方を、

親のほうから実行していくことです。

そこには、必ず結果が出ます。

まとめ

  • ひきこもりの子が親を激しく責める背景には、無念さや未練がある。
  • 親や家族を批判する行動は、自分の問題から目をそらすために起こることがある。
  • 子どもは、親の子育てや夫婦関係など、親の弱点を突いてくる。
  • 親が返す言葉を失うのは、どこかに心当たりや痛みがあるから。
  • 未練は、親への望みがまだ残っている証でもある。
  • 過去は返せないが、新しい人生を創る協力はできる。
  • 親が感じる痛みは、子どもが長く抱えてきた痛みでもある。
  • 不慣れなコミュニケーションこそ、避けずに実行する必要がある。
  • これまでの生き方が苦悩を招いたなら、なじみのない生き方に踏み出すことが解決の入口になる。






わが子の言葉に傷ついたときこそ、

「どう言い返すか」ではなく、

「この子は何を取り戻したいのか」

と考えてみてください。

親が変わることは、負けることではありません。

わが子にもう一度、希望を見せることです。

まずは今日、ひとつだけでかまいません。

これまで避けてきた言葉、

聞けなかった気持ち、

認められなかった痛みに、

静かに向き合ってみてください。

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中光雅紀
専門家

中光雅紀(不登校・ひきこもり支援者(家族心理教育コンサルタント))

NPO法人地球家族エコロジー協会

トラウマの視点からひきこもりの原因を見える化していくアプローチを行い、そのもがきのプロセスから人間としての成長を果たし、ひきこもりから脱却。新しい自分に生まれ変わるような変化をサポートしていきます。

中光雅紀プロは九州朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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