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コラム

必要な「家族会」がいつしか誤った方向へⅡ

2022年4月2日

テーマ:解決のための視点

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

コラムキーワード: 引きこもり 対策引きこもり支援不登校支援

家族会の運営目的を改めて考えてみましょう。 会の存在意義になるものです。
もちろん現状の問題の改善、解決のためですよね。
あたりまえのことなのですが、これがどこかへ行ってしまっている場合が少なくない
ようです。

家族会って、いったい何のための集まりなのでしょう?

こういったことが起こっている原因には、解決のために何が必要かが見えていないことに
あります。
家族会は、当事者のみで運営されていることがほとんどです。
当事者である誰かが最初に声をあげ、そこに他の当事者が集まりだし、互いに寄り添う
ようにして、励ましあったり、慰めあったりして、支え合ううちに会の形ができてきて
いるからです。
そうすると当然ですが、解決のために何が必要かは分かりません。

ある程度の規模の会になりますと、学習会を開催し、ひきこもりの理解を深めようとして
いるのですが、講師で招かれるのは、精神科医や研究者(教授)、カウンセラー(臨床心理士
等)などです。
実際に自室から出られない状態から、就労や進学などの社会参加まで一軒の家庭、家族に
関わり続けた経験がない方たちです。
ですから、学習の際の内容は状態(病状)の解説がほとんどであり、具体的な対応としては、
本人の意志に委ねた「無用な刺激を与えず、信じて見守りまょう」といった解決のための
対策とは言い難いものです。

20年近くも運営しているある家族会の代表世話人の方とお話しした時、引きこもる若者たち
の声を私は毎日聞いているので、それをお伝えしたいと申し上げたところ、
「それはありがたい。私たちは子どもが何を考えているのかが何も分からない」と返って
きました。
私は内心愕然としました。
ひきこもり者たちの声を知らぬまま、何を集まってやっているのだろう?
ここからも分かるように、本来の会の存在意義である目的が、知らぬ間に忘れさられ、
他のものにすり替えられてしまっているのです。

いつしか家族会に参加することが目的となってしまう罠

こういったことは、日常ままあることです。
「手段の目的化」と言います。
目的と手段をはき違えてしまうのです。
目的というのは、「何のために?」という問いかけに答える内容です。
手段は、その目的を果たすための手立て、方法ですね。
ついでに述べておきますと、目標は、具体的な到達点ですね。

ですから、家族会で申しますと、目的が先に述べたように、現状の問題の改善、解決
ですね。
目標は、改善、解決のために必要なことを学習する。
現状(問題)を受け入れられる自分をつくる。
働きかけを継続できる自分をつくる。
行動できる自分をつくる等ですね。
そのための手段として、先ずは腰を上げ家族会に継続して通う。学習する。
参加者同士慰め、労い、励まし、支えあう。
情報を交換しあい、学んだことを実践していく。
ところが、「手段の目的化」というのは、家族会に参加することがあたかも目的となって
しまい、前回のコラムでも述べたように、通っているだけで分かったつもり、行動した
つもりになって、10年以上も通い続けていても改善がほとんどなされていないといった
事態になってしまっていることです。

現実に向きあうエネルギー充電の場とはならず、逃げ場と化す

老いた家族の介護疲れからの傷ましい事件が、ニュースにあげられることがありますが、
そういうことにならないよう介護をする側がストレスを吐き出し、心を癒せる場として
集まれる集会所をテレビ番組で観たことがあります。
とても良い取り組みだと思いました。

ひきこもり家族会にも、このような機能がひとつとしてあるでしょう。
ところが、介護の場合は毎日とどまっていられないまさに日常があります。
ですから、同じ境遇の人たちとの心休まる歓談で元気を回復しても、一日
たりとも休めることはなく、再び現実が待っています。
その現実に向き合い、臨めるように、ひと時のエネルギー充電をするわけです。

ですが、ひきこもりの場合は、帰ってすぐに本人に何かをしなければならないという
ことが、介護と違いありません。
せいぜい食事の用意くらいでしょうか。
それでも食べさせるまでは必要ありません。
ですから、ひきこもり家族会の場合は、注意しないと、グチをこぼしたり、慰めあったり、
談笑したりすることだけに終わってしまいがちということです。
つまり、充電したであろうに家に戻れば、状況改善のための何らのはたらきかけもないまま、
閉ざされた部屋そのままのあたりまえの風景がただ静かに過ぎているのです。

そうなると、家族会がただ、当事者同士が集まりおしゃべりができる憩いの場的なものに
なってしまいます。
現実に取り組めるための〈エネルギー充電〉という目的が、見失われてしまいます。
そうなれば、その場(会)を残す、維持することだけが目的となってしまいかねないのです。
改善、解決目的の家族会ではなくなってしまうのです。

会の存続が第一目的となってしまうその危うさを次回述べてみましょう。

この記事を書いたプロ

中光雅紀

ひきこもる人、その家族を再生へと導くプロ

中光雅紀(NPO法人地球家族エコロジー協会)

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